MJF全日本トライアル選手権国際A級スーパーを現在12連覇中のトップライダーがいる。小川友幸選手である。そんなレジェンドをバイクはもとよりHondaのパワープロダクツ製品が長年にわたり支え続けている。
今回は、そんな小川選手にトライアル競技の魅力や長くトップでいられる秘訣を聞いてみた。
(Motor Magazine2025年月号より)(聞き手:千葉知充 写真:井上雅行 TEXT Tomomitsu Chiba PHOTOS Masayuki Inoue)
MJF全日本トライアル選手権国際A級スーパーのトップライダー小川友幸選手に聞いてみた。
千葉 トライアルを始めたきっかけはどのようなものですか。
小川友幸選手(以下、小川)父が趣味でやっていたことと、鈴鹿でやっていたスタジアムトライアルで当時のトップライダー工藤選手の走りを見て、自分で自転車を見つけて始めたのが最初です。

小川友幸(Tomoyuki Ogawa)14回の全日本タイトルホルダー。現在12連覇中、全日本勝利数58を数えるレジェンドライダー。マシン開発、デモンストレーション、スクールバイクによる災害支援、動画配信と各方面で活躍。
千葉 それは何歳ぐらいですか。
小川 幼稚園の頃から遊びで自転車に乗っていましたが、選手になることは考えませんでした。ただ小学校3年生ぐらいからは、ホンダのQR50というキッズ用のオフロードバイクで走り回っていました。中学2年生で自転車の世界チャンピオンになってからは本格的にバイクに転向し、16歳で国際ライセンスを取得して全日本戦に参戦するようになりました。
千葉 12年連続チャンピオンですが、長くトップでいられる秘訣は。
小川 16、17歳のころ最高峰クラスの日本2位には最短でいけたのですが、そこから優勝できずに2位、3位が続いていました。 90 年代から全日本に参戦して最初に勝ったのが2007年ですから、その間はずっと勝てない時期が続いていました。トレーニングもしていたし、いろいろと努力してきましたが、やはり勝てませんでした。
千葉 どうして急に勝てるようになったのですか。
小川 2007 年に、この人のために勝ちたい、という人に出会えたのが大きいです。それまでは負けた理由を探していましたが、唯一その人は、次は何をしたら勝てるのか、こんなことをやってみてはどうかという提案をしてくれました。そして勝つコツにも気づきました。ここが勝負どころ、ここをおさえればこの試合は勝てる、というのがわかるようになったのです。
千葉 ケガすることもありますか。
小川 けっこうあります。ドクターストップは何回かありましたが、これまでは幸いにも絶対出られないという状況はありませんでした。トライアルは1戦でも欠場したらほぼチャンピオンは獲れません。全戦に出て3位とか4位でもポイントは獲らないとシリーズタイトルは獲れません。なんとしても出場しないといけないので、完治しないまま走り続けています。
Hondaワークスの小川選手。子供の頃に呼ばれていたガッチの愛称が現在の公式ニックネームとなった。
千葉 GATTI(ガッチ)が愛称で声援が多いですね。これにはどのような意味があるのですか。
小川 イタリア語でネコという意味です。昔よく、〝しなやかなライディングですね〟や〝ネコのような動きですね〟と言われていたのでニックネームにしているというのは表向きで、本当は子供のころみんなにガッチ(オガワッチ→ガッチ)と呼ばれていたからです。

全日本トライアル選手権第4戦北海道・和寒大会国際A級スーパーのスタート。多くの観客から「ガッチ〜」と声援が飛んだ。