速いだけじゃダメ! 燃費とのバランスが重要
一昨年からマシンをND型ロードスターにスイッチした「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」。マツダ関係者をはじめ、協力スポンサーのみなさまには改めてこの場を借りてお礼を申し上げます。毎年、楽しいレースに参加させていただき、本当にありがとうございます!
さて、このレースの難しいところでもあり面白いところは、単に速く走ればいいというわけじゃはないということ。4時間で使えるガソリンは昨年から10L減らされてわずか60L。頭を使わず気持ち良く飛ばしてしまうと、最後に“ガス欠”が待っているのだ。
過去、何度も優勝争いに絡みながらも、最後の最後でガス欠になってしまった我がホリデーオート(HA)号。一昨年も終盤2位を走行するも、最後で優勝を狙ってペースアップを図り、残り1分でガス欠をしてしまったというニガイ思い出が頭をよぎる。
昨年はなんとか6位完走を果たしたものの、ドライバーもサポーターも「今年こそは優勝!」の思いが強く、気合いを入れて本番に臨むこととなった。
とはいうものの、先ほど書いたとおり、必要なのは「気合い」ではなく、「速さと燃費をバランスさせた走り」だ。今年は昨年よりも我慢の走りが要求され、「気合い」よりも「忍耐」が必要なレースなのだ。
ドライバーの布陣は一番豪華!?
今年のHA号のドライバーは豪華! 本誌カトーとこれまで長年にわたって本誌チームで乗っていただいている日下部保雄さん、瀬在仁志さんに加え、昨年からステアリングを握る太田哲也さん、そして今年初めて我がチームで乗ることになった現役レーシングドライバーの木下隆之さんが加入。4人ともレーシングドライバーとして長い経験を持っており、他チームからもうらやまれるドライバー布陣となった。
予選は木下さんが担当。3位かと思いきや…
まずは予選。予選だけはガソリンを気にせず、フルアタックして速いもの順となるので、各チームともエースドライバーを揃えてくる。
HA号も現役レーシングドライバーの木下さんにステアリングを託すことになった。
朝方まで雨が降っていたが、午前中には雨も上がり、予選の路面コンディションはドライとなった。そして木下さんがアタック2周目で刻んだタイムは1分10秒851。モニターには3番手と表示され、ピットは一気に沸き立つ。
しかし、予選終了後に事件が起こる。
「ホリデーオートレーシングチームの監督は、コントロールタワー3階にお越し下さい」
レースに詳しい人ならもうおわかりのことと思うが、この「タワー3階」に呼び出されるときは、なにか走行中に良くないことをしてしまったという場合がほとんど。
案の定、競技長からは「アタック中に最終コーナーで、コースの外側に4輪ともハミ出していますので、ベストタイムを削除し、セカンドタイムを採用します」とのお告げが…。
それでもセカンドタイムは1分11秒127を出しており、26台出走中の5番手を確保することができた。
レース規則
競技車両は完全ワンメイクで一切の改造は禁止(アライメント調整も不可)。ドライバーは4〜5名で、プロドライバーの助っ人は基本的に1名までOK。レース時間は4時間(16時スタート→20時ゴール)で、1人の連続運転時間は50分(助っ人ドライバーは40分)まで、1人で2回乗ることも可能だが、合計運転時間は96分までとする。使える総ガソリン量は60L(レース中の給油は20Lを1回)。給油中は3分停車、ドライバー交代は1分停車すること。
決勝スタート! 序盤は3番手から順調な滑り出し
まずは第1ドライバーは本誌カトー。16時に全26台のローリングスタートが切られた。
5番手からのスタートだったが、1コーナーでは2台をパスし、3番手に浮上する。ここだけは一瞬だけエンジンを回してガソリンを使ったが、最初はある程度のポジションを確保してトップに食らいついていく作戦を立てていたので、上々の滑り出しと言える。
そしてカトーは、ピットクルーとケータイで連絡を取りながら、どのペースで走るのがベストなのかを入念に探りながら走る。とくに事前にテストをしていたわけじゃないので、いったいどういう走り方をすれば速さと燃費がバランスした走りになるかわからなかったからだ。具体的なシフトアップの回転数やギアについてはここでは伏せておくが、各チーム走り方の作戦が違うようで、ペースが序盤から違っているのはなかなか興味深い。
ちなみに昨年までで言うと、優勝チームは平均燃費が5.2km/L程度で走っていたが、今年は6km/L台の中盤で走らないと、トップ争いはできなさそう。しかもその時のペースは予選からは6秒前後も遅い1分16秒前後ということで、やはり予想通りの我慢の走りが強いられることになった。
