1980年代のホンダF1を覚えている人も多いだろう。ケケ・ロズベルグ、アイルトン・セナ、アラン・プロスト、ネルソン・ピケ、中嶋悟・・・いまも記憶に残るドライバーが次々と優勝を重ねていった。そんな時代を知る人から見れば、いまのホンダF1は不甲斐なく感じてしまうだろう。なぜ、ホンダはF1で勝てないのか。世界のレースに詳しい安井 信氏に聞いた。
6年間ものブランクが大きい
ホンダはF1でなぜ勝てないのか。昔はあんなに強かったのに。そう思う人も多いはずです。ひとつ明確な要因としては、ブランクをつくり過ぎてしまいました。2008年の第三期活動撤退以降、201515年の復帰まで6年間もの空白期間がありました。
1959年のF1世界選手権創設以来参戦を続けるフェラーリは言わずもがな、メルセデスは1994年以降、ルノーは2001年の復帰から、エンジン供給が1年とも途絶えたことはありません。
つまり、常に最前線のフィールドに立ち続けているわけです。その間に積み上げたノウハウの蓄積が、他社にはあります。もちろん休んでいる間のホンダも社内研究等はやっていたのでしょうが、実戦を超える技術鍛練の場は残念ながらありません。
エンジン開発に厳しく制限がかかったり、14年からはいまのパワーユニット規定が導入されたりと、取り巻く環境面にもいろいろと変化はありました。
その都度、3社は一歩でもライバルを出し抜こうと、激しい競争を繰り広げてきた。進化の幅は今年で復帰3年目のホンダを、なおも苦しめます。かつて強かったあのころとは、もう時代の転換の速さが異なるのです。
外部エンジニアの招聘に積極的でない
加えてホンダには、社風として外部エンジニアの招聘に消極姿勢というのもあります。
実は、この外部招聘というのは、短期間で力を上げるには一番の特効薬。たとえばパワーユニット規定初年度に散々だったフェラーリはトップのメルセデスから複数エンジニアを引き抜いて、2年目以降の飛躍的な戦力向上につなげました。これに限らず、ヨーロッパに拠点を置くホンダ以外の3社には、技術者の行き来がめずらしくない。
ホンダはそこに、積極的に関わろうとはしません。自分たちで情報収集に努め、ライバルが持つ先行技術を今年のパワーユニット開発に入れてもみたようですが、経験値の不足で結果が出ない。まだまだ時間はかかりそうです。