FRのサニーにFFのチェリー
サニーが大森(日産自動車 広報部宣伝第四課の下部組織)やプライベートチューナーによって開発熟成が進められていた時期、追浜(日産の特殊車両部第一実験室)が手掛けたのはチェリーだった。
![画像: サニーとともにTSレースで活躍したチェリークーペXー1。 現在は座間ヘリテージコレクションに展示中。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/10/19/f806949ff48c3a8f748fe9cae918e478a02cd139_xlarge.jpg)
サニーとともにTSレースで活躍したチェリークーペXー1。 現在は座間ヘリテージコレクションに展示中。
サニーの下位を埋める1000ccクラスの新型車として開発され、当時としては異例のFF方式を採用。合理的な設計による新時代の小型車として日産の期待が高く、レースでの好成績が望まれた車両だった。
![画像: 1972年のレースドニッポンに参戦するチェリー。ドライバーは星野一義選手!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/10/19/0337998dd1ba36f280b602eb2aacaaaea5b35c36_xlarge.jpg)
1972年のレースドニッポンに参戦するチェリー。ドライバーは星野一義選手!
このため追浜が力を入れて開発に取り組み、1300cc以下のマイナーツーリングレースに参戦した。期せずしてサニーとの同門対決となったが、チェリーは日産ワークスのドライバーが担当し戦力の充実が図られていた。
![画像: 2代目チェリーF-IIクーペ GX-TをベースにしたTSマシン。これも座間ヘリテージコレクションに展示中。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/10/19/4480f1a0425408f9040b4a001b651be649a5dc41_xlarge.jpg)
2代目チェリーF-IIクーペ GX-TをベースにしたTSマシン。これも座間ヘリテージコレクションに展示中。
エンジンは基本的にサニーと同じA12型だったが、クロスフローヘッドのAY12型を開発。活動時期は1971年から1973年までで、2ドアセダンとクーペが使われた。
だがワークス活動の終了とともに、プロジェクトも中止となった。サーキットでのラップタイムはサニーとほぼ互角だったが、まだFFのノウハウが十分でなく、これがサニーとの戦力差となった。
![画像: デモ走行するチェリーF-IIクーペ。国内では実戦参加することはなかった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/10/19/b3387c8997c87a5fb99e251ff27d333bcc20e8b5_xlarge.jpg)
デモ走行するチェリーF-IIクーペ。国内では実戦参加することはなかった。
なお、ここで紹介している2代目をベースにしたTS仕様はデモモデルの製作のみで、国内で実戦には投入されなかった。だが、ニュージーランドでは実戦参加して優勝も飾っている。1.3LのA12型エンジンは145psと13.5kgmにまでパワーアップされていた。(文:大内明彦)