軽快であり乗り心地もいい、PDKの進化ぶりも印象的
さて、美しいものはその心も清らかであるというのが人間なら、かっこいいクルマは走りもよいというのが定説である。もちろん例外はあるものだが、今回はどうだろうか。まず試乗したのはボクスター。2.7Lで265ps を発揮するニューエンジンを搭載し、オプションのスポーツクロノパッケージ、PASM装着車で、トランスミッションは7速PDKだ。
このニューエンジンはボクスターSの3.4Lをボア、ストロークともに短くしたもので直噴だ。出力は従来型のボクスターが搭載していた2.9Lエンジンより最高出力は10ps高265psで、最大トルクは10Nm少ない280Nmとなっている。ニューエンジン搭載の目的はもちろん省燃費だ。オートスタート/ストップ機能を組み合わせ、PDKで燃費は従来比15.4%も良くなっている。
ドライバーズシートに座ると、ミッドシップスポーツらしい適度なタイト感が心地いい。しかし足下スペースは拡大されており窮屈ではないので、長距離走行でも疲れは少ないようだ。そもそもホイールベースを伸ばした理由は「キャビンの快適性向上が第一の目的だった」と、チーフエンジニアのビッドマイヤー氏は語る。さらに991型911でホイールベースを伸ばしたのも第一の理由は同じで、その値を100mmにしたのは直進安定性の向上にも配慮したためだそうだ。一方のボクスターは60mmの延長で収めたわけだが、これはアジリティ確保とのせめぎ合いの結果であると教えてくれた。
ハンドルに手をかけて前方を見ると、全高が低くなったにもかかわらず視界はきわめて良好だ。前にエンジンがないことのメリットだと改めて感じる。インパネまわりは最新ポルシェの流儀に沿ったもので、センターコンソール前方から手前にかけて緩やかに傾斜した部分にシフトレバーと各スイッチ類を配置する。カイエン、パナメーラからこのボクスターに至るまで共通性を感じさせる誂えになった。スポーティでありながらラグジュアリー性も合わせ持ついいデザインだ。

電動パーキングブレーキを採用し、他のモデルレンジと同様なデザイン手法となったインパネまわり。全体的にラグジュアリームードが増した。
走り出してまず感じるのは軽快であるということ。それでいて、しっとりとしなやかで乗り心地がいい。20インチのホイールとピレリPゼロを見事に履きこなしている。さらにPDKの進化ぶりも印象的だ。変速スピードが従来より速くなっているにもかかわらず滑らかなのだ。オプション装着されていたパドルでPDKを操作してみると、そのパドルのフィーリングがまたよい。オン、オフがはっきりしたデジタルフィーリングではなく、手応えがアナログ的にまるでグラデーションがかかったように変わっていくのだ。クルマの高級感とか品質感は、こうした操作系ひとつひとつの良い感触の積み重ねで高まっていくものだ。そうした意味合いでもニューボクスターは、「お見事」である。
次に報告したいのはボディ剛性の高さだ。ひと昔前はいかなるプレミアムブランドであれ、オープンモデルにボディ剛性の高さは望むべくもなく、純粋に走りを楽しみたいなら、カブリオレなど選んではいけないという人が多かった。ところがこれはもう「昔の常識は今の非常識」と言っていいだろう。ボクスターの全体的な走りのクオリティは、ボディ剛性の高さを頼りにサスペンションがいい仕事をすることで生まれているものだ。
さて、試乗コースは海沿いの一般道から高速道路に入る。ここで説明しておきたいのがコースティング機能だ。ニュー911にも採用されているもので、走行中、一定の条件を満たすとクラッチが切れエンジン回転が落ち、クルマはそのまま惰性で走行して燃費を稼ぐというものだ。高速道路を巡航しているときなどはコースティングに入りやすい。
ビッドマイヤー氏によれば、PDKの場合、基本的にどのギアでもコースティングに入れることはできるという。巡航時にゆっくりとアクセルペダルから足を離せばよいそうだ。このシステムの作動のさせ方については、エンジニアの間で議論が白熱したとのこと。確かにスポーツ走行をしているときは、アクセルペダルから足を離すのも早い。このシステム作動のルールを知らずに試乗していたが、違和感はまったくなかったので、これは正解だろう。なお、強制的にコースティングに入れる方法もある。巡航時、シフトアップ側のパドルを2回続けて押してやればよい。7速に入っているときは、1回押せばコースティング状態になる。
