マニアックなモデルだったが、価格がネックだった
ベレット1600GTが、後発メーカーであるいすゞの意気込みを如実に示した作品だったことがよくわかる。後発の企業は洋の東西を問わず、いつも立ちふさがる大企業の壁に挑戦するため、技術的にもスタイルの面でも、常に一歩を先んじた新機軸を示さなくては立ち行かない宿命を持っている。
1600GTには先述の昭和39年9月のマイナーチェンジとともに、1500GTがラインナップに加えられた。1500GTのエンジンはG150型で、直4 OHVは1471cc(ボア79×ストローク75mm)。SUキャブを2連装し、最高出力は77ps/5400rpm、最大トルクは12.0kgm/4200rpmを発生。最高速は150km/hだった。

ベレット1600GTは基本シルエットは変わらないものの、小変更や小改良が重ねられた。写真は1971年にマイナーチェンジされた後期型。
ベレット1600GTと1500GTは「ベレG」の愛称で知られ、リアのスイングアクスル特有のクセのある操縦性を持っていたが、ラック&ピニオンのステアリングシステムと相まって、当時としては数少ない正確なステアリング特性を示し、その鋭いハンドリングはスポーティ走行の醍醐味を味わわせてくれた。ただし販売台数はそれほど伸びなかった。それは93万円(1600GT)という、車格がより上のセドリック1900あたりとほぼ同じ車両価格の高さにもよるだろう。
たしかに昭和40年に鳴り物入りでデビューしたスカイライン 2000GT(S54)よりも数万円高いのは大きなハンディキャップではあった。それだけにユーザーはマニアックで個性を重んじる人たちが多かった。つまりトヨタや日産といった多数派ではなく、一匹狼とでも言おうか。
ベレット1600GTは細部変更と改良を繰り返し少数ながらも健闘したが、ハイパワー化の波には抗しきれず、ベレットGTRへと進化していく。いずれにしても、日本で「GT」の名称は、このベレットからスタートした。独特のエキゾーストサウンドとともに、クルマ好きの記憶に残る1台である。
いすゞ ベレット1600GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4005×1495×1350mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:940kg
●エンジン:直4 OHV
●総排気量:1579cc
●最高出力:88ps/5400rpm
●最大トルク:12.5kgm/4200rpm
●燃料供給装置:SUキャブレター×2
●トランスミッション:4速MT
●駆動方式:FR
●タイヤサイズ:5.60-14
●当時の車両価格:93万円



