開発にあたって「とことんネガティブな部分を潰していった」
CR-Vはグローバルカーであり、ホンダの屋台骨を支えるモデルである。2010年の世界販売を見ると、シビックが63万台、アコードが61万台、これに続くのがCR-Vで53万台だった。このところ日本では影が薄いのは事実だが、ホンダにとっては非常に重要なモデルであり、フルモデルチェンジにエンジニアの気合いが入らないわけがない。実際に試乗会場でのプレゼンテーションではその気合いに圧倒された。会場のすぐ隣のビッグサイトは、東京モーターショーでホットだったが、こちらもそれに負けないくらいエンジニアたちの情熱が感じられた。
手法としては「とことんネガティブな部分を潰していった」ということで、そこに一切妥協はないようだ。初代から3代目まで実績を上げてきた人気モデルだけに、こうしたアプローチ、すなわちキープコンセプトで徹底的にクルマを煮詰めていくという手法をとるのは当然のことだ。また、開発責任者の外村明男さんは98年から08年までBARホンダF1で車体開発のリーダーを務めていたそうで、その経験を活かして4代目CR-Vを妥協することなく作り上げたと強調していた。F1撤退を表明したときの福井社長(当時)の言葉が思い出された。「F1で鍛えられたエンジニアリングを市販車に活かす」という主旨のことを言っていたのだが、このCR-Vこそ、そうしたメF1の経験モが活かされたクルマということになるのだろう。

2.4Lエンジンを搭載した4WD仕様の「24G」。トランスミッションは5速AT。スタイリングは先代モデルのイメージを随所に残しながらも、全体的には迫力と存在感が増している。
ドライバーに軽快感を与えるセッティング
さて、はじめに試乗したのは20G。これは日本専用に開発されたモデルで、2Lエンジン+CVTのFFだ。車両価格は248万円で2.4L+5速ATの4WDモデルよりも27万円安い。また、燃費はJC08モードで14.4km/Lと4WDモデルの11.6km/Lより20%ほど低燃費だ。降雪地帯ではないオンロード走行中心のユーザーにおすすめのモデルで、ホンダも量販を期待しているようだ。
さっそく走り出したが、出だしはなかなかよい。1460kgのボディに最高出力150ps/最大トルク191NmのFFとしては軽快感がある。アクセルペダルを踏み込むと一気にボディは前へ動き、頭はヘッドレストへ押しつけられるような印象だ。ただ、そのままアクセルペダルを踏んでいると、元気がいいのは出だしだけで、あとは割とのんびりとした加速感になる。長く加速が続かないのは、そのスペックからして当然のことなのだが、出だしとその後のフィーリングにはかなり大きなギャップがある。これはドライバーに軽快感を与えるための演出なのだろうが、このセッティングには好感を持てなかった。
とくに試乗会が行われた周辺の道路、また首都高は渋滞しており、止まるか止まらないかというノロノロ運転のときにはアクセルペダルの操作に結構気をつかった。クルマが少しでも動いていると、ゼロ発進加速のときより一層飛び出す感じになるのだ。
この発進時およびノロノロ運転からの加速のフィーリングは、2.4Lエンジンの4WDモデルである24Gになるとさらに強調されてしまう。FFモデルより4WDなのでトラクションがよくかかり、エンジンもハイパワーなのだから当然のことだろう。
今回の試乗は非常に限られた状況の中でしかできなかったので、以上のようなことが気になったが、舞台が変わればまた別のことが見えてくるのだろう。それにしても、こうした出だしのフィーリングはアメリカで好まれるのだと聞くが、それでこういう設定になっているのだとしたら、CR-Vはグローバルカーではなく米国車である。そう思えば理解は深まる。
その他の部分はどうだろうか。スタイリングは好みによるが、パッケージングは素晴らしい。広いラゲッジルームとキャビン、ワンタッチで倒せるリアのフォールダウンシートなどは、さすがと思わせる部分だ。
技術的には新開発のリアルタイムAWDに注目すべきだろう。いずれにしろ、エンジニアの情熱の成果を正しく理解するには、今回とは別のステージでもう一度試乗する必要があるだろう。(文:Motor Magazine編集部)

インパネデザインは洗練されていて機能性も高い。
ホンダ CR-V 24G 主要諸元
●全長×全幅×全高:4535×1820×1685mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2354cc
●最高出力:140kW(190ps)/7000rpm
●最大トルク:222Nm(22.6kgm)/4400rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格(税込):275万円(2011年当時)

