ボルボV90クロスカントリーの後編はいよいよその走りの真髄に迫る。石川芳雄氏はT5 AWD サマムに試乗してどう感じたのか。

V90クロスカントリーのAWDは想像以上の高い走破性をみせた

今回試乗が叶ったV90クロスカントリーは、T5 AWD サマム。T5にはこれまでにXC90で試乗しているが、重量の嵩むボディでも快活な走りが得られていたから心配はしていなかったが、果たしてV90クロスカントリーT5 AWD サマムもまた、極めて軽やかな走りを味わわせてくれた。低回転域をスーパーチャージャーで過給するT6に比べるとスタート直後のモリモリとした力強さこそ一歩譲るものの、3000rpm辺りでは十分な力強さが感じられ、その勢いのまま6500rpmトップエンドまで素直に吹け上がる。


ここのところボルボというとディーゼルのD4エンジンを味わうことが多かったが、あの潤沢なトルクにも匹敵するくらい、T5の滑らかで伸びの良い回転フィールは魅力的に感じた。将来的には90シリーズでもディーゼルの組み合わせが選べるようになるはずだが、やはりガソリンにはガソリンの魅力がある。

今回はオンロードのみの試乗で雪道やオフロードには遭遇しなかったが、205mmの最低地上高と電子制御式AWDの組み合わせが、想像以上の走破性を見せることは、過去に乗っていたXC70で体験済みだ。スタッドレスタイヤを履いてさえいれば、日本の豪雪地帯にも躊躇なく踏み込める万能感は、このV90クロスカントリーにもしっかりと備わっているのである。

画像: 縦型のスリムなテールライトはボルボのワゴンモデルの伝統的なアイコンである。スキッドプレートが天候や場所を選ばない本物のオールローダーであることを強調する。

縦型のスリムなテールライトはボルボのワゴンモデルの伝統的なアイコンである。スキッドプレートが天候や場所を選ばない本物のオールローダーであることを強調する。

車高が55mm上がっていることに関する走行への影響もほとんど感じない。むしろアイポイントが上がって見晴らしが少し良くなった魅力の方が大きい。旋回時のロールはV90よりも少し大きめに感じられたが、それは重心が上がっている故だろう。相変わらず上質なフィールのハンドルを切り込むと、ノーズがスッと切れ込み、後輪が素直に追従する。この操舵に極めて忠実でナチュラルな反応こそが、90シリーズに共通する魅力だ。 室内の居住性や荷物の積載性はV90にほぼ準じている。XC70と比べると容積そのものは少し減っているが、それでも積載能力は十分高いと思うし、リアシートの折り畳み機構やパワーゲートの採用など、使いやすさを追求しているのは魅力的。このあたりはさすがボルボである。

画像: デジタル液晶ドライバーディスプレイは12.3インチもあり、4モードから好みの表示モードを選ぶことができる。センターディスプレイは9インチ。これと認識率のいいボイスコントロールシステムを組み合わせたSENSUS(センサス)の採用でこの空間が作られている。

デジタル液晶ドライバーディスプレイは12.3インチもあり、4モードから好みの表示モードを選ぶことができる。センターディスプレイは9インチ。これと認識率のいいボイスコントロールシステムを組み合わせたSENSUS(センサス)の採用でこの空間が作られている。

インテリアの造形もセダンやワゴンとほぼ共通でスカンジナビアンデザインの真骨頂と言えるクオリティである。ボルボらしい癒しの空間、居心地のいいキャビンは、V90クロスカントリーでも実現されている。試乗車はブロンドと呼ばれる白に近いベージュ色のシートだったが、これとインパネやコンソールに使われるチャコールのパネルとの対比がシックで良い雰囲気でとても好印象だった。

画像: 重大な事故の時でも衝突エネルギーを吸収することのできる新機構を備えた衝撃吸収機構付きフロントシートを採用する。


重大な事故の時でも衝突エネルギーを吸収することのできる新機構を備えた衝撃吸収機構付きフロントシートを採用する。

画像: パーフォレーテッド ファインナッパレザーはサマムの標準装備。写真はシートカラーのブロンドにチャコールのインテリア。

パーフォレーテッド ファインナッパレザーはサマムの標準装備。写真はシートカラーのブロンドにチャコールのインテリア。

なお今回試乗したV90クロスカントリーのサマムと、ベースモデルのモメンタムとの主な違いはエクステリアでは、アルミホイールのデザインとサイズ、そして装備上の違いは車間警告機能とヘッドアップディスプレイの有無、本革シートの材質と細部調整機構の違いくらいである。つまり基本的な装備はモメンタムでも十分に充実しているわけだ。その価格が694万円。一方、ワゴンのV90のT5モメンタムはFFで価格は 664万円となる。独特な雰囲気とAWDの信頼感が手に入るV90クロスカントリーは価格的なバリューも高いと言っていいだろう。
(文:石川芳雄/写真:永元秀和)

画像: ボルボらしく使いやすさを追求したラゲッジルーム。40:60の分割可倒式リアシートバックを採用する。

ボルボらしく使いやすさを追求したラゲッジルーム。40:60の分割可倒式リアシートバックを採用する。

主要諸元 <V90クロスカントリー T5 AWD サマム> 全長×全幅×全高=4940×1905×1545mm ホイールベース=2940mm 車両重量=1850kg エンジン=直4DOHC直噴ターボ 1968cc 最高出力=187kW(254ps)/5500rpm 最大トルク=350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm トランスミッション=8速AT(ギアトロニック) 駆動方式=4WD JC08モード燃費=12.9km/L タイヤサイズ=235/50R19 車両価格=7,540,000円

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