2012年3月、3代目となるポルシェ ボクスター(981型)の国際試乗会が南仏サントロペで開催された。Motor Magazine編集部はそこで開発に携わった3人のキーパーソンに話をうかがうことができた。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年5月号より)

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カレラGTと918スパイダーのデザイン要素

新型ポルシェボクスターの国際メディア試乗会で、3人の開発スタッフと話をした。場所は南フランス。ミッチャ・ボルカート氏はデザインのジェネラルマネージャーだ。「新しいボクスターは先代から大きく変わりましたが、先代と同様にコンパクトなロードスターであることには変わりありません」

会場には初代ボクスターがディスプレイされていたが、ずいぶんと印象が違う。フロントエンドから左右のフェンダーにいたるまでに複雑な線と面が幾重にも交錯している。サイドに回り込んでもそれは変わらず、大きくなったエアインテークが目立つ。

「エアインテークは、カレラGTのモチーフを導入した」なるほど、たしかにカレラGTみたいだ。「こちらには918スパイダーのイメージを盛り込んだ」ボルカート氏が後ろに回り込んで指差したのは、リアスポイラーだ。ボディ本体をつまんだように、最初から左右のテールライトの間が横一文字に隆起している。なるほどこちらも、918スパイダーからの引用だということがひと目でわかる。

「ポルシェのスーパーカーであるカレラGTと918スパイダーのデザイン要素をいくつも入れた」スーパーカーではないボクスターに、スーパーカーのデザイン要素を用いたとボルカート氏は自信満々に答えた。

『形態は機能に従う』というバウハウスの理念をあえて持ち出すとすれば、今度のボクスターのエクステリアデザインは『饒舌』である。機能以上のことを委ねようとしている。

ホイールベースが60mm 延長され、フロントトレッドが40mm、リアトレッドが18mm 拡大された以上にプロポーションを大きく改めているのは、フロントウインドウの角度と取り付け位置である。100mm前方に移動し、13mm低くなり、傾斜角度も『寝て』きた。だから、走っていると実際の寸法以上に大きなクルマを運転しているような錯覚に囚われてしまう。

サントロペの海岸線を離れ、モンテカルロラリーのスペシャルステージに用いられたこともある山間部の狭くて急勾配とコーナーの続く道では、つねに車幅を意識していなければならなかった。

ボルカート氏にその点を質すと、ちょっと待てと資料を取り出した。手の平サイズにスペックや先代モデルとの比較データを記した『アンチョコ』をポケットに入れているのである。「ボディの全幅は1801mmで新旧は同じだよ」ただし、ミラートゥミラーでは、41mmも広くなっている。大きく感じたのは、ミラーのせいだったのか。

画像: スタイリングから走り、全体的な品質感に至るまで、すべての面で「予想と期待」以上の出来映えだった。

スタイリングから走り、全体的な品質感に至るまで、すべての面で「予想と期待」以上の出来映えだった。

初の電動式パワーステアリングとたった9秒で開閉する電動式ルーフ

ランチでは、シャシ担当のフローリアン・スプレンガー氏と同席した。午前中の試乗でボクスター初の電動式パワーステアリング、その素晴らしさに感銘を受けたことを報告すると、我が意を得たりと、「燃費も向上するんだ」と大きく頷いた。

直進状態から切り始める時の滑らかさとアシスト量の漸進的な変化の仕方が、存在を感じさせないくらいにナチュラルだ。正確な上に、路面とクルマからのフィードバックをすべて手の平に伝えてくれる。リファインされたエンジンとPDKトランスミッションの完成度の高さもあって、走りっぷりには文句の付けようがない。しなりと切れ味の鮮やかさは当代随一だ。効率化のためのアイドリングストップ、ブレーキエネルギー回生、コースティング機能なども新装備されている。

新型ボクスターには大きな進化がもうひとつある。たった9秒で開閉する電動式ルーフの最後のロックまでも全自動で行われるようになったことだ。先代までは、右手でレバーをガチャンとやらなければならなかった。それでも良かったが、ラクチンになった。

「ライバルに劣るわけにはいかないからね」チーフエンジニアのヘルムート・ウィドマイアー氏だ。ライバルとはメルセデス・ベンツ SLKとBMW Z4 のことだ。

ルーフ開閉システムに限らず、新型ボクスターが2台に劣っているところは見当たらない。というより2台とは成り立ちからして全然違う。ミッドシップオープン2シーターのポテンシャルを今日的な形でポルシェ流に可能な限り推し進めたのが新型ボクスターだ。新しい形を受け入れ、毎日を共にする価値は十分以上に存在している。初採用となる電動式パワーステアリングの仕上がりは見事。路面とクルマの状況が自然にまるで手に取るようにわかるのだ。(文:金子浩久)

画像: 水平対向6気筒エンジンをリアアクスル前に搭載。そしてエンジンの後方にトランスミッションを配置する。ホイールベースは60mm、フロントトレッドは40mm、リアトレッドは18mm拡大され、従来モデルよりタイヤが四隅に押し出された。また、クルマの重心は7mm低くなっている。

水平対向6気筒エンジンをリアアクスル前に搭載。そしてエンジンの後方にトランスミッションを配置する。ホイールベースは60mm、フロントトレッドは40mm、リアトレッドは18mm拡大され、従来モデルよりタイヤが四隅に押し出された。また、クルマの重心は7mm低くなっている。

ポルシェ ボクスター 主要諸元

●全長×全幅×全高:4374×1801×1282mm
●ホイールベース:2475mm 
●車両重量:1415kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2706cc
●最高出力:195kW(256ps)/6700rpm
●最大トルク:280Nm/4500-6500rpm
●トランスミッション: 7速DCT(PDK)
●駆動方式:MR
●最高速:262km/h
●0→100km/h加速:5.7秒
※EU準拠

ポルシェ ボクスターS 主要諸元

●全長×全幅×全高:4374×1801×1281mm
●ホイールベース:2475mm 
●車両重量:1425kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3436cc
●最高出力:232kW(315ps)/6700rpm
●最大トルク:360Nm/4500-5800rpm
●トランスミッション: 7速DCT(PDK)
●駆動方式:MR
●最高速:277km/h
●0→100km/h加速:5.0秒
※EU準拠

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