文: 中村圭吾/写真: ポルシェジャパン
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最高出力1156psという衝撃のスペック
ポルシェ カイエンについてはいまさら説明するまでもないだろう。2002年の初代登場以来、ポルシェの販売を支え続け、2020年には累計100万台を突破。SUVでありながらニュルブルクリンクで最速タイムを記録する「ターボGT」を送り出すなど、いまや911と並ぶブランドの象徴となっている。
そのカイエンにフル電動モデル「カイエン エレクトリック(以下、カイエン)」が加わった。ラインナップはSUVとクーペの2種類のボディに、それぞれカイエン、S、ターボを設定。すべて駆動方式は4WDとなるが、出力特性はモデルごとに大きく異なる。
中でも話題はやはりトップグレードのターボだ。ローンチコントロール使用時には最高出力850kW(1156ps)、最大トルク1500Nmを発揮。0→100km/h加速はわずか2.5秒、最高速260km/hという、もはやスーパースポーツカーの領域に踏み込んだ性能を持つ。しかもリアモーターをオイルで直接冷却する専用システムによって高出力を連続して維持できるなど、その中身も尋常ではない。もっとも、今回強く印象に残ったのは、この1156psではなかった。

千葉県木更津市のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京で行われた試乗会では、ポルシェジャパンの代表取締役社長イモー・ブッシュマン氏も登壇。新型カイエンエレクトリックターボについて説明した。
エクステリアは低いボンネットフードと張り出したフェンダーというカイエンらしいシルエットを継承しながら、Cd値は0.25まで向上。アクティブエアロブレードをはじめ、ポルシェが長年モータースポーツで培ってきた空力技術が惜しみなく投入されている。
足まわりも全モデル標準となるPASM付きアダプティブエアサスペンションに加え、後輪が最大5度転舵するリアアクスルステアリングを採用。さらにSUVとして初めてポルシェアクティブライドも設定される。BEV専用プラットフォームによる低重心も相まって、走りへの期待は自然と高まる。
ターボだと思って全力で走っていた
試乗コースはポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)のハンドリングコースだ。
以前タイカン ターボ GTでポルシェBEVの強烈な加速力はすでに体験していたが、SUVであるカイエンがどこまでスポーツカーらしい走りを見せるのか・・・。それが今回最大の興味だった。
走り出してすぐ、その印象は覆される。従来の内燃機関モデルのカイエンと比べて圧倒的に低重心で、ハンドルを切った瞬間の初期応答が鋭い。SUV特有の重心の高さや鈍さをほとんど感じさせず、ノーズは行きたい方向にスッと向きを変えていく。
ノーマルモードでは適度なロールを許容するが、スポーツ、そしてスポーツプラスへ切り替えた瞬間にキャラクターは一変する。車高が下がり、ボディの動きが引き締まり、ハイスピードコーナーでは4つのタイヤをしっかり使って路面へ張り付くように旋回していく。「SUVなのに・・・」という前置きすら不要なほど、ポルシェらしい一体感だった。

試乗はポルシェブランドの世界を体感できる施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」のハンドリングコースを中心に行われた。ペースカーを先頭に4台のカイエンエレクトリックが同時に走った。
試乗は4台が隊列を組み、ペースカー先導でスタート。1周目は慣熟走行。2周目からペースが一気に上がる。もちろんこちらもドライブモードを「スポーツプラス」へ。
疑似V8サウンドを響かせながらアクセルペダルを踏み込むと、想像以上の加速で前車へ食らいつく。ブレーキングでは差を詰められる。コーナリングでもギリギリだが十分速い。ところが立ち上がりだけは違った。アクセルペダルを踏み込むたびに、前車との距離がみるみる開いていく。
「何かがおかしい」こちらのペースも決して遅くはないはずだ。しかしストレートだけがどうしても追いつかない。さらに同じ速度でコーナーへ進入すると、こちらはわずかにラインが膨らむ。
腕の差なのか。それともタイヤの違いなのか。まさかドライバーの体重差か・・・? 熱くなり始めたそのとき、無線から「少しペースを落として下さい」という指示が飛ぶ。
そこでようやく冷静になった。そしてピットへ戻って謎は解けた。私が乗っていたのは、1156psのカイエンエレクトリックターボではなかったのである。
勘違いが教えてくれた、本当のカイエン エレクトリック
試乗車4台のうち、ターボモデルは1台だけだった。私は終始、標準モデルでターボを追いかけていたのだった(乗り込む前に確認しろよ!)。どおりで追いつけないわけです。しかし、この瞬間、むしろカイエン エレクトリックというクルマの評価は一段と高くなった。
ターボではない。それでもハンドリングコースをターボやSと並んで走り切る運動性能を持っていたのである。もちろん1156psのターボの速さは圧巻だった。今回、本当に驚かされたのはベースモデルの素性の良さとポテンシャルの高さだった。
コース外の取り付け路へ移ると、コンフォートモードに切り替えてみた。ポルシェアクティブライドが路面の凹凸を巧みに吸収し、先ほどまでのスポーツ性とは別の顔を見せる。

カイエンエレクトリックターボのプレゼンを聞いて、頭がいっぱいだった筆者は用意された4台の試乗車は「すべてターボ」だと思い込んで、車両のグレードも確認せずにコースインした。
さらに、最後はオフロードコースも体験することができた。大きなクロスアクスルや急勾配の下り坂でも電子制御が自然に姿勢を整え、オンロードだけではないSUVとしての実力も確認できた。
実際にオフロードを積極的に走るオーナーは多くないかもしれない。それでも1台でスポーツカーのような走りから長距離ツアラー、さらには悪路走破までこなしてしまう懐の深さこそ、新しいカイエン エレクトリック最大の魅力なのだろう。
1156psという数字は確かに刺激的だ。しかし今回の試乗で心を動かされたのは、その数字ではなく、ターボと勘違いしてしまうほど完成度の高い標準モデルこそ、BEV時代を迎えたカイエンの真の実力を物語っていた(ということで許してください、今度はぜひターボを試乗させてください)。

カイエンで本格的なオフロードを走るユーザーは少ないと思うが、所有するオーナーにとってはいざという時にこれだけの性能があるということ自体が何より心強く、頼りにもなるはずだ。
ポルシェ カイエンエレクトリック 主要諸元
●全長×全幅×全高:4990×1980×1675mm
●ホイールベース:3023mm
●車両重量:2550kg
●パワートレーン:モーター
●最高出力:325kW(442ps) ※ローンチコントロール時最高
●最大トルク:835Nm ※ローンチコントロール時最大
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●バッテリー 総容量 113.0kWh
●一充電走行距離(WLTCモード):636km
●タイヤサイズ:215/60R17
●車両価格(税込):1335万円
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