これがオリジナルかと思わせるほど美しいクーペスタイル
今回の試乗車VSは、ロードスターRFの中間グレードだが、売れ筋グレードでもある。
RSと比べると、ビルシュタイン製ダンパー、ブレンボ製ブレーキ、BBS製ホイール、レカロ製シートなどが装着されてはいないが、タイヤサイズも同じだし、外観上は大きな違いはない。
さて、RFのイチバンのウリは、なんといっても美しいスタイリングだ。
外寸はソフトトップと変わらないのだが、ファストバック風のクーペスタイルは少し大きく、また上質に見える。デザインにまったく破綻はなく、RFがオリジナルで、そこからオープンを作ったんじゃないの?と思えてしまうくらいだ。
夏は暑い、冬は寒い、春は花粉が…という日本(とくに都会)では、オープンエア・モータリングを楽しめる時期は意外と少ない。
となると「デフォルトはクローズドで、ちょっと陽気がいいのでオープンに」という使い方なら、RFは最高の1台だ。トップの開閉はワンタッチ。オープン時でもタルガトップ風だが開放感に不満はない。
VSなら、ATを選ぶのも悪くない。
ハードトップ化に伴い車重は約90kg増えているが、2Lエンジンの搭載でパワー/トルクは27ps/50Nmアップしているからパワー不足を感じることはない。しかも低速トルクが増しているので、ゴーストップの多い市街地などでは走りやすい。
シフトタッチの小気味良い6速MTを駆使して走ると、ワインディングはもちろん街中でもハイウエイでも楽しい。
前述のようにVSのダンパーはビルシュタインではないからRSより乗り味は少しマイルド。むしろ普段使いなら、これくらいのほうが疲れにくくて適切だ。
しかもその乗り味が、オープンでもクローズドでも大きく変わらないのがいい。
エンジンは低速からトルクフルだし、街乗り中心ならATのチョイスも悪くない。
オマケに燃費もいい。今回の試乗では約800km(高速が半分、市街地と郊外路が半分くらい)で、撮影なども含めたトータル燃費は15.4km/Lも走ってくれた。
アイドリングストップ機能を備えているから市街地走行だけでも10km/Lを切ることはなく、高速走行だけなら17〜18km/Lは走る。6速100km/hのエンジン回転数は約2500rpm。最近のクルマとしては少しローギアードだが、スポーツカーとして考えれば妥当な線か。
ゴルフバッグとか大きな荷物は積めない、取り外し式のドリンクホルダーが使いにくい、アイドリングストップからエンジンが始動するときのショックが大きい…など、いくつか気になる弱点はある。
でも、ロードスターRFはスポーツカー。走りを楽しむために生まれたクルマなんだから、実用性を求めたり、これ1台ですべてをまかなおうなんて考えちゃいけない。
このスタイルが気に入って、たまにはその気になって走ってみたいけど、ふだんはパートナーを隣に乗せてクローズドで気楽に走りたい(髪の毛が乱れる!とか言われるし…)。陽気が良かったら屋根を開けて光と風を楽しむ…というなら、ロードスターRFのVSは格好のアイテムだろう。
(文:篠原政明/写真:小平 寛/モデル:水村リア)
マツダ・ロードスターRF VS 主要諸元
全長×全幅×全高:3915×1735×1245mm
ホイールベース:2310mm
重量:1100kg
エンジン:直4DOHC・1997cc
最高出力:116kW<158ps>/6000rpm
最大トルク:200Nm<20.4kgm>/4600rpm
ミッション:6速MT
JC08モード燃費:15.6km/L
タイヤサイズ:205/45R17
価格:357万4800円