気立ても見切りも良し
日本では、2015年の東京モーターショー会場でそのキュートな姿をお披露目して大いに話題を呼んだ新型トゥインゴ。ただし日本上陸までにはやや時間がかかり、発表されたのは2016年の7月13日。そして発売は9月15日からとアナウンスされた。この発表時に、50台限定受注生産モデルとして自然吸気1Lエンジンと5速MTを組み合わせた“サンクS(169.0万円)”の導入もアナウンスされたが、こちらは受注開始直後に完売してしまったというから、その関心の高さには驚かされる。
新型トゥインゴについては、すでに前号の最新フランス車特集企画で詳細をレポートしているので、ここでは実際に東京の市街地を走らせてみた印象を中心に紹介してみたい。
今回、試乗車として用意されていたのはルーフの開閉が可能な“インテンス キャンバストップ”。ベースモデルの“インテンス”が車両価格189.0万円なのに対して、こちらは199.0万円というプライスタグを掲げるが、両モデルの相違はキャンバストップの有無のみで、他の装備などは共通だ。車重はインテンスの1010kgに対して20kg増の1030kgとなる。
新型トゥインゴのボディカラーにはソリッド3色、メタリック3色の6種類が用意されるが、選んだのは淡い水色のソリッドカラー“ブルードラジェ”のモデル。そのボディサイドには、前後ホイールアーチ部分で豊かなボリューム感を演出するデザインを描くショルダーラインが黒のピンストライプで入り、ドア下側の太幅のモールと相まって力強く引き締まった印象を与えてくれる。
インテリアのデザインは、軽やかで洒落たイメージながら、きちんと実用性も意識されているので、男性ドライバーの運転でも違和感などを覚えないで済むのが嬉しい。
走り始めて、すぐに驚かされた。なるほど、その乗り味が何ともしなやかで、とても気持ちいいからだ。聞けば日本仕様のトゥインゴは立体駐車場への入庫を考慮して、車両全高を確実に1550mm以下とするため、欧州仕様には設定がある“スポーツパッケージ”に含まれているスポーツサスペンション用のコイルスプリングが全車に標準装着されているという。
しかし、それによるデメリットはまったく意識させられなかった。ダンパーとのマッチングに不満を覚えることもなく、ミシュラン製タイヤ(エナジーセーバー)、そしてルノーならではの柔らかだがしっかりとした着座感を備えたシートの組み合わせで、とても心地よく走ることができる。ただそれだけに、本国のフルノーマル仕様トゥインゴがどれほど滑らかなのか、実際に体感してみたいと思ったのも事実だ。
最高出力66kW(90ps)/最大トルク135Nm(13.8kgm)を発揮する3気筒0.9Lターボエンジンと6速DCTの印象は、メリハリがあって好ましい。アクセルペダルを踏み込むと、MTモデル的なつながりでグッと動き出し、その後のシフトアップにも変速感がしっかりとある。絶対的な加速力はもちろんそれなりではあるが、街中を走行する限りでは十分だと思えた。メリハリのある運転操作で積極的に走らせても、しっかりと応えてくれる性格だ。ドライバーのアイポイントはルノーキャプチャーと同じぐらいとのことでやや高めだが、その分、視界が良く、視点の高さは気にならない。
首都高速道路を走ると、高架部分にある路盤の継ぎ目をスルリと越えていくマナーの良さに驚かされた。ジャンクションを抜ける際のコーナリング感覚が、たとえそれが下りながら曲がっていくような場面であっても、クルマの前後バランスが取れていて、滑らかな一連の動きとして感じ取れるので安心感が高い。直進安定性も、大きな不満は感じなかったが、ただ強い横風にはFF車よりも影響を受けやすい、とは思えた。
天候が良い時には、電動開閉式のキャンバストップを開けて爽やかな気分で楽しむことができるのは大きな魅力。また、後席シートバックを倒せば、大きめの荷物を積むことも十分に可能。ターボエンジンと6速DCTの組み合わせを重視した日本仕様の新型トゥインゴ。価格も含めて、とても魅力を感じるモデルだ。(文:香高和仁/写真:伊藤嘉啓)
●主要諸元〈トゥインゴ インテンス キャンバストップ〉
全長×全幅×全高=3620×1650×1545mm
ホイールベース=2490mm
車両重量=1030kg
エンジン=直3DOHCターボ 897cc
最高出力=66kW(90ps)/5500rpm
最大トルク=135Nm(13.8kgm)/2500rpm
トランスミッション=6速DCT
駆動方式=RR
JC08モード燃費=21.7km/L
タイヤサイズ=前165/65R15 後185/60R15
車両価格=1,990,000円