ラリー制覇を主目的に、4G63型パワーユニットを240psから250psにアップ
開発上の第一の課題は、エンジンや駆動系がランサーのコンパクトなボディに搭載できるかどうかだった。ただ、ランサーは、ガソリンエンジンより大柄なディーゼルエンジンを積んだグレードを輸出していたので、スペースとしてはぎりぎりであったが確保できた。駆動系もギャランVR-4のものを、ランサーのコンパクトなボディに移植することができた。

走行性能ももちろん期待されたが、乗り手を選ぶマシンという位置づけだった。アンダーステアの克服がその後のテーマとなった。
ランサーエボリューションに搭載されたパワーユニットは4G63型インタークーラーターボ。パワーはギャランVR-4の240psを250㎰までチューニングしパワーアップした。4WDシステムは、ギャランVR-4を踏襲してセンターにビスカスカップリングLSDを採用したフルタイム4WDだ。横置きトランスミッションはケース内にメインシャフト、カウンターシャフト、トランスファー/フロントデフの3軸で、前輪はフロントデフを介してドライブシャフトを通して駆動を伝える。後輪はトランスミッションからトランスファーで横回転を縦方向に補正し、プロペラシャフトでリアデフに駆動を伝える。前後駆動配分は50:50だ。
ギャランVR-4はパワーユニットを横置きにし、トランスミッションが右(運転席)側に来るレイアウトを取っていた。ランサーもこの形式を受け継いでおり初代ミラージュから変わらないレイアウトだ。サスペンションはフロントストラット、リアがマルチリンクの4輪独立式だ。ここはランサーエボリューションのベースモデルとなるランサー1800GSRのシステムを踏襲しつつ強化したものとなっている。

1993年のモンテカルロラリーでデビューしたランサーエボリューション。このときは4位でフィニッシュ。コンパクトなボディはラリーで有利だった。
登場の背景から見てモータースポーツでの活躍を語らないわけにはいかない。WRCデビューは、1993年の第1戦モンテカルロラリーだ。ドライバーはケネス・エリクソン(スウェーデン)とアーミン・シュワルツ(ドイツ)。このときの成績は総合4位と6位でデビュー戦にしては上々。同年は8戦に出場し、第6戦アクロポリスラリーで3位、最終戦RACラリーでは2位を獲得した。優勝こそなかったが、まずまずの成績といえるだろう。国内モータースポーツでも、有力ドライバーは続々とランサーエボリューションに乗り換え、実戦投入していった。
ランサーGSRエボリューション主要諸元
●全長×全幅×全高:4310×1695×1395mm
●ホイールベース:2500mm
●車両重量:1240kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:250ps/6000rpm
●最大トルク:31.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:10.2km/L
●車両価格(当時):273.8万円