三菱の車名はカッコイイ。とくにディアマンテやディグニティなどは、子ども心に「強そう」でお気に入りだった。では、なぜカッコイイのか。大人になった今、その理由を追った。

文:蔭山洋平(Webモーターマガジン編集部)

「ミラージュディンゴ」には3つもあった

クルマの名前はおもしろい。ローマ字や数字を組み合わせただけの車名もあるが、神話や動物、言葉を組み合わせた造語などなど、由来や意味もさまざま。車名に込められた親心・・・もとい自動車メーカーが期待する性能や役割などが、実際にユーザーや市場から評価された特性と合致してきたのか、そんなことまで調べだすとキリがない。

そのなかでもギャランやシグマ、ディアマンテなど三菱の車名には子どもの頃から不思議と惹きつけられたものだ。その当時、魅力的に感じていた理由まで追求したことはなかったが、若干の中二病を患っていたのかもしれない、そんな気がする。が、あらためて車名たちを並べてみると、共通項が見えてくる。

「濁音の多さ」だ。そこで三菱の歴代、100を超える数の車種名を洗い出し、その全モデルの中から濁音がついているものを数えてみると、その割合は約7割にものぼった。1文字2文字ならモデル数も多いが、極めつけは3文字も入っているミラージュディンゴだ。「ミラージュ(蜃気楼)」という美しく神秘的な名称と、ふたつの濁音を含む「ディンゴ(オオカミに近い野犬)」・・・神聖なケモノという二律背反するような単語を組み合わされることで、どことなく強さを感じてしまうのだ(断じて中二病ではない)。

そう、濁音が車名の印象にかかわっているのではないか、と密かに気になっていた。

画像: 三菱シャリオの3代目として登場したシャリオグランディス。

三菱シャリオの3代目として登場したシャリオグランディス。

頭文字に濁音が配置されている例も多く、ギャランやデボネア、GTOなど16車種もあった。割合でいうと全車種名の約14%だ。この数値をほかのメーカーでも探ってみると、トヨタで約8%、日産で約8%、ホンダで約9%。三菱だけが突出して高いのだ。1990年代以降のランボルギーニにも三菱と同じような雰囲気を感じなくもない。

きっかけは、映画の解説をしていた音の専門家

さて、三菱の車名に惹かれたとある少年が20代に成長したある日、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の人気の秘密を探るというテレビ番組の特集を見ていた。謎や陰謀うず巻くその世界観や現実世界との対比などを解説する一方で、おもしろい仮説を紹介していたのだ。失礼ながらその方の名前までは覚えていないが、番組に登場した音の専門家による「濁音や破裂音には人の興味を惹きつける作用がある」というのコメントは今でもはっきりと記憶している。

何を言いたいかというと、その番組を見たとき「三菱は意図的に濁音を使っているのではないか」という仮説が脳内で成立していたということだ。何十年も前から音の性質を活かした命名を続けているなんて、やるなあ三菱!と確証もないことを勝手に考えていたものだ。

画像: 濁音とともに破裂音も配置されている三菱パジェロ。これは初代。

濁音とともに破裂音も配置されている三菱パジェロ。これは初代。

もちろん仮説のままでは記事にならないので、三菱自動車の広報担当者に直接問い合わせてみた。すると、「濁音については聞いたことないなあ」という正直拍子抜けする回答。長年かけて積み上がった期待がガラガラと崩れた気がした。消沈するボクをヨソに、担当者は続けて「ただ、ディアマンテやプラウディアの『ディア』はダイアモンドの意味で、三菱の『菱』なんです」という話をしてくれた。なるほど、確かにディアの付くモデルは8車種と多い。

社名の一部を使うのだから、その開発には並々ならぬ強い思いが込められていたことだろう。さらに、フラッグシップモデルに付けられることもあったので、三菱の期待値も計り知れない。

濁音の多さはインパクトを重視したからではなく、社名由来だったという結論だ。ただ残念なことに、ここで挙げた車種のすべてが絶版だ。人気モデルも多いのでカッコいい車名たちをぜひ復活させて欲しい、と願っている。

以下、追記
かつてクロカン市場を席巻したパジェロが、2026年秋に復活すると同年5月に公表された。

※2026年8月20日、記事の一部を加筆・修正。

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