昭和を駆け抜けた和製スポーツモデルたち。その勇姿を、モーターマガジン社の70年以上にわたる取材記録や当時の写真を基に紹介しよう。今回は、1962年に発売された、プリンス スカイラインスポーツだ。

▶▶▶写真はこちら|プリンス スカイラインスポーツ(画像6枚)

プリンス スカイラインスポーツ<BLRA-3型:1962年(昭和37年)>

プリンス スカイラインスポーツは、最初にイタリアン デザインを取り入れた日本車として歴史に名をとどめている。同時にそれは、初めての本格的スポーツカーを志向した日本車としても大きな意味を持っている。たしかに昭和34(1959)年6月には、FRP製ボディを載せたダットサン スポーツS211がデビューしてはいるが、性能的にはさほど見るべきものはなかったし、その発展型であるフェアレディ1500の登場は、昭和37年10月のことだったからである。

プリンス グロリアのシャシに、一匹狼と言われたデザイナー ジョバンニ・ミケロッティによるデザイン、デュアルヘッドライトを斜めに配置した異色のフロントデザインを示した2ドアクーペとコンバーチブルが、昭和35年11月の第42回トリノ ショーで出品されて注目を集めた。これに続き、昭和36年の全日本自動車ショーにも展示された後、翌37年4月から市販に移された。

画像: リアのオーバーハングをたっぷりとったプロポーションは日野 コンテッサクーペにも通じる、ミケロッティらしい造形ラインだ。

リアのオーバーハングをたっぷりとったプロポーションは日野 コンテッサクーペにも通じる、ミケロッティらしい造形ラインだ。

第2次大戦後の世界の自動車界の大きな特徴のひとつとして、自動車スタイリングについて主眼が置かれたことがあげられる。ピニンファリーナ、ベルトーネ、そして後にはジウジアーロがその任にあたるわけだが、ミケロッティも独特の造形感覚により多くの名作を残している。中でもトライアンフ社での業績は、量産車のトライアンフ ヘラルドをはじめとして数多いが、スカイラインスポーツも彼の重要な作品のひとつといってよい。

戦前の日本の乗用車に、今日的な意味でのデザインがあったかどうか甚だ疑わしいが、戦後になっても少なくとも昭和30(1955)年のトヨペット クラウン、ダットサン110のデビューまでは、デザインは二の次の状態が長く続いた。そして日本車のデザインに新風を吹き込んだのが、あくまでもヨーロッパ的なバランス感覚を重んじたダットサン ブルーバード310(昭和34年)であることは衆目の一致するところだ。

しかし、昭和30年代のプリンスのデザイン ポリシーはそれとはやや異なり、アメリカ車的な派手好みな傾向が目立っている。初代スカイラインにしてもグロリアにしても、2トーンカラーやテールフィンなどアメリカの流行に忠実だったが、その志向はスカイラインスポーツにも反映されている。ヨーロッパのスポーツカーといえば2座もしくは2プラス2と相場が決まっていたのだが、このクーペは5座、コンバーチブルは4座となっている。もっとも、ベースがグロリアだったのだから当然だろう。

画像: ナルディ風のスポーツハンドルが装備されているが、タコメーターは装備されない。トランスミッションは4速MT、シフトレバーはコラム式だ。

ナルディ風のスポーツハンドルが装備されているが、タコメーターは装備されない。トランスミッションは4速MT、シフトレバーはコラム式だ。

エンジンはグロリアのGB4型で、直4のOHV、1862ccだが、吸排気系の改良により出力は94psに増大している。ホイールベースは2535mm、全長×全幅×全高は4650×1695×1385mmで、車両重量は1350kg、馬力(SAE)当たり重量は14.3kg/psである。前輪はウイッシュボーン/コイル独立懸架、後輪はド・ディオン アクスルが採用され、ロードホールディングに優れ、最高速も当時の日本車最高である150km/hとなっていた。

1963年5月の第1回日本グランプリには、スカイラインスポーツも2台参加し、フェアレディ、MGB、トライアンフTR3/4などと競り合ったが、のちに日本を代表する名ドライバー、生沢 徹のドライブでも10位にとどまった(優勝はフェアレディ)。

今から考えるとスカイラインスポーツの性格はやや中途半端だった。スポーツカーとしての圧倒的なパンチもなく、ポピュラースポーツカーとしての大衆性も見られなかった。何しろ当時の新車価格はクーペ185万円、コンバーチブル195万円と、クラウンの2倍、ブルーバードの約3倍と、まさに高嶺の花だった。作られたのもわずか60数台だが、その後の日本のクルマづくりや本格的デザインの重要性を強く印象づけた点では、測り知れぬ重要な役割を果した。しかし不遇なパイオニアとして、2年後にひっそりと姿を消したのが惜しまれる。

画像: スポーツと車名には謳われているものの、スカイラインスポーツはあくまでラグジュアリーなクーペだった。

スポーツと車名には謳われているものの、スカイラインスポーツはあくまでラグジュアリーなクーペだった。

プリンス スカイラインスポーツ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4650×1695×1385mm
●ホイールベース:2535mm
●車両重量:1350kg
●エンジン:直4 OHV
●総排気量:1862cc
●最高出力:94ps/4800rpm
●最大トルク:15.6kgm/3600rpm
●燃料供給装置:キャブレター
●トランスミッション:4速MT
●駆動方式:FR
●タイヤサイズ:5.90-15 4PR
●当時の車両価格:185万円

This article is a sponsored article by
''.