2011年11月、3代目となるW166型にモデルチェンジしたメルセデス・ベンツMクラスに5.5L V8ツインターボを搭載した、AMGバージョン「ML63AMG」が欧州でデビューした。従来の6.2L V8エンジンを上回る出力ながら、燃費は28%も向上したというこのエンジンはどんな走りを実現していたのか。Motor Magazine編集部はその国際試乗会に参加しているので、今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年3月号より)

あり余るパワーを持ちながらナチュラルなシャシワーク

しかし、その想いはほぼ杞憂に終わった。乗ってまず確かめた、新しいML63AMGのエンジンフィーリングは、過給モノにありがちな「力こそあれど滋味に乏しい」というところとは一線を画している。

7000rpmの高回転域に至るまでパワーがたれずキリッと吹け上がっていく感触は、エンジン本体そのものの直噴&高圧縮化や、鍛造クランクやコンロッドなどを用いての高精度化によるところが大きいのだろう。量的には文句のつけようがないその力感も、回転とともに山が盛られていくことが乗り手にも伝わってくる。すなわち、新しいML63AMGのパワーフィールはかなりNAユニットに近い情感を備えているといえる。

この感触はパフォーマンスパッケージでより顕著に現れる。一方で前型を1割以上も上回るトルクは、前述のとおりごく低回転域でもたらされるため、市街地走行など普段乗りではエンジンを必要以上に回す必要もない。常速域は、2000rpmも回せば十分にカバーできる。さすがにここ一発の吹け切り感やサウンドの猛々しさは前型のそれに譲るが、時代の要請をわきまえれば、これは十分魅力的で、かつ洗練されたパワーユニットを備えているといえるだろう。

画像: トランスミッションはAMGスピードシフトプラス7Gトロニックを採用、ステアリングパドルで変速操作できる。「C」モードにするとECOスタート/ストップシステムが作動する。

トランスミッションはAMGスピードシフトプラス7Gトロニックを採用、ステアリングパドルで変速操作できる。「C」モードにするとECOスタート/ストップシステムが作動する。

そのSUV史上最強ともいえるパワーを支えるのは、3段階のダンピングアジャストと2段階の車高調整機能を備えるエアサスペンション。発進からのフルパワーにも「アシ」はよたつくことなく高重心のボディを支え、コーナーでは高い横剛性感でハンドリングのシャープネスを底辺から支えている。

パフォーマンスパッケージに至っては295幅の21インチという呆れたタイヤを履くが、それでも乗り心地にアラを出さないのは先代譲りだ。ただし、コーナーでは不自然に過ぎない敏捷性の中にメルセデス・ベンツらしい粘り気がより強く感じられるだけでなく、入力を問わないフラットライド感においても、標準車の履く265幅の20インチの方がマッチングには優れている。この傾向も先代と同様だ。

旋回力にタイヤサイズが大きく依存していないのは、40:60とやや後軸側に設定された4MATICの駆動配分に加えて、速度や舵角、Gなどの情報をもとに、モーター駆動でアンチロールバーの効きをリアルタイム制御する「アクティブカーブコントロール」が投入されたことが大きい。が、これも徹底的にロールを抑え込むような人工的な味付けでなく、作用はドライバーが違和感を覚えないギリギリのところにとどめられている。

この馬鹿ヂカラを与えられてなお、AMGの持ち味である、パワーに勝りながらもナチュラルさをおろそかにしないシャシワークは健在。それすなわち、このクルマを選ぶ価値はまったく失われていないということだ。(文:渡辺敏史)

メルセデス・ベンツ ML 63 AMG 主要諸元

●全長×全幅×全高:4817×1940×1750mm
●ホイールベース:2915mm 
●車両重量:2345kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:5461cc
●最高出力:386kW(525ps)/5250rpm 
●最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1750-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●0→100km/h加速:4.8秒
●最高速:250km/h(リミッター)
※:EU準拠

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