テクノロジーで世界をリードするアウディのフラッグシップ
ニューモデルがデビューするたびに今まで見たことのないハイテクが次々と登場するのがプレミアムモデルの常とはいえ、フルモデルチェンジしたA8ほど多くの新機軸を盛り込んだ新型車もそうそうない。
とりわけ注目されるのが、進歩的なシャシテクノロジーの数々だ。アウディAIアクティブサスペンションと名付けられた新機構は、既存のエアサスペンションと電子制御可変ダンパーに電動アクチュエーターを組み合わせたもの。
アクチュエーターの反応は毎秒3〜4回
このアクチュエーターは電気モーター、ベルトとレバーを組み合わせた減速機構、モーター部分とホイール部分を結ぶチタン製ロールバーなどで構成されており、各輪を独立して上下できる。
これがどのように作動するかといえば、前方を監視するカメラで路面にバンプが認められると、アクチュエーターを用いてフロントの車高を上昇。あらかじめ大きなサスペンションストロークを確保することで、バンプをしなやかに吸収するという。
アクチュエーターの反応速度は毎秒3〜4回で、エアサスペンションで車高を調整するよりはるかに速い。これを利用して、これまではフィードバック系だったサスペンションコントロールをフィードフォワードに変え、より快適な乗り心地を実現しようとするものだ。
48ボルト電源システムが可能にした
同じようなシステムにメルセデスのマジックボディコントロールがあるが、あちらは車高調整を油圧ユニットで行う点がアウディA8とは異なっている。また、コーナリング時のロールやノーズダイブ/スクワッドが起きそうになると、各輪のアクチュエーターを制御して姿勢変化を抑えるほか、側面衝突が避けられなくなった場合には瞬時に車高を80mm上昇させ、ボディのより強度の高い部分で衝撃を受け止める機能も
備えている。
このアクチュエーターは最大で1100Nmものトルクを発生できるが、それを可能にしているのが新型A8に搭載された48ボルト電源である。
実は、アンチロールバーのみ電動アクチュエーターで制御するベントレー ベンテイガやアウディQ7も48ボルト電源を採用しているが、両モデルの発電機は12ボルトで、これをDC-DCコンバーターで昇圧して48ボルトを得ている。いっぽうのA8は発電を行うオルタネーターそのものが48ボルト仕様。この48ボルト電源を活用してA8ではマイルドハイブリッドを実現しているが、回生できるエネルギーの最大値は12ボルト電源では5kWに留まるのに、48ボルト電源では12kWまで回生できるという。
しかも、A8はただ駆動系からエネルギー回生を行うだけでなく、前述したアクティブサスペンションからもエネルギーを回生し、クルマの効率化を図っている。
同じくシャシ関連では4WSも装備。低速側では逆相に最大5度、高速側では同相に最大2度操舵することで、最小回転半径の縮小と高速スタビリティの改善に役立てている。(その5に続く)