MIVECの最適化などで細部を磨き上げたエボⅨ MR

エクステリアは小変更にとどまる。フロントバンパー左右下部のエアダム形状を若干変更し、空力特性を煮詰めた。
2006年8月、4G63型エンジンを搭載した最後のランサーエボリューションが、エボリューションIX MRだ。エボリューションIXが市販車として完成域に達したクルマだったため小変更にとどまった。目立った変更点では、MIVECの最適化と、ターボのタービンホイール材質をインコネルからチタンアルミ合金に変更したことが挙げられる。コンプレッサーホイール入口径を縮小したことと合わせ、レスポンスを向上させた。最高出力は従来モデルと同様に280ps/6500rpmで、最大トルクは6速MT搭載のGSRでは40.8kgm/3000rpmを発生した。
駆動系を見ていくと、GSRはセンターデフにACD、リアデフにスーパーAYCを採用した4WDで変わりはない。すでに熟成も進み、一般走行では最高レベルの4WD車になった。RSに関しては、センターデフはACDであったが、競技使用時のフロントデフ、リアデフに関しては多板式LSDに交換することが多かった。これは最後まで変わらないメソッドである。
シャシは、ストラット/マルチリンクのサスペンションを引き続き採用している。変更点は、しなやかな特性を持つアイバッハ社製コイルスプリングを、従来品よりも高めのスプリングレートで採用したことだ。これをビルシュタイン社製ショックアブソーバーと組み合わせて減衰力を最適化するなどで、穏やかな挙動と優れた接地性を追求した。

GSRでは、リアドアとリアウインドーのプライバシーガラスを標準装備とした。トランクリッドには「MR」のエンブレムが備わる。
サスペンションセッティングの変更に合わせて、後輪駆動力配分システムであるスーパーAYCの制御をよりスポーティな方向にチューニングした。具体的には左右後輪の駆動力制御量を約10%増大させることでオンロードでの旋回性能を向上させている。また、リアタイヤがインリフトする場合や左右で路面状況が異なる場合などでのトラクション性能も向上させている。ボディでは、フロントバンパー左右下部のエアダム形状を若干下方に延長することで、車体下面へ流入する気流を減少させ、空気抵抗の低減とフロントリフト低減を実現した。
また、その左右エアダム両側面に設けた凹形状によって、車体側面の気流を意図的に剥離させることで、ホイールハウス内にこもる空気を効果的に排除している。GSRに標準装備されるエンケイ社製17インチ軽量アルミホイールは同サイズながら従来品よりも明るいシルバー色に変更され、GSR/RSともメーカーオプション設定のBBS社製17インチ鍛造軽量アルミホイールは、新たに金属の素材感のあるダイヤモンドブラッククリア塗装としてプレミアム感を高めた。

アルカンターラと本革を組み合わせたレカロ社製バケットシートにアクセントとしてレッドステッチを追加している。
インテリアでは、インストルメントパネルオーナメントとセンターパネルをピアノブラック塗装としてプレミアム感を演出。アルカンターラと本革を組み合わせたレカロ社製フロントフルバケットシートには、アクセントカラーとしてレッドステッチを追加している。国内モータースポーツでは、トップクラスのドライバーは躊躇なくエボリューションIX MRを投入した。その効果もあり、ラリー、ダートトライアル、ジムカーナとカテゴリーを問わない活躍を見せた。
ランサーGSRエボリューションⅨ主要諸元
●全長×全幅×全高:4490✕1770×1450mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1410kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:40.8kgm/3000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:10.0km/L
●車両価格(当時):357万円
ランサーGSRエボリューションⅨMR主要諸元
●全長×全幅×全高:4490✕1770×1450mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:40.8kgm/3500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:10.0km/L
●車両価格(当時):362.25万円


