ヨーロッパでは、ヤリス(ヴィッツの欧州名)にハイブリッドモデルが存在したが、日本ではアクアとの競合をさけるために導入されていなかった。しかし、最近の環境車への関心の高まりで、ヴィッツにもハイブリッドモデルを設定して欲しいという要望がユーザーから多数寄せられていたという。そこで、今回のマイナーチェンジを機に、国内にもハイブリッドを投入されることになった。
ハイブリッドシステムについては、アクアに採用されている1.5L+モーターのTHSII を踏襲しているが、燃焼効率の向上とピストンまわりの低フリクション化に加えて、PCU(パワーコントロールユニット)は電流変換時の損失低減が行われるなどの改良が施されている。
ヴィッツハイブリッドのJC08モード燃費は34.4km/L。アクアの37.0km/Lに一見劣っているように見えるが、実はこの数値はアクアの中でも車両の軽いモデルの数値で、実際に8割以上販売されている量販モデルでは車両重量が1090kg以上となり、その場合は33.8km/Lになる。これ以外にもライバルに想定されるノートe-POWERも車両重量が重い量販グレードでは34.0km/L、フィットハイブリッドも33.6km/Lとなり、ヴィッツハイブリッドは1090〜1190kgの同じ重量区分の競合車の中ではトップの燃費性能を持つことになる。
今回のマイナーチェンジでは、そのほかにもより個性を際立たせたエクステリアデザインへと大幅な変更がされているのもポイント。とくにフロントまわりは大きなハの字型ロアグリルを持つバンパーをはじめ、ヘッドランプ、フォグランプカバーなどを変更し、ダイナミックさと低重心感を付与している。
走り始めの印象は、とにかく動き出しが軽やかで、アクセルの踏み加減に応じてリニアに反応してくれて、クルマ全体が軽い感じがする。システム最高出力は100psとアクアと変わらないものの、アクセルを全開時の加速は力強く、アクアよりも速く感じる。
また、乗り心地が格段と良くなった。凹凸のある路面でも足がしっかりと動いてトレースしてくれていて、これまでのようなドタバタとする感じが解消されている。コーナーではステアリングの操舵に対してフロントがとても素直に反応してくれて、とても軽快に走ってくれる。このあたりはボディ各部の高剛性化やショックアブソーバの改良などによる効果が現れているのだろう。
アクアからメカニズムがアップグレードされたヴィッツハイブリッドは、走ってみてしっかりとその進化が感じられてオススメできる。コンパクトハイブリッドカーの勢力図を変える存在になりそうだ。
(文:加藤英昭/写真:玉井充)
●主要諸元〈ヴィッツ ハイブリッドU〉
全長×全幅×全高=3945×1695×1500mm
ホイールベース=2510mm
車両重量=1110kg
エンジン=直4DOHC 1496cc
最高出力=54kW(74ps)/4800rpm
最大トルク=111Nm(11.3kgm)/3600-4400rpm
モーター最高出力=45kW(61ps)
モーター最大トルク=169Nm(17.2kgm)
システム最高出力=73kW(100ps)
駆動方式=FF
JC08モード燃費=34.4km/L
タイヤサイズ185/60R15
車両価格=2,087,640円
※装着オプション含む総額は2,727,000円。