キープコンセプトの勝利
ブレーキLSDが効く!
ジムニー/ジムニーシエラが20年ぶりのフルモデルチェンジを行った。ラダーフレームに前後リジッドサスペンション、エンジン縦置きの副変速機付きパートタイム4WDという、従来のユーザーを裏切らない姿で登場したことは喜ばしい。
加えて衝突安全性能や、スズキセーフティサポートの採用など、安全面でも現代のクルマとして通用するように改良してきた。これにより、さらに広いユーザーに愛される可能性も出てきたと言える。試乗記の前にまず改良点をざっと見ていこう。
エンジンはK6A型からR06A型となった。こちらはロングストロークでトルクが太い。K型に比べて4.8kg軽量なのもポイントだ。フレームは古典的なラダーを使うが構造を刷新した。Xメンバーの追加などで剛性が高められている。
サスペンションに関しては、大きな変更点はないが、これまで課題とされていた、荒れた路面からのキックバックと高速走行時のシミーを軽減するためにステアリングダンパーを新設しているのが大きなトピックだ。
もうひとつ、重要な点としてブレーキLSDトラクションコントロールが装着されたことが挙げられる。これについては試乗記の方で触れよう。
まず一般道での試乗から。ここでは2H(2WD)状態で走る。エンジンの吹け上がりも軽快で、60km/h程度の巡航速度では快適だ。静粛性もこのクラスとしては高い。サスペンションはリジッドだからロールしても対地キャンバーの変化はなく、普通のスピード域ではかえって安定したコーナリングができる。
待望のオフロードコースに入ってみよう。ここでは4L(4WDローレンジ)で臨んだ。クラッチをつないでアクセルを踏み込むと、あっという間にレブリミットに飛び込みそうになる程のギア比の低さとなる。モーグルコースを走って感じたのはキックバックの少なさ。ちょっと身構えてコースに入ったが、手が弾かれてステアリングを放してしまうということもない。ここはステアリングダンパーの効果が良く現れているところだ。
大きなコブに乗り上げ、1輪が浮きそうな状況になるとブレーキ回りから「ギッ、ギッ」と断続的な音がする。最初、サスペンションからの音かと思ったのだが、ブレーキLSDが効いている音だと教えられた。これでタイヤがスリップしても、スリップした側のタイヤに自動的にブレーキがかかり、接地しているタイヤに駆動力を伝える。滑りやすい路面では多大な効果を発揮するはずだ。
急な下り坂ではフットブレーキを酷使しないためにヒルディセントコントロールを使って下るし、上り坂で止まってしまったときは、マニュアルも坂道発進を助けるヒルホールドコントロール機能がつく。
当日は晴天に恵まれ完全ドライコンディションとなったが、かえって少しでもマッドな状態で走ってみた方が、その真価を体感できたのかもしれない。慣れないオフロード走行で内心不安だったのだが、「けっこういけるじゃん!」と思ってしまったのは、自分のテクニックが…ではなくて、新型ジムニーの性能が…ということらしい。
ジムニーシエラに関してはオンロードのみの試乗となった。新開発のK15B型1・5ℓエンジンはトルクフルで、ガンガン回して走るジムニーよりもジェントルな感じ。エンジンがジムニーよりも重い分、スプリングもハードにしてあるが、気になるレベルではなかった。
ジムニーXC主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1725mm ●ホイールベース:2250mm ●車両重量:1030kg ●エンジン種類:直3DOHCターボ ●型式・総排気量:R06A・658cc ●最高出力:47kW(64ps)/6000rpm ●最大トルク:96Nm(9.8kgm)/3500rpm ●WLTCモード燃費:16.2km/ℓ ●燃料・タンク容量:レギュラー・40ℓ ●トランスミッション・駆動方式:5速MT・パートタイム4WD●サスペンション(前・後):3リンクリジッド・3リンクリジッド ●ブレーキ(前・後)ディスク・ドラム ●タイヤサイズ:175/80R16 ●車両価格:174万4200円
ジムニーシエラJC主要諸元
●全長×全幅×全高:3550×1645×1730mm ●ホイールベース:2250mm ●車両重量:1090kg ●エンジン種類:直4DOHC ●型式・総排気量:K15B・1460cc ●最高出力:75kW(102ps)/6000rpm ●最大トルク:130Nm(13.3kgm)/4000rpm ●WLTCモード燃費:13.6km/ℓ ●燃料・タンク容量:レギュラー・40ℓ ●トランスミッション・駆動方式:4速AT・パートタイム4WD●サスペンション(前・後):3リンクリジッド・3リンクリジッド ●ブレーキ(前・後)ディスク・ドラム ●タイヤサイズ:195/80R15 ●車両価格:201万9600円
■文:飯嶋洋治 ■写真:原田淳