電動車=EV(エレクトリック ヴィークル)には、いくつか種類がある。自宅や充電スタンドで充電して走るBEV(バッテリー エレクトリック ヴィークル)やPHEV(プラグイン ハイブリッド エレクトリック ヴィークル)、外部から充電できないがモーター走行できるHEV(ハイブリッド エクレトリック ヴィークル)だ。そして、今回試乗したFCEV(フューエル セル エレクトリック ヴィークル)も電動車の一種である。

水素の充填時間は5分程度、料金は1kg1650円

今回は水素の充填も行った。場所はイワタニ水素ステーション芝公園である。

水素残量16%、走行可能距離129kmになったところで水素の充填もおこなった。今回の試乗したLoungeは、試乗中にディスプレイを確認すると、水素残量30%での走行可能距離は240kmと表示された。これだとつまり、その時の燃料消費率であれば水素量10%で約80km走ることができる。単純計算では100%で800kmということになる。

充填後は水素残量91%、走行可能距離758kmとなった。ちなみにディスプレイにはエアコンを使用しないと783km走れると表示されるが、この時期、それは無理なので当然、エアコンは使用している。つまり758−129=629km75%分の水素を充填したということである。

充填した水素量は4.74kgと表示されている。料金は1kgあたり1650円(イワタニ水素ステーションでの価格)なので1650円×4.74kg=7821円を支払った。

計算上は、7821円で629km走れるということは1kmあたり12円、水素1kgあたり約133km走れるということになる。また水素を100%まで充填すれば、当然ながらこの走行可能距離は伸びることになる。

画像: 新型NEXO Lounge+。デジタルサイドミラーが標準で装備されるが、Loungeとの違いがそれぐらいだ。

新型NEXO Lounge+。デジタルサイドミラーが標準で装備されるが、Loungeとの違いがそれぐらいだ。

ところで車両の後部下側に積まれる水素タンク容量は、先代NEXOの6.33kgから新型では6.69kgへと0.36kg増えている。

新型NEXOは水素タンク3本搭載しているので1本あたりの容量は2.23kgということだ。この水素タンクの搭載量が6.69kgからデータを元に計算すれば今回の燃料消費率では満充填で約890km走れる計算である。この長い航続可能距離は魅力的以外のなにものでもない。

たとえば1年間の走行距離が1万kmぐらいであれば、1万km÷800km=12.5、つまり年間で約13回、水素ステーションに通うことになる。

画像: フロントフード下には水素燃料電池や空気浄化システムなどが積まれている。駆動用リチウムイオンバッテリーや水素タンクは車両後方下側に配置されている。

フロントフード下には水素燃料電池や空気浄化システムなどが積まれている。駆動用リチウムイオンバッテリーや水素タンクは車両後方下側に配置されている。

水素の値段は、取材時は1kg=1650円(イワタニ水素ステーションでの価格)。NEXOは6.69kgの水素量で満充填となるので、残量0%から100%にすると1650円×6.69kg=1万1038.5円、年間13回の充填なので13回×1万1038.5円=14万3500.5円が年間の燃料代となる。

実際は残量0%で水素を充填することもないので、この金額はもう少し低くなることだろう。ハイオクの値段180円で計算するとこの料金で約797L給油することができる。リッター10kmの燃費で計算すれば、7970km走れるのでNEXOの約8割程度しか走れないという計算になる。

またガソリンには揮発油税や地方税に加え消費税などいろいろな税金が乗っかってくるが、水素には消費税しか乗っていない。これもメリットだと言ってもいいかもしれない。

新型NEXOにかぎらずFCEVのネガはやはり、ガソリンスタンドや充電スタンド並に近くに水素ステーションがないことだろう。

そこで水素ステーションを調べてみたところ、岩谷産業のウェブサイトには宮城県2カ所、群馬県1カ所、埼玉県3カ所、東京都9カ所、神奈川県2カ所、新潟県1カ所、長野県1カ所、山梨県1カ所、福井県1カ所、静岡県3カ所、愛知県6カ所、三重県1カ所、滋賀県1カ所、京都府1カ所、奈良県1カ所、大阪府7カ所、和歌山県2カ所、兵庫県2カ所、岡山県1カ所、広島県1カ所、山口県1カ所、福岡県2カ所、熊本県1カ所が掲載されていた、北海道、沖縄、四国に水素ステーションはない。

