見た目は70年代風でも走れば21世紀のクルマ

ベース車より少し伸びた鼻先の重さは感じるものの、ハンドリングはシビック同様の軽快さだ。
ショールームではM55の実車を何度も見てきたけれど、公道上で見るとさらに存在感が増す。1970年代のGTカーをモチーフにしているが、特定のモデル車はないとミツオカは謳っているネオクラシカルなスタイリングは、街中でも、郊外でも、高速道路でも、けっこう映える。クルマ好きの人ならご存知のように、ベース車は現行型シビック(正確にはマイチェン前)のVTECターボ(MT)だが、丸型4灯ヘッドランプに二分割ハニカムグリルのフロントセクション、リアウインドーのルーバーにダックテールのリアスポイラーなど、パッと見にはベース車は分からない。
顔つきはケンメリ(4代目スカイライン)に似ているとか、リアビューはセリカ リフトバック(初代)を彷彿とさせるとか、いろいろな声は聞く。だが、実車を目の当たりにすると、モチーフとなったクルマとは違うオリジナリティも感じさせる。「デザインに良い、悪いはない。好きか、嫌いかだけだ」という言葉があるが、個人的にはこのデザイン、けっこう気に入っている。中身は新しいクルマなのに、そのネオクラシカルなスタイリングが今の自分とけっこうシンクロしているからだろうか。
箱スカ(3代目スカイライン)のシートをインスパイアしたというハト目加工付きの本革シートに座り、70年代の市販車にはなかったスターターボタンを押してエンジンを始動する。と、センターダッシュのモニターに「H」マークが浮かび上がるのはご愛敬か。ステアリングホイール中央に「M55」のロゴが入り、オプションのカーボン加飾パネルがインパネやセンターコンソールなどに貼られているが、コクピットからの景色はシビックと同様で、インターフェースの操作性や視認性はいい。

インターフェースはシビック同様、視認性も操作性も高い。ダッシュボードやセンターコンソールに貼られたカーボンの加飾パネルはオプション。
パワートレーンや足まわりは基本的にシビックと共通だから、走りっぷりも変わらない。ベース車より30kgほど車両重量は重くなっているが、182psを発生するVTECターボのパワーは十分。しかも低速域からトルクフルなので、FFとしてはシフトタッチのカチッとした6速MTは、たまに何速で走っているのか(3速 or 5速?、4速 or 6速?)分からなくなるほどフレキシブルだ。
リアウインドーのルーバーは後方視界を妨げることはなく、高速クルージングは静かで快適。ベース車より少し伸びた鼻先の重さは感じるものの、ハンドリングはシビック同様の軽快さで、見た目は70年代風でも走れば21世紀も4分の1を過ぎようという現代のクルマであることを実感させてくれる。