数々の日産カスタマイズカーを手掛けるオーテックジャパンが、1996年に創立10周年を記念してワンオフで製作したのが「オーテックA-10(アニバーサリー・テン)」。厳密に言えば限定車ではないけれど、このレトロテイストがたまりません!(ホリデーオート 2018年5月号より抜粋)
FFベース4WDのラシーンを大改造〜FR化した10周年記念車
のっけから恐縮だが、このクルマは市販車されなかった。1996年にオーテックジャパンが創立10周年を記念して社内有志の手によって製作した「世界に一台のコンプリートカー」である。
ベースになったのは、ラシーン。B13系のFFサニーをベースに開発されたコンパクトなクロスオーバー・モデルで、こちらは1994年から2000年まで発売されていたのを覚えている方も多いはずだ。
このラシーンをベースに、当時シルビアなどに搭載されていた2LのSR20DE型エンジンをタテ置きに搭載してFR化。1960年代の510型ブルーバードやC10型スカイラインをモチーフとして、内外装が大改造されている。
ボディ外板はほとんどがオリジナルデザインのパネルに交換され、原型をとどめているのはリアドアのみ。新たに設けられたトランク部分も、当然ながら手加工で追加されている
クラシカルな雰囲気が濃厚に漂うが、それもそのはず。随所に本物の古いパーツを使っている。たとえば、三角窓は古いダットラ用、ミラーはクラシックMINIのもの、そしてフロントバンパーは当時すでに貴重品だったSR311型フェアレディのものを加工して装着した。インテリアにもこだわり。わざわざ古いベンツの機械式を探し出して埋め込んだり、ワンオフの本木目パネルを製作したり…。
圧巻は、やはり前述のとおり、SR20DEエンジンをタテ置きに搭載してしまったところだろう。S14シルビア用をチューニングして170psに、ミッション、フロントの足回りはS14シルビアのものを移植している。もともとFF横置きのラシーンに移植しただけに、エンジンベイはまるっきり作り替えられている。
発案から完成までわずか6カ月。のべ30人のスタッフが携わって作り上げた。かかった費用はおよそ2000万円だとか。いまや稀少なコンパクトFRセダン。20年以上を経た現在でも、動態保存されてオーテックのイベントに登場している。
<オーテックA-10(2011年修復車) 主要諸元>●ボディサイズ:全長4450×全幅1695×全高1430㎜ ●車両重量:1350kg ●乗車定員:5名 ●エンジン型式・形式:SR20DE改・直4DOHC ●エンジン総排気量:1998㏄ ●エンジン最高出力:180 ps/7200rpm ●エンジン最大トルク:20.0kgm/4400rpm ●駆動方式:FR ●サスペンション形式:前ストラット・後パラレルリンク ●ブレーキ形式:前後Vディスク ●タイヤサイズ:前・後195/65R14