2019年末から量産開始
今回、フォルクスワーゲングループが世界初公開した“MEB(モジュラーエレクトリックドライブマトリックス)”は、ユーザーに手頃な価格で魅力的なEVを提供するという意味において非常に重要なものだ。
これまでフォルクスワーゲングループはいくつかのEVを発表してきたが、それらはプレミアムブランドに属するものであり、量販を狙うモデルではなかった。プレミアムなモデルであれば、EVであることでコストがかかり車両価格が多少上がったとしてもユーザーに受け入れられる可能性が高い。
しかし、本格的な量販を狙うモデルではそうはいかない。ユーザーはシビアに性能に見合った価格であるかを見てくるはずだ。フォルクスワーゲングループのEV戦略の鍵を握っているのが、今後1000万台の生産を目指す、この“MEB”なのだ。
“MEB”を使った世界初の量産車は「フォルクスワーゲンI.D.」で、2019年末から独ツヴィッカウ工場で始まる。ここはMEB専用工場でe-モビリティに関する合計60億ユーロの予算のうち12億ユーロが投資される。
そして、“ELECTRIC FOR ALL”キャンペーンを展開しつつ、2020年までに10万台のI.D.を含む約15万台のEVを販売する予定だ。さらに2022年末までにフォルクスワーゲングループの4つのブランドが、コンパクトカーからライフスタイルカーに至るまで、27の“MEB”モデルを投入するそうだ。
フォルクスワーゲンのe-モビリティ担当トーマス・ウルブリッヒ取締役は「私たちはEVを大衆のものにして、ひとりでも多くの人々にEVの楽しさを提供したいと思っています。MEBはフォルクスワーゲン史上最も重要なプロジェクトのひとつであり、ビートルからゴルフへの移行にも匹敵する技術的マイルストーンです」と語る。
これは決して大袈裟なことではなく、フォルクスワーゲングループの存亡をかけた一大プロジェクトと言っていいだろう。文字どおり社運を賭けたEV攻勢がいよいよ始まることになる。