画像: ヒョンデは水素EXPOで公開した水素充填ロボット。将来的にはロボットやAIを活用した水素充填が可能になるが現状はまだ韓国でも日本でも設置されていない。日本での設置は法律的なハードルが高いとヒョンデは言う。

ヒョンデは水素EXPOで公開した水素充填ロボット。将来的にはロボットやAIを活用した水素充填が可能になるが現状はまだ韓国でも日本でも設置されていない。日本での設置は法律的なハードルが高いとヒョンデは言う。

もうひとつの水素ステーションとなるENEOSも調べた。

2026年7月1日現在、全27カ所で、福島県1カ所、東京都7カ所、神奈川県5カ所、千葉県2カ所、埼玉県1カ所、静岡県2カ所、愛知県5カ所、大阪府1カ所、福岡県3カ所である。こちらも北海道、沖縄県、四国にはない。

画像: スタートストップスイッチやギアセレクター、ウインカーが一体となったレバーがステアリングコラムにレイアウトされる。ウインカーは右側なので日本車から乗り換えても違和感がない。

スタートストップスイッチやギアセレクター、ウインカーが一体となったレバーがステアリングコラムにレイアウトされる。ウインカーは右側なので日本車から乗り換えても違和感がない。

生活圏の近くに水素ステーションがあるならFCEVがとてもメリットがある

このように水素ステーションのない県や地域でFCEVに乗るのは現実的ではない。しかし、逆に考えてみれば、東京や愛知、大阪など近くに水素ステーションがあるのであれば、FCEVは現実的な選択肢と言ってもいいだろう。具体的にはどのくらいだろうか。自宅から10〜20km圏内であれば、普段づかいで水素の充填に苦労することはないだろう。

さらに言えば、水素ステーションには営業時間があり、BEVの充電スタンドのように夜中や早朝など好きな時間に水素を充填することは難しい。そもそもセルフの水素ステーションそのものがないのではないだろうか? 勉強不足で恐縮だが、セルフの水素ステーションがあったら申し訳ない。安全面や法律の制約があるのは理解しているが、それではなかなかFCEVの普及は進まないのではないだろうか。

そんな課題があることは、ヒョンデはもちろんわかっている。そんなヒョンデは、先日、日本で開催された水素EXPOに水素充填ロボットを展示、デモンストレーションも行った。これですべて解決とは言わないが、こうした水素充填ロボットの普及はFCEVや水素社会の実現の一助になるはずである。はやく、実際にロボットに充填してもらうのを体験してみたいとその時に感じた。

高速道路のサービスエリアに水素ステーションがあればFCEVの普及が早まるかも

日本の法律をブレークスルーすることはハードルが高いが、まずはヒョンデの本拠地韓国でのこの水素充填ロボットを早く実現し、その実績をもって日本でも実現してほしいものだ。このあたりは、HMJにもHMC、HMGにも期待している。

最後にこれは希望、要望であるが、日本が本気でFCEVの普及を目指すのであれば、まずは高速道路のサービスエリアには水素ステーションを設置すべきである。それだけでFCEVで遠出するときの不安は解消されるだろう。

今回、実際にFCEVを長く試乗し、高速道路を走ってみて、そうしたことを実感した。

新型NEXOのラインナップと価格

Voyage  750万円
Lounge  820万円
Lounge+ 835万円

新型NEXO Voyage主要諸元

全長×全幅×全高=4750×1805×1690mm
ホイールベース=2790mm
トレッド前/後=1615/1625mm
最小回転半径=5.5m
最低地上高=160mm
車両重量=1890kg
ラゲッジルーム容量(VDA)=510L
燃料消費率(WLTC)=152km/kg
一充填走行距離(参考値)=1014km
FCシステム最高出力=94kW
燃料種類=圧縮水素
タンク本数=3本
タンク内容量=162(54×3)L
モーター定格出力=50kW
モーター最高出力=150kW(204ps)/4200-5000rpm
モーター最大トルク=350Nm/0-4000rpm
駆動用バッテリー種類=リチウムイオンバッテリー
総電圧=240V
駆動用バッテリー総電力量=2.64kWh
駆動方式=2WD
サスペンション形式前/後=ストラット/マルチリンク
タイヤサイズ=225/55R18
車両価格=750万円

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