ゆったりと流しているだけでも、気持ちがいい
2015年5月21日から発売が開始されたマツダの新型ロードスター。そのデビューから4カ月ほどが経って、スパイスの効いたモデルが2つ発表された。9月24日にサーキット走行を前提に公道走行も可能なモータースポーツベースモデル「NR-A」を発表(発売は10月15日から)、そして10月1日に今回試乗した「RS」がデビューして、発売も始まった。
マツダがこのRSに課した役割は、「自らの世界に没頭できる走りの質感をより高めた熟成モデル」というもの。その狙いは「より深くよりダイレクトに車との対話を楽しみたいカスタマーへ」、「さらなる質の高い味わいを期する上級仕様」を提供することだという。
RSには、専用装備としてビルシュタイン製ダンパー/フロントサスタワーバー/大径ブレーキ/レカロシート/ ISE(インダクションサウンドエンハンサー)が新たに採用された。Sスペシャルパッケージの6速MT車などと同じトルクセンシング式スーパーLSD(リミテッドスリップデファレンシャル)も装着。車両本体価格はSスペシャルパッケージ(6速MT)から49万6800円アップの319万6800円。安全装備の充実も含めてシリーズ最上級モデルとして位置づけられるが、その性格から6速MT仕様のみで用意される。
ビルシュタイン製ダンパーはNR-Aにも採用されるがそちらはサーキットでのセッティングも考慮した車高調整機能付タイプ。RSに車高調整機能は装備されない。サスペンションの前後スプリングとスタビライザー、電動パワーステアリング制御は、Sスペシャルパッケージ(6速MT仕様)装着のものと同じだ。
シートバックの前面と座面中央はアルカンターラ、サイドサポート内側とヘッドレスト前面にナッパレザーが採用された上級感あるレカロシートに腰を下ろす。腰の左右がスッと収まり、お尻と太腿の裏あたりをしっかりと支えてくれる感じで、この着座感はいかにもレカロシートらしいものだ。クラッチペダルとシフトレバーの操作は剛性感があり気持ちいい。スカスカした頼りない感触ではなく、心地よい反力とともに軽く操作ができる。
走り出すと、小さくコツコツとした乗り心地が伝わってくる。タイヤやホイールは他グレードと共通だから、これは純粋にRS専用ビルシュタインダンパーによるものだろう。ただそれは不快に感じるようなものではなく、むしろ走ることの楽しさを予感させてくれるタイプのものだ。1.5Lエンジンは控え目ながら、心に伝わる快音を発して回っていく。
ワインディング路での走行では、ボディノーズの動きが標準モデルよりもしっかりと抑え込まれている印象で一体感が強い。ハンドルの切り始め部分、センターからごくわずかの操舵部分での反応が薄く感じたこと、大径ローター採用で強化されたブレーキが、ごく軽くペダルを踏んだ際の空走感と、そのまま踏み増した際に制動力が強く立ち上がるという、わずかな段付きがあるように感じられたが、それらはごく微細な不満に過ぎない。
走りの感触だけでなく、その装備される専用部品がもたらしてくる満足感も、クルマにとっては大事な魅力。スーッと流して走るだけでも気持ちいいRS、注目したいモデルだ。(文:香高和仁/写真:玉井充)
●主要諸元〈ロードスター RS〉
全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1020kg
エンジン=直4DOHC 1496cc
最高出力=96kW(131ps)/7000rpm
最大トルク=150Nm(15.3kgm)/4800rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=FR
JC08モード燃費=17.2km/L
タイヤサイズ=195/50R16
車両価格=3,196,800円
※取材車両のボディカラーはクリスタルホワイトパールマイカ(オプション/32,400円)。タイヤは、ヨコハマタイヤ製アドバンスポーツV105、195/50R16サイズを装着。