MIVECを採用したエボリューションⅨ

低回転から高回転までフレキシブルなエンジン特性を与えられたエボリューションⅨ。足回りもセッティング変更が行われている。
2005年3月に登場したランサーエボリューションIXの最大のポイントは、シリンダーヘッドにMIVECを搭載したことだ。MIVECは連続可変バルブタイミング機構で、回転域により吸気側のバルブタイミングをコントロールするシステム。三菱自動車ではCA4Aミラージュサイボーグから採用していたもので、エンジンが高回転になると吸気カムの閉じが遅く切り替わり、より多くの混合気を吸気できる。このため吸気効率が上がりパワーアップするというシステム。これにより実用域の扱いやすさと燃費も向上し、フレキシブルなエンジン特性となった。
グレード展開は、ACD+スーパーAYC+スポーツABSによる電子制御4WDシステムと6速MTを採用した最上級グレードのGSRが主力。もちろん専用の軽量ボディに、新開発のチタンアルミ+マグネシウム合金ターボチャージャー、5速MTとACD+リア機械式LSDを採用したモータースポーツベースグレードのRSも設定されていたが、今回のモデルチェンジでは新グレードの設定も行った。GSRと同様に遮音性能を向上させた快適なボディ仕様にRSと同様のターボチャージャーと駆動系システムを採用したGTをラインアップしたのだ。

リアバンパー下部をディフューザー形状とした新デザインで、空力特性を考慮しながら軽快かつスポーティなスタイルとなった。
具体的にパワーユニットから見ていこう。4G63型+インタークーラーターボユニットは、吸気側カムシャフトに連続可変バルブタイミング機構(MIVEC)を採用したことで、高回転域における高い性能を確保しながら、燃費を向上させたのは先述のとおり。また、ターボチャージャーのコンプレッサーハウジングのディフューザー形状を改善して、低中速回転域のトルク向上(GSRで最大トルク40.8kgm/3000rpm)を図り、全域で平均約5%レスポンスも向上させた。ターボチャージャーのコンプレッサーホイールの材質をアルミニウム合金からマグネシウム合金に変更したこともレスポンス向上に貢献している。トランスミッションは、GSRの6速MTは変更がないが、GT/RSの5速MTは、従来のクロスレシオミッションをベースとして、5速の変速比を変更し高速クルージング性能を考慮した設定としている。
駆動系では、エボリューションVIIIから採用されたセンターデフがACD、リアデフはスーパーAYCを引き続き採用している。ただモータースポーツユースのRSの場合は、多板式LSDを入れるのが主流だった。シャシ関係では、GSRとGTでは、リアのスプリングを変更して車高をわずかに下げることで、リアのスタビリティを向上させるとともに、GSRでは、このことによってスーパーAYCの効果をより有効に引き出し、操舵応答性も向上させた。エクステリアも変更された。一番目立つのは、グリル一体型フロントバンパーが、スリーダイヤの台座を廃したシンプルなデザインに一新されたことだ。開口部を大きく設けて十分な冷却性能を確保し、不要な箇所は塞ぐことで空力特性に配慮した。

向かって左側の吸気カムシャフトに取り付けられたMIVEC。本体はシリンダーヘッド内部になる。複雑な機構であり、メリットだけではくデメリットもあった。
ヘッドランプ及びリアコンビランプのエクステンション部にダーククリア処理を施し、プレミアム感を向上させたのもポイント。またフロントまわりにエアダムエクステンションとガーニーフラップがディーラーオプションとして設定された。リアバンパーは、下部をディフューザー形状とした新デザインを採用して、コーナー部の処理など空力特性を考慮しながら、軽快かつスポーティで特徴的な形状としている。空力的に重要なリアスポイラー垂直翼はボディ同色の樹脂製としながら、カーボン製の水平翼を中空化することで重心高の低下を図った。
インテリアを見てみると、GSRとGTでは、インストルメントパネルにカラークリアコーティングを施したカーボン調オーナメントを採用した。また、アクセル、ブレーキ、クラッチの各ペダルにアルミペダルを採用して、スポーツドライビング時の操作性を考慮しながらレーシーな雰囲気を演出している。シートにはGSRでは、座面には滑りにくく長時間の運転でも快適なアルカンターラを配し、前面サイドには滑りがよく乗降性に優れるだけでなく上質なアクセントともなる本革を配したレカロ社製バケットシートを採用。シフトレバーパネルにも、カーボン製のロゴプレートをあしらっている。

レカロ社製バケットシートをフロントに設定。座面には滑りにく長時間の運転でも快適なアルカンターラを採用している。
さらに一般走行での快適性確保のため、GSRとGTでは、高密度ダッシュサイレンサーや2重ウエザーストリップを採用して、車内の騒音レベルを低減している。ホイールに関しては、エンケイ社製5本ツインスポークデザインの軽量アルミホイール(17x8JJ)を新たに採用した。これは従来と比較して1本あたり0.15kgの軽量化を実現した。ブレーキシステムはブレンボ社製ベンチレーテッドディスクブレーキを継承している。

