ルノーのSUVカジャーは“長く付き合いたい”と、そう思わせてくれる
近年はブランニューSUVのデビューラッシュだ。本格的4WDで高い悪路走破性を謳うもの、第一印象のいい個性的デザインで攻めるもの、スポーツ走行を得意とするもの、広い室内空間と燃費など実用性を重視したものなどなど。乱立するSUVモデルのなかで、我が子をキャラ立てようと各メーカーが躍起になっているような印象を受ける。
そんな時勢においてルノー カジャーは、SUVとしての性能をニュートラルに高められた素直なSUVという印象を受けた。
ルノーのSUVといえば、マイナーチェンジしたばかりのキャプチャーがある。また、日本で2016年まで販売されていたコレオスの後継モデルが大型化して欧州に存在している。この2モデルの間を埋める形でデビューしたのがカジャーだ。その全長4455mm、全幅1835mmというボディサイズは日本の交通事情にもマッチしやすい。
その大きさから考えられる国産ライバル車は、ディーゼルをラインアップするマツダ CX-5や、約250万円からというバリュー感のある三菱 エクリプスクロスか。では、強豪ひしめくCセグメントSUVにおいて、カジャーの個性とはなにかと、そんなことを考えながら実車を目の前にする。
強いキャラクターラインを配置せず、曲面の組み合わせでフェンダーの盛り上がりやボディサイドのくびれを創り出すデザイン的手法は、兄弟のキャプチャーに共通する。優しく揺れる水面を見るような滑らかなラインは、大きなボディによってさらに強調されているようだ。強烈なエッジで存在感を高めるモデルが多い中、このデザインは大きな個性だろう。
そんな印象的なエクステリアとは打って変わって、市街地を出発して高速道路をとおり、軽いワインディングを抜けて目的地に到着するまで、個性的な走り味を感じたことは結局なかった。
ただ、これは決して悪い意味で言っているわけではない。1.2L 直4ターボエンジンは一般道であろうと高速道路だろうと過不足なく加速させてくれるし、足まわりはコーナーを優しく駆け抜けるしなやかさを持っている。しかも、運転席はもちろんのことリアシートに座っても乗り心地がいい。
そう、突出したパフォーマンスを持つのではなく、多くの道路状況をオールラウンドにこなす懐の深さがあるのだ。
エンジンに組み合わされる乾式クラッチの7速DCT(EDC)も、そんなキャラクターを強調する。DCTといえば、ドイツブランドのダイレクト感あるフィーリングを思い浮かべるが、カジャーの変速はまるでトルコン式ATのように滑らか。しかも、高速走行時にシフトダウンすれば、ブリッピング機能とともに素早く加速に移行するレスポンスの良さも持ち合わせている。
個性が薄いというようなことを書いたが、個性派ぞろいのSUVジャンルにおいて、このオールラウンドさはある意味強みかもしれない。
ルノー カジャー インテンス(Renault Kadjar Intens) 主要諸元
●サイズ=4455×1835×1610mm ●ホイールベース=2645mm ●車両重量=1410kg ●エンジン=直4DOHCターボ 1197cc ●最高出力=131ps/5500rpm ●最大トルク=205Nm/2000rpm ●駆動方式=FF ●車両価格=347万円