ところで、このロードスター4耐の特徴として、「ハンディキャップ」の制度がある。それは前年の好成績チームや、ドライバーにレース実績がある人たちが揃っていると、第1ドライバーの時にピットストップを与えるというモノ。
我がチームも当然、ドライバーの豪華布陣から今年は60秒のピットストップハンディキャップが与えられた。ただ、昨年の優勝チームであるホットバージョン号は240秒、そして過去に何度も優勝をしているJ-WAVE号は180秒、ティーポ号は120秒とさらに重いハンデを背負わされている。
HA号はその1分のハンデを消化し、すぐに第2ドライバーの日下部さんにバトンを渡す。
日下部さんは、カトーから伝えられたシフト回転数とギアを忠実に守りながらも、想定した通りの燃費とタイムをきっちりと刻みながら、「これぞ名人芸!」と言わんばかりの周回を続ける。
次に第3走者の太田さんへとつないでいく。この頃には、太陽が落ちてサーキットは暗くなってきており、「ライト・オン」のサインボードが出される。
太田さんの走行時は、順位をある程度上げに行きたいという作戦を採り、少しペースアップを図る。しかし、当然ペースを上げてもらうものの、ガソリンをたくさん使っていいというわけではなく、基本のエコランは変わらない。ほんの少し、回転数で言うと200〜300回転上げて、タイムを少しでも削ってもらおうというのだ。それに太田さんもしっかりと呼応。順位をどんどんと上げてきて、太田さんに替わったときの順位は12位だったが、一気にジャンプアップして、次の瀬在さんに替わるときには2位に上り詰めていた。
そして第3ドライバーの瀬在さんからは、再び我慢のレースが始まる。
というのも、太田さん時にペースアップしたことで、燃費がほぼ想定ギリギリのラインまで落ちてきたのだ。瀬在さんには、「タイムを削らないように、エコランをしてください!」というなんとも無茶なお願いをすることとなる。しかし、瀬在さんはこれに見事に応える走りを披露。燃費を下げることなく、アンカーの木下さんにつないでくれた。
そして最後の第5ドライバー、木下隆之さんが夜のサーキットへと飛び出していく。
ただし、ペースアップしてもらえるほど、ガソリンの余裕はなく、木下さんにもガマンの走りをお願いすることになってしまった。
「●号車は抜かれてもいいの?」
さすがは現役レーシングドライバー。エコランをしながらも、きっちりと抑えるところは抑えなけばならないことがわかっていて、前後のペースを気にしながらゴールを目指す。
レース残り5分の段階では7位を走行。入賞は6位までなので、7位というのはなんとも歯がゆい。イチかバチかのペースアップをしたいところだが、ガス欠の悲しさを知り尽くしている我がチームは、木下さんにペースキープの指示を出す。
するとこのタイミングで、ガス欠でコース上にストップする車両がちらほらと出始めた。そして残り1分。6位のチームが一気にペースダウンをしているではないか! 木下さんはそれを一気に抜き去り、モニターにはHA号が6位に上がったことが映し出される。
そして20:00過ぎ、トップで走っていたJ-WAVE号にチェッカーが振られる。木下さんも続いて6位でチェッカーを受けることになった。
戻ってきた木下さんを迎え入れ、健闘をたたえ合った。6位入賞、完走できたことは嬉しいのだが、やはりみんな優勝を目指していただけに、皆がどこかで納得できない表情を浮かべている。
「優勝チームとどこが違うんだろう…?」
それがチームのみんなが口にした言葉だった。
「このままじゃ終われない」
この思いを強く抱きながら、サーキットをあとにした。
サポーターのみなさまに感謝感謝!
レポートの最後に、この場をお借りして、レースの応援に来ていただいたサポーターのみなさまに感謝申し上げたい。
レースはやはりドライバーが主役となるが、その陰で支えてくれているサポーターがいるからこそ、安心してドライバーはレースに集中することができる。
今年も4時間ピットに張り付きでパソコンとモニターのにらめっこ、そしてドライバーに指示を出してくれたRyoちゃん(4号)にヨッシー(5号)、タイム計測を的確にこなしてくれた石ちゃん、青ちゃん、西ちゃん、ゆかりちゃん、そしてメカニックとして、給油とドライバーチェンジをサポートしてくれた中ちゃん(7号)と山ちゃん(9号)。
そしてなにより、ピット責任者として、ホリデーオート号とピンクパンサー号の2台をきっちり面倒見ていたいただいたリアルテックのハマちゃん(1号)&ゆかりちゃん(3号)、いつも助かります。ありがとう! ちなみにリアルテックはロータリーの専門チューニングショップですが、ハマちゃんはレースメンテにもバッチリ対応してくれる頼もしい人です。
そして今年もたくさんのおいしい食事の段取りをしていただいた清水さん、みっちゃん(8号)、エミちゃん、みんなみんな本当にありがとうございました。あっ、マル(2号)もお疲れさんでした!