先代のスーパーチャージャーよりも扱いやすくなったSLK200
今度のSLKの顔はノスタルジーが感じられていい。それはルーツとも言うべき1950年代の190SL然としたフロントグリルや、フロントフェンダーに配した300SL風のアウトレットガーニッシュなどの演出によるものだ。その300SLをモチーフにした現代版スポーツカー、SLS AMGにも相通じる雰囲気で、SLのK(ドイツ語の「kurzクルツ=短い」)モデルとしては至極当然のデザイン帰結とも言える。
ディメンジョンはSLRマクラーレン風だった先代より長さと幅で35mm大きくなった程度で、ホイールベースに変化はない。全長4.1m強というSLKならでは扱いやすいサイズ感に変わりがないのは嬉しいところ。逆に最小回転半径は10cm短縮されている。
ノーズに収まるエンジンは「SLK200ブルーエフィシェンシー」の1.8L直4ターボと「SLK350ブルーエフィシェンシー」の3.5L V6の2機種。前者は先代の直噴+スーパーチャージャーと変わらぬ184psを手にしながら20Nmトルクアップ、後者は新型で直噴化を図ったことにより従来比1ps&10Nmのアップを実現している。組み合わされるトランスミッションは両者ともに7速ATである7Gトロニックプラスとなる。またパワーステアリングは先行した新型Cクラス同様に電動化が図られている。
まずはSLK200からドライブ。何はともあれオープンにする。バリオルーフのスイッチはセンターコンソールのソフトパッドの中にあるレバーを引くタイプとなった。優雅で複雑な動きを見せるバリオルーフのマジックショーは終了まで20秒弱。これは先代よりはタイム縮小しているものの、最近のこの手としては時間がかかるほうで、走行中の開閉はNGである。進化を感じるのはトランク容量増でルーフ収納時250L、通常355Lは必要にして十分。先代の185&277Lに比べれば格段にアップしている。
シフトをDレンジに入れ、Eモードで走り出すと2000rpm手前からターボ過給の恩恵が体感できる。先代のスーパーチャージャーより確実に低回転域が扱いやすくなっている。加えて7速に多段化されたことで効率良いギアを選択してくれ、さほど回転を上げずにスピードに乗せることができる。
嬉しいのは3500rpmあたりから気持ちいいサウンドを奏でてくれることだ。それだけにSやMモードに切り替え、回転を上げてサウンドとともにリズミカルに行うシフト操作は「楽しい」のひと言。ちなみに高速道路での100㎞/h巡航は6/7速で1800/2200rpmあたり。そして、ここからでも即、加速体勢に持ち込めるから頼もしい。

新型SLKのラインナップは「SLK200スポーツ」「SLK200」「SLK350」の3モデルとなり、それぞれにAMGスポーツパッケージが用意される。
アイドリングストップを備え低燃費を実現するSLK350
次にAMGスポーツパッケージを備えたSLK350に乗る。SLK200の軽快感に対して、迫力あるサウンドや車重増により落ち着きを感じる。走り始めれば排気量ゆえのトルクの太さを体感でき、アクセルのひと踏みでスッと出て行く。アイドリングストップ機能のECOスイッチも備えていて、2L車並みの低燃費を実現していることも新型3.5Lの特長である。
SLK350はこれまでのダイレクトステアリングに加え、スポーツモード付ダイナミックハンドリングパッケージを標準装備している。スポーツモードを選択しても突っ張り感は少なく、しなやかさを保ちながら4輪がしっかり路面を掴んで行くフィーリングだ。それだけにワインディングロードでの楽しさは倍加する。AMGスポーツパッケージはランフラットではない18インチタイヤを履くが、これも相乗効果となっている。トランスミッションのギア比はSLK200とまったく同じなため、すべてのスピード域でトルクの余裕を感じさせてくれる。
装備面で感心したのが操作性を高めながら、声認識で運転中も操作可能なナビ、ネットとの連携や多彩な音楽ソースを楽しむことが可能となったCOMANDシステムだ。また、ヘッドレスト背面にセットされたエアガイドはすこぶる有効だった。これはオムスビ型の透明アクリル板を左右から内側に引き出すもの。高速でオープンにしても風の巻き込みは最小限に抑えてくれ快適なドライブが楽しめた。
新しいSLKには「200スポーツ」も用意されている。メモリー付本革パワーシート、エアスカーフ、エアガイドを省いただけで525万円の価格を実現。日本専用モデルで、SLKを気軽に楽しみたい向きにはうってつけだ。
また、今回のSLKの注目アイテムでもある世界初の電気仕掛けでルーフの濃淡を切り替える「マジックスカイコントロールパノラミックバリオルーフ」は9月以降、SLK200/350にオプション設定される。
環境性能を持ち合わせた新たなスポーツ性、オープンエアの楽しさを進化させた様々なシステム、そして取り回ししやすい変わらぬサイズ感。3代目となってもSLKにはメルセデス・ベンツにおける「K」としての立ち位置が明確に受け継がれているのである。(文:Motor Magazine編集部)

COMANDシステムは新世代のものに進化。ATは全モデル7Gトロニックプラスを搭載する。ダッシュボードクロックはオプション。

初代から採用されるバリオルーフはSLKのアイコン。3代目はマグネシウムフレームの採用により軽量化と開閉時間の短縮を実現した。
メルセデス・ベンツ SLK200ブルーエフィシェンシー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4145×1845×1305mm
●ホイールベース:2430mm
●車両重量:1440kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1795cc
●最高出力:135kW(184ps)/5250rpm
●最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1800-4600rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:580万円(2011年当時)
メルセデス・ベンツ SLK350ブルーエフィシェンシー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4145×1845×1295mm
●ホイールベース:2430mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:225kW(306ps)/6500rpm
●最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3500-5250rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:770万円(2011年当時)