洗練されたデザインによって独自の軽快感を演出
ワールドプレミアが2011年4月の上海モーターショーだったから、実に1年も待たされたことになる。アウディのSUVモデル、Qシリーズの末弟となるQ3がようやく日本に上陸した。
アウディと言えば、とくにセダン系は今、スタイリングがどれもかなり似通っていて、遠目には一瞬どのモデルか判別しにくいと言われる。しかしこのQ3は、Q7ともQ5とも似ておらず、ひと目でそれと判別することができる。
その理由のひとつが特徴的なディメンションだ。全長4385×全幅1830×全高1615mmというサイズは、Q5と較べると250mm短く、70mm狭く、45mm低い。つまり全方位的にコンパクトなのだが、全幅がワイドで、そしてSUVとしては低めの全高とされていることで、いかにもそれっぽい武骨さとは遠い、スポーティなプロポーションを獲得している。
そのスタイリングであるが、一番のアイキャッチは大きく寝かされたリアゲートだろう。クーペライクなフォルムが、Q5だけでなく他のSUVとも別物の軽快感を強調している。あるいは、このデザインに見覚えのある人もいるかもしれない。そう、実は2007年の上海モーターショーで発表されたクロスクーペ クワトロがモチーフになっている。しかしながら個人的には、珍しいことにむしろ目の前にある市販型のQ3の方がまとまりが良く、美しいと感じている。

リアコンビランプを組み込んだラップラウンドリアゲートが大きな開口部をもたらし、どの開閉位置でもとまるサイドドアで乗降性は良好。
インテリアは、ダッシュボードからドアトリムにかけてA8やA6などにも通じるラウンディッシュな造形とされているのが目をひく。もともと全幅はワイドだが、この造形がさらに広々と感じさせるのだ。造形やクオリティもいつもながら凝っていて、いかにもコストがかかっているという感じ。樹脂パーツはダッシュボードやドアトリムの上面はソフト素材で、下側に使われているのはハード素材なのだが、見た目にはテカリもなく、触らなければ上側との違いはわらないほどである。
ヒップポイントが比較的高めとされているのが、Q3のドライビングポジション。足を真っ直ぐ降ろすアップライトな姿勢のおかげで、ペダルオフセットは小さくないながら、それほど違和感は覚えない。A4以上のモデルでは気になるフットレストの位置も問題はない。また、ルーフが低いのに着座位置は高いとなると心配なヘッドクリアランスも、我慢を強いられるようなことはなさそうだ。
後席も、やはりヒップポイントが高く、おかげで足元にも十分な余裕がある。しかしルーフラインが落ち込んできているので、さすがに時々天井に髪の毛が触れることがあった。またサイドシルが高いというか床が低いというか、乗り降りの際に足が干渉することがあるのも、小柄な女性や子ども、お年寄りを乗せるとしたら、と若干気になる部分ではあった。
ラゲッジスペースは通常時463L、最大1365Lという容量を確保している。見た目のイメージよりも積めるなという印象。これなら、妙な言い方だが、SUVらしい使い方にも余裕で対応してくれるはずだ。

ダッシュボードからドアトリムにかけてラウンディッシュな造形のインテリア。そのクオリティはアウディらしく高い。
メカニズムを見てみよう。車体の基本骨格は、フォルクスワーゲン ティグアンと多くの部分を共用している。つまりエンジンは横置きであり、クワトロシステムは通常時は主に前輪を駆動し、必要な時だけ後輪に駆動力を配分するハルデックスタイプとなる。
エンジンは2種類。とは言っても、いずれも直列4気筒2L TFSI直噴ターボエンジンであり、「2.0 TFSI クワトロ 211PS」と「2.0 TFSI クワトロ 170PS」というグレード名の通りの出力をそれぞれ発生する。両者の違いはECUの制御プログラムだけで、スタートストップシステムと呼ばれるアイドリングストップシステムや減速エネルギー回生システムはいずれにも搭載されている。大トルクに対応する7速デュアルクラッチギアボックスのSトロニック、そしてフルタイム4WDのクワトロを組み合わせるのも両車共通である。
試乗車は「2.0 TFSI クワトロ 211PS」。エンジンにしてもシャシにしてもオールニューというわけではないので、率直に言って大きな期待を抱いて乗ったわけではなかったのだが、走り出した途端、瞠目させられてしまった。
