3列シートで、マルチに使えるマツダ CX-8
「CX-8」は、昨年の12月より発売が開始された新型SUVだ。
特徴は、3列シートを有していること。SUVというだけでなく、たくさんの人を運ぶMPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)という側面も備えているのだ。現実的には、廃版になったマツダのミニバン「MPV」の代わりとなる存在となるのが「CX-8」と言っていいだろう。
実際に「CX-8」の全長4900mm×全幅1840mmという寸法は、「MPV」とさほど変わりがない。ちなみに、海外向けモデルとしてマツダは「CX-9」という3列シートのSUVを持っているが、「CX-8」は「CX-9」よりもひと回り小さい。「CX-8」は、小さなクルマではないが、日本国内での使用を想定した寸法で作られているのだ。
そうした「CX-8」で2日間にわたって1000㎞以上を駆け抜けた。東北高速道を、仙台さえも超えて北上。撮影ポイントを探して緑深いワインディングも巡ったし、雑多な都市部の渋滞も通過。度重なる撮影機材の積み下ろしや狭いパーキングスペースへの出し入れなども経験している。日数は少ないがクルマにべったりな2日間を過ごしたと思う。そこで感じたこと。まずは結論から言おう。
「CX-8」は優秀なロングツアラーであった。
マツダ CX-8は大きなボディでも、コーナーで腰砕け感はない
何と言っても走りがいい。重厚だが、思いのままに動く。
ステアリングの手ごたえは重めだが、狙ったとおりに動き始めるし、止めることができる。もちろん巨体ゆえに、きついコーナーでは、慣性重量の重さを感じるが、腰砕けにはならない。直進中の安定感も抜群。無駄なピッチングは抑えられており、快適なフラットライド感を提供してくれたのだ。
重厚さはエンジンからも味わうことができる。2.2Lのディーゼルエンジンの加速は力強い。わずか2000rpmも回れば、最大トルクの450Nmも発生する。4人の乗員と荷物を満載していても、軽々と期待通りの加速を見せてくれる。
アクセル操作に対する出力の提供には適度なタメがあり、それが重厚感と感じることができた。また、ディーゼル特有の高周波の金属音は丁寧に抑えられている。耳を澄ませばディーゼルエンジンとようやく気が付くレベル。そもそも100㎞/h巡行でのエンジン回転数は2000rpmほどなので、ガソリンエンジンよりも静粛性は高い。
ただし最高出力は190psなので、高回転の伸びはそれほどではない。スポーツカーのように、アクセルをガンガンに踏み込んで加速を楽しむようなクルマではないのだ。
また運転支援装備の充実度も嬉しいポイント。自動ブレーキがあるだけでなく、ACC(全車速追従機能)は、しっかりと時速0㎞まで作動するから、渋滞走行時の安心感は絶大。これだけでロングドライブの疲労感は大きく軽減される。また、まっすぐ前を向いたドライビングポジションや、死角を減らした広い視界も運転の疲労を軽減してくれる。
マツダCX-8で1000kmの長距離ドライブも、疲れは驚くほど少ない
フラットで重厚な乗り味は、乗員の快適性にも貢献している。クルマがゆったりと動けば、乗員もグラグラとゆさぶられないからだ。
また、試乗車は2列目がキャプテンシートの6人乗り。キャプテンシートによる高いホールド性も快適性をさらに高めてくれる。2列目シートのスペースは前後だけでなく高さも十分。足も組めるし、変な圧迫感もない。黒一色の内装は、地味ではあるが、落ち着き感があった。
3列目は、さすがにもう少し狭いが、大人でも最低限度の空間は確保されている。ひとつ寂しかったのは、後席はおしなべてオーディオの音が聞こえにくく、またUSB電源もなかったことだ。
人や荷物を満載しても、ドライバーの思うように走る。しかも、その時の疲労感はドライバーも乗員も最低限度。実際に1000㎞を超えるロングドライブでも、驚くほど疲れは少なかった。これが、今回の旅で感じた「CX-8」の最大の魅力であった。
マツダCX-8 XD PROACTIVE
●サイズ=4900×1840×1730mm
●ホイールベース=2930mm
●乗車定員=6名
●車両重量=1780kg
●エンジン=直4DOHCディーゼルターボ 2188cc
●エンジン最高出力=190ps/4500rpm
●エンジン最大トルク=450Nm/2000rpm
●トランスミッション=6速AT
●382万3200円