新しいエクステリアデザインと進化した装備類が魅力を倍増させた
ポルシェマカンは相変わらずよく売れている。それはなんとなく理解していても実際の販売台数を見ると驚くべき数字だ。2018年1〜9月のポルシェ全モデルの販売台数が19万6562台で、その内6万8959台がなんとマカンである。
これはポルシェ全体の約34.6%である。ちなみにカイエンは4万9715台で約25.3%である。つまりこの2モデルがポルシェの販売の半分以上を占めていることになる。改良するにも力が入るのは当然だろう。そんなマカンの新型は日本でも2018年12月19日に発表されているが、日本導入よりひと足早く試乗することが叶ったのでその印象を報告したい。
真横からでは新旧マカンを見分けることは難しい
マカンのデビューは2014年。そこからすぐにポルシェの販売の中心となるのだが、それには実力を伴わないとなかなか続くものではない。そうマカンはポルシェらしい実力も兼ね備えているSUVなのである。それでいて日本では699万円からあるのだから売れない理由がみつからない。
新しいPCMはこれだけで新型マカンを買う価値がある
まずエクステリアからどこが変わったのか紹介しよう。4696mm×1923mmという全長や全幅、2807mmというホイールベースなどのディメンジョンに変更はないが意匠は変更されている。それはフロントよりもリアが大きいかもしれない。ひと目で新型だと判別できるテールライト“LEDリアライトストリップ”になった。カイエンやパナメーラに通じる左右に繋がったテールライトユニットは、新しいポルシェ特有のデザインである。そういえば、新しいポルシェ911であるタイプ992もこうした新ポルシェ流テールライトが採用されている。
今回のマイナーチェンジで一番のトピックはインテリアの進化ぶりだ。中でもディスプレイは従来の7.2インチからタッチ式ディスプレイの10.9インチへ拡大されているPCM(ポルシェコミュニケーションマネージメント)の激変ぶりには注目である。
これはパナメーラやカイエンに搭載されたものと基本的に同じで、当然などに対応、さらに新世代のポルシェコネクトアプリによってスマートフォンとの連携の幅が拡がるなど強化、リアルタイムで渋滞情報が表示できるオンラインナビゲーションも装備されている。
ただカイエンなどと違うのは一部機能、たとえばドライビングモード選択スイッチなどはギアセレクターまわりに従来同様のスイッチで配置される。これらが変わるのは次世代に見送られたが、それでもこのPCMの採用は魅力を何倍にも引き上げている。これだけでも新しいマカンを買う価値があると言えるだろう。従来とはまったく別物だが、違和感は感じられない。
快適装備ではシートヒーターはもちろん、シートベンチレーション、ステアリングホイールヒーターも採用される。当然、USB端子も用意されるので不便さを感じることはないだろう。あとは音声コントロールの日本語への適応具合は気になるところだが、それは日本導入時に実際に使ってみてから報告したい。
マカンSには新開発されたV6ターボエンジンを搭載
マカンの搭載する2L直列4気筒ターボエンジンは基本的に従来からキャリオーバーだが、最高出力245ps、最大トルク370Nmと従来から最高出力が7psダウンしている。これはヨーロッパではガソリン粒子を除去するパティキュレートフィルター(OPF)の装着が義務付けられているためである。それにより排出基準ユーロ6d-TEMPをクリアしているのだ。ただ日本仕様はOPFを装着してないので従来同様に最高出力は252psのままである。
マカンSは、新開発された3LV型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力354ps、最大トルク480Nmを発生する。これは従来から最高出力は、最大トルクが20Nmアップしている。さらにこの最大トルクは1360rpmから発生するので扱いやすさはピカイチである。当然マカンとの出力&トルクの差は歴然だが、ではだからと言ってマカンが力不足なのかと言えばそうではない。
ちなみに新たに開発されたV6エンジンはアウディ製でグループのリソースを最大限に活かしたものである。パナメーラやカイエンでも採用され、そして今回新型マカンにも採用されたわけだ。
特徴としては、ターボチャージャーがV字ゾーンの内側に配置されていること。これはセンターターボレイアウトと呼ばれ、燃焼室とターボチャージャーとの間の排気流路が短いことでレスポンスが俊敏になるところにある。
さらにスポーツ性が向上、ブレーキ性能も強化された
最初に試乗したのはマカンである。路面からの入力がうまく吸収されていて