総合力の高さが魅力だ
新型インプレッサから「次世代のスバルが始まる」という。またこれは「スバル自体のフルモデルチェンジ」だともいう。以上のフレーズはインプレッサを担当する、阿部一博プロジェクトゼネラルマネージャー(PGM)によるものだ。
確かにこのインプレッサはスバルの命運を握る非常に大切なモデルである。なぜなら新開発された“スバルグローバルプラットフォーム”は次世代のスバル車に全面採用されるものであり、その出来具合は将来の業績に直結するからだ。ここ数年、富士重工は15%超える驚異的な営業利益率を叩き出しているが、これは為替レートから工場の稼働率、商品のモデルサイクル、PR戦略などすべてがうまくいった結果であるという。それを高い次元で維持するためには、新型インプレッサはどうしても成功させなければならないのだ。
開発にあたって阿部PGMがまず目指したのは「グローバルで受け入れられるCセグメント」であることだという。そもそもCセグメント車は日々の通勤や買い物、さらに休日のドライブなど、あらゆる時、あらゆる状況でマルチに使い尽くすことができるモデルでなくてはならない。それは結果的にグローバルで通用することにも繋がるわけだ。
そして3つのグローバル基準が設定された。まず「総合安全性能が高いこと」、次に「走りに安心と愉しさがあること」、そして「高い品質を持ちながらスターティングプライスが200万円を切ることである。具体的には国産車初の歩行者保護エアバッグとアイサイトが全車標準装備され、さらに新開発された2Lと1.6Lの直憤自然吸気エンジンが搭載されたことなどだ。
試乗したのはスポーツ2.0i-Sアイサイトだ。搭載エンジンは最高出力154psの2L水平対向4気筒DOHCでレギュラーガソリン仕様、最大トルクは196Nmと2Lの自然吸気エンジンとしては標準的なスペックだ。トランスミッションは全面的に改良されたというCVTのリニアトロニック。また、このグレードはアクティブトルクベクタリングが標準装着されている。
シートに座ってハンドルに手をかけて前を見ると、実に気持ちのいい視界が広がる。スタートすると、この前方視界の良さが運転のしやすさに繋がっていることがわかる。また、インパネまわりのデザインも、新時代のスバルを感じさせるもので清々しい。さらにキャビン全体の品質感も向上した印象を受けた。
しばらく60km/hほどで都市高速を走っていくと、ハンドルを握った感触がよく、また切り込んでいったときのしっかり感がいい。手応えがよくてリニアリティがある。そして、ボディの剛性感が高いのだが、ガチガチに硬いということではなく、あたりは結構ソフトなところもある。芯がしっかりとしている印象だ。静的なボディ剛性は70〜100%アップしたそうだが、その成果ははっきりと感じられた。新しいプラットフォームはいい仕上がりだ。
ワインディングロードにも行くことができたが、トルクベクタリングと低重心な新プラットフォームの効果もあるのだろう、すいすいと気持ちよく走れた。サスペンションも粘り強く、全体的にしなやかな感じだ。Cセグメントのスポーティなグレードとして、必要にして十分な運動性能を持っている。
新型インプレッサの魅力はいろいろな意味で総合力の高さではないかと思う。ひとつのグレードについてそのことを確認できたが、ラインナップ全体での総合力も見てみたい。今回はAWD(4WD)のみの試乗だったが、すべてのグレードにFFも設定されている。AWDより50kg軽いFFにもぜひ乗ってみたいし、また1.6Lモデルも試したい。まだまだこのクルマへの興味は尽きないのだ。(文:荒川雅之/写真:小平寛)
●主要諸元〈インプレッサ スポーツ 2.0i-S アイサイト4WD〉
全長×全幅×全高=4460×1775×1480mm
ホイールベース=2670mm
車両重量=1400kg
エンジン=水平対向4DOHC 1995cc
最高出力=113kW(154ps)/6000rpm
最大トルク=196Nm(20.0kgm)/4000rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=4WD
JC08モード燃費=15.8km/L
タイヤサイズ=225/40R18
車両価格=2,592,000円