文: 石橋 寛/写真: RM Sotherbys
▶▶▶写真はこちら|1996年製・日産スカイライン「GT-R ニスモ400R」(画像12枚)
グランツーリスモでは幻のマシンとして

1996年にニスモが発売したGT-Rニスモ400Rは、当初100台を生産する予定がバブル崩壊によって44台で打ち止めとなったレアモデル。
JDM人気絶頂の今さらではありますが、海外でゴジラと呼ばれるGT-R系の中でも別格とされているモデルがあります。ゲーム「グランツーリスモ」の第1作で幻のマシンとして登場したスカイライン「GT-R ニスモ400R」は、もはや神の領域として我々日本人でもため息の出るレベル。歴代GT-Rの中でも人気が高く、批評家から高く評価されるコレクターズアイテムとして、海外オークションではおよそ1億6000万円で落札されています。わずか、44台しか作られなかった最強のゴジラを振り返ってみましょう。
1995と1996年、日産はニスモを擁してル・マン24時間レースにスカイラインGT-R(GT1クラス)で挑戦。この際、培われたテクノロジー、チューン手法を市販車へとフィードバックしたのがGT-R ニスモ400R。ご存じの通り、当時は自主規制によって280馬力の壁がありましたが、噂によるとニスモが国交省とネゴシエーションして公称400馬力の公認を取得。これがどれだけセンセーショナルなニュースだったか、若いファンには信じがたいことかもしれませんね。

海外オークション出品後、すぐさま約1億6000万円で落札されたダークグレーパールの個体は、走行距離7000km程度の極上コンディション。
当初、100台の限定生産が発表されていたものの、バブル崩壊のあおりを受けて、実際には44台がロールアウトしたにすぎないとされています。残ったパーツで仕立てたセミ・コンプリートも存在するようですが、確かな記録は残されていない模様。いずれにしろ、わずかな生産台数には違いなく、希少価値に拍車をかけていること間違いないでしょう。
GT-Rのさらに“R”バージョン
車名に使われたRの文字はまぎれもなくレーシングの頭文字であり、GT-RにRを重ねたニスモの心意気が伝わるもの。また、日産のエンジン製造を担う日産工機(REINIK)が手がけたル・マン参戦用直系の2.8L直列6気筒ツインターボエンジン搭載というのも、そこらのチューニングモデルとは一線を画しているのかと。レースで勝つための耐久性と信頼性が、ミリ単位の設計に注ぎ込まれており、あえてエンジン名を「RB-X GT2」と名付けられているのも大いに納得です。

初代R32から、このR33ベースでもGT-Rのエンジンはスカットルに食い込むかのようなフロント・ミッドシップがよくわかるカット。
チューンとカスタムを紹介していくと、上下巻の解説本ができるほど。かいつまんで紹介するとなると、特製ブロックとボアアップにはじまり、ピストン/コンロッド/クランクシャフトはまったくの別物。それぞれ、高強度や軽量化、あるいは超精密なバランス取りなど、手法や製造技術はレーシングエンジンのそれとなんら変わりありません。むしろ市販車に搭載するにあたっては、より慎重で高精度な作り方がなされたはずであり、その意味ではレース車両より貴重なエンジンといっても過言ではありません。

エンジンはニスモが日産工機とともに作り上げた2.8リッターのRB-X GT2。排気量だけでなく、ノーマルとはまったく別物に仕上がっています。

エンジンはニスモが日産工機とともに作り上げた2.8リッターのRB-X GT2。排気量だけでなく、ノーマルとはまったく別物に仕上がっています。
無論、シャシーや駆動系にも手が入っており、カーボン製プロペラシャフトや、50mm拡幅されたボディに即した強化サスペンションなど、ノーマル、あるいはV SPECとは比べ物にならないパフォーマンスを発揮してくれます。4WDを制御するATTESA E-TS Proこそ同じシステムを使いながら、エンジンパワーやカーボンシャフトによる駆動力の伝達効率が大いに異なるため、運動性能については歴然とした差が生まれているとのこと。クルマの限界を徹底的に引き上げるというチューニングは、やはりニスモのようなレーシングコンストラクターでなくては実現できないという証左ではないでしょうか。

カーボンパーツを多用しつつも、大径ホイールや強化された冷却系のために、車重はノーマルより10~20kg増えて1550kgと公称。

ボンネットフードやリヤウィングがカーボンに替わるのはまだしも、プロペラシャフトまでカーボン化されているのは驚きです。
当時1200万円が今1億円超え
当時、V SPECでも530万円ほどだったのに対し、GT-R ニスモ400Rは1200万円と倍以上の新車価格を誇りました。その後、バブル崩壊後の中古車価格は500~800万円と「マニア向けチューニングカー」みたいな扱いとなったものの、2010年代からは希少性に注目されたのか1000万円の大台を超える売り物が登場。

ノーマルの前後245/45R17に比べ、275/35R18とサイズアップされ、レイズの400R専用ホイールで、インセットを+30から+20と外へ張り出す設定。
そして、2020年代、いわゆるJDMブームが幕を開けると一気に高騰し、5000万円とか8000万円でもすぐさま売れてしまうことに。昨年のサザビーズ・オークションでは99万5000ドル(約1億6000万円)で落札されたほか、イギリス経由でアメリカにわたった27年間、ワンオーナーだったソニックシルバーの個体(走行距離9.9万km)が、85万7500ドル(約1億4000万円)で売れるなど、もはや億超えが当たり前となっているのです。

もちろん、海外の日本車フィーバーが価値を正当化するわけではありませんが、レースカー基準でチューンナップされたGT-Rの存在意義は何物にも代えがたいことがよくわかります。世界中でわずか44人しか味わえない至宝のマシンゆえに、未来永劫その輝きを失うことはないのです。



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