文: 石川順一
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近所の足を乗って楽しいものに
駅まで家族を送る。スーパーと郵便局を回る。週末は少し先の直売所まで足を延ばす。どれも片道数キロの用事で、そのたびに家のクルマを出すほどでもないが、歩きや自転車では遠い。もう1台あればと考えて、最初に浮かぶのは軽自動車だろう。
ただ、近所を走るだけの1台にも車検は巡ってくるし、置き場も1台分要る。普通免許で乗れる原付や1人乗りのミニカーなら身軽に持てるものの、誰かを乗せて出かけることはできない。
クルマの免許のまま乗れて、人を乗せられて、持つ負担が軽い。そのうえ乗ること自体が楽しければ、近所の用事すら違って見えてくる。神奈川県伊勢原市のバブルが手がける電動三輪「VIVEL TRIKE」は、そこに当てはまる1台だ。

VIVEL TRIKE。前に1輪、後ろに2輪の車体が、屋根と前面の窓を備える
クルマの免許でバーハンドルを握る
VIVEL TRIKEは前に1輪、後ろに2輪を持つ電動の三輪車で、法律上の区分は側車付軽二輪になる。名前はバイクの仲間のようだが、運転に要るのは普通免許で、AT限定でも構わない。安全を考えれば着用したほうがいいが、ヘルメットをかぶる義務もない。

斜め後方からの姿。運転席の横は大きく開いている
乗車人数は運転席に1人、その後ろのベンチシートに2人。頭上を屋根が覆い、前面の窓にはワイパーまで付く。その姿は小さなクルマのようにも見えるが、運転席に座ると目の前にあるのは丸いハンドルではない。バイクのようなバーハンドルだ。右手のグリップをひねると進み、左右のレバーを握ると止まる。足元にペダルは無い。クルマの免許で乗りながら、操る手応えはバイクに近い。免許からイメージされる操作感とは異なるというのが、まず面白い。

運転席まわり。右のグリップがスロットルで、左右のレバーが前後のブレーキになる
ブレーキレバーを握って止まるのは、バイクや自転車と同じ。前進と後進は手元のスイッチで切り替えるので、車庫入れのたびに車体を押して下がる必要もない。走りの性格は2つのバリエーションから選べる。「SMOOTH」は走り出しが穏やかで、平らな街をゆったり走る使い方に合う。「POWER」は坂の多い土地や、2人以上で乗ることが多い人、荷物をよく積む人に向く。値段はどちらも変わらないから、住む土地と乗せる人数で決めればいい。
最高速度は約50km/h。持ち場は住宅街や生活道路、休日に出かけた先ののどかな道になる。高速道路を走るための乗り物ではない。急がない一般道で、まわりを眺める余裕を持って走る。そうした時間のための1台である。
ドア無しには理由がある
車体の横は、左右とも大きく開いている。ドアを付け忘れたわけでも、値段を下げるために外したわけでもない。実は、この形の三輪車が側車付二輪自動車と認められる条件なのだ。またがり式の座席、バーハンドル、3個の車輪と並んで、運転席の横が開いていないと、側車付二輪の規定を満たせない。
だから走れば風が入り、季節の空気をそのまま受けることができる。つまり、バイクのような爽快感を味わうことができるのだ。雨の日のためには、付属する雨よけのサイドカバーを使おう。取り外しのできるこのカバーは雨風をやわらげるための装備で、クルマのように室内を閉じきるものではない。車体も完全防水ではないので、豪雨の日は出番を見送るのが賢明だ。
後ろの席にもシートベルトがあり、後退するときはバックモニターで後方を確かめられる。小さな子を乗せたいなら、専用のチャイルドシートをオプションで選べる。取り付けには車体の加工が要るため、注文のときに一緒に申し込んでおこう。

後席は2人掛けのベンチ。左右に大きな肘置きがあり、シートベルトも備える
置き場は軽より小さく、充電は自宅で済む
全長は2.26m、全幅は1.07m。軽自動車の規格は全長3.40m、全幅1.48mだから、長さで1m余り、幅で約40cm小さい。軽1台には足りない広さにも収まる寸法である。ただし長く雨ざらしにはできないので、屋根の下か、カバーを掛けておける場所を選びたい。
充電器は車体に付属する。それを家庭用の100V電源に差せば充電が始まり、工事は要らない。置き場まで電源のコードが届くかは、契約の前に見ておきたい。
1回の充電で走れる距離は、SMOOTHが120km、POWERが100km。乗る人数や坂、気温で変わるものの、片道5kmほどの用事であれば数日は充電せずにこなせる。出先では、電気自動車用の普通充電の設備も使えるのでいざというときの電欠もあまり心配がいらない。

車体後部のリアボックス。容量は48L
車検の無い2台目という持ち方
価格はリチウムイオンバッテリーを採用する「Li SMOOTH」と「Li POWER」がどちらも84万円。ナンバーを取るための諸経費と送料がこれに加わる。鉛バッテリーの「ST」なら69万円からラインナップされている。
日本自動車工業会が2025年度に行った調査では、軽乗用の新車購入額は平均196万円だった。使い道の違う乗り物なので単純には並べられないが、近所の足にかける額としては手を出しやすい。
持ってからの出費も抑えられる。側車付軽二輪は車検の対象外で、車庫証明を取る手続きも無い。税は軽自動車税で、総務省の標準税率なら年3,600円と、四輪の軽乗用車の10,800円を下回る。電気代は、100km走っても約150円で済む。
自賠責保険と任意保険は、これとは別にかかる。保証は1年または5,000kmで、点検や修理は取扱店が窓口になる。購入先は全国の取扱店のほか、伊勢原市のふるさと納税の返礼品として受け取る道もある。
試乗車を置く取扱店もあるので、購入を検討する際はそちらも訪れておきたい。乗って見ておきたいのは2つ。手で握るブレーキが自分になじむか。そして後ろの席に、乗せたい人が収まるかだ。
駅までの送りも、直売所への寄り道も、風の入る3人乗りでこなす。ビベルトライクなら、近所の用事が少し遠回りしたくなる時間に変わるかもしれない。
バブル VIVEL TRIKE Li SMOOTH/Li POWER 主要諸元
・区分:側車付軽二輪(普通免許で運転可、AT限定可)
・乗車定員:3人
・全長×全幅×全高:2,260mm×1,070mm×1,620mm
・車体重量:240kg
・積載重量:250kg
・最高速度:約50km/h
・航続距離:120km(Li SMOOTH)/100km(Li POWER)
・モーター:1,500W(Li SMOOTH)/2,000W(Li POWER)
・バッテリー:リチウムイオン
・充電:家庭用100V(6〜10時間、残量ゼロから)、200V(3〜6時間)、J1772規格の普通充電に対応
・装備:雨よけサイドカバー、専用充電器、バックモニター、シートベルト、リアボックス(48L)
・車体色:ホワイト、ブラック、ライトグレー、ディープレッド
・価格:840,000円(税込。ナンバー取得の諸経費と送料は別)
・保証:1年または5,000km
・販売:全国の正規取扱店
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