VWの魅力を注いだ新世代のサルーン!
ワイドに広がる光り輝くグリルと、低いボンネットライン。2本のアイラインからにらみを利かせる鋭い目つきに、ハイパフォーマンスカーに通じるインパクトを受けた。グリルにVWマークを見つけても、従来の質実剛健で地味なイメージからは遠く、どうしてもピンとこない。
VWのフラッグシップ「アルテオン」との初めての出会いは正に作り手側の思惑どおりだった。実車を前にすれば6ライトのシルエットとボディサイドを走る、エッジの効いたラインが前後に伸び、デザインに興味のない自分でさえ、改めて目が奪われた。例えていうなら、学生時代地味だった友人がキャリアを積み同窓会に颯爽と現れ、話題を独り占めするような、そんなサプライズデビューだ。
磨きこまれた基礎体力も自慢だ。ゴルフRと同じパワーユニットと第5世代に進化した4WDシステムという、VW最強のパフォーマンスパッケージングが与えられている。見た目で目を引き、スペックを見れば攻めたくなるような、ゴージャスな組み合わせである。
走り出すと、湿式7速DSGはパワーの段付き感が少なく滑らか。パワーフィーリング的にも下からしっかりと力が出ていると同時に、伸びがあって吹け上がりも軽い。シフトの頻度は多すぎず、広いパワーバンド特性を上手に引き出している。
4輪がボディの四隅で踏みとどまり、ボディが大きく揺れることが少なくハンドリングの安定感が高い。それでいながらグイグイとノーズが入っていく印象は、ゴルフなどと同様に素直で扱いやすい。カドがわずかに感じられる乗り味も良く似ているものの、音の進入や突き上げ感は少なく、フラットで無駄のない動きが特徴的だ。
日本では人気の薄い5ドアハッチバックながら走りはセダンと同等に高質で、室内の静粛性にも優れている。ボディは日本車ではまねのできない剛性感の高さを感じる。それでいながらゲートを開ければ広大なラゲッジスペースが現れ、使い勝手の良さはワゴンに近い。
VWを代表する高級車と言うばかりではなく、VWの魅力をすべて注ぎ込んだ新世代サルーンと言った感じ。だから、競合車との勝ち負けより、新規ユーザーを開拓する魅力的なモデルになりそうな予感。あとはもう少しインテリアに温かみを感じられるとうれしいのだが、これもキャリアを積んだ人の媚びない姿勢なのかもしれない。
(文:瀬在仁志 写真:玉井 充)
VW アルテオン R-ライン 4モーション アドバンス 主要諸元
全長×全幅×全高:4865×1875×1435mm
ホイールベース:2835mm
重量:1720kg
パワーユニット:直4DOHCターボ・1984cc
最高出力:206kW<280ps>/5600-6500rpm
最大トルク:350Nm<35.7kgm>/1700-5600rpm
ミッション:7速DCT
駆動方式:フルタイム4WD
JC08モード燃費:13.3km/L
タイヤ:245/35R20
価格:599万円(税込)