「GT-R Track edition engineered by nismo(以下、GT-R Track ed.)」は、エンジンやトランスミッションなどはベースモデルと同じものを使いながら、ボディやシャシにGT-R NISMOのメカニズムの一部を融合している。つまり、ベースモデルとGT-R NISMOの中間的な存在と言えるだろう。
まずボディには、構造用接着剤で剛性を高める"ボンディングボディ"を採用。接合の自由度が高く、より高精度なボディチューンが実現できるこの工法は、ボディの製造工程から手を加えられるメーカー直系ワークスにしかできないものだ。
さらに20×10Jのワイドリムフロントホイール+サイズアップした専用の高剛性ハブボルト、前後高レート中空スタビライザー、専用フロントアッパーリンクを採用した専用サスペンションなど、極めてマニアックなスペックをおごっている。
一般道での走りは、さぞかし乗り心地が悪いのでは…、と構えていたが、想像していたほどではなかった。たしかに路面の凹凸が大きめのところでは、それなりの突き上げもあるが、その後しっかりと減衰してくれるので揺れが一発で収まってくれる。サスペンションを「コンフォートモード」で走る分には、同乗者から文句が出ることもないだろう。
パワートレーン系はベースモデルと同じで、その570psというパワーはもはや一般道では持てあますほど。ただ、このパワーを無駄に使うのではなく、効率的な加速に使うと、スムーズに変速してくれるトランスミッションとの相乗効果もあって、非常に気持ち良く走ることができる。
さて今回、モータージャーナリストの太田哲也氏が主催するタイムアタックイベント「スパタイGP」でGT-R Track ed.を走らせることができた。場所は千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイだ。
この競技はコースに1台ずつ入り、1周のみのタイムを計測するというもの。今回、練習走行ができずブレーキングポイントすらわからないままでの一発本番アタックとなってしまったために、無理をせずに走らせるという感じだったが、それでもこのクルマの片鱗を感じることができた。
GT-Rはこれまでにもサーキットを走った経験から、アンダーステアが強いイメージを持っていた。しかし、GT-R Track ed.はアクセルコントロールで向きを変えることを許容してくれて(VDCをOFFモードで走行)、それがとても扱いやすく怖さをともなわない。もちろん570psという有り余るパワーを持っているので無茶は禁物だが、それでもドライバーにしっかりとコントロールさせてくれる幅を持たせてくれている感じで、たった1周だけだったがとても楽しい経験をさせてもらった。
タイムは1分13秒355で、このクラスのクルマとしては平凡な記録に終わってしまったが、まあそれはドライバーがヘナチョコだっただけ(涙)。もしプロドライバーが乗ればあと3秒ぐらいは縮められそうな手応えがあった。
ちなみに今回乗ったGT-R Track ed.は、車両本体価格が1369万9800円(税込、以下同)だが、オプションでRECAROカーボンバックバケットシート(118万8000円)、アルティメイトメタルシルバー色(32万4000円)、ドライカーボン製リアスポイラー+ドライカーボン製トランクリッド(108万円)、GT-Rフロアカーペット(12万9600円)が付いて、総額1642万1400円だった。ここまでオプションを付けてしまうなら、いっそのことGT-R NISMO(1870万200円)の方がイイかも…、と思ってしまったのも事実。まあ、いずれにしても自分じゃ買えない夢の話ですがね。。。
(文:加藤英昭/写真:関根健司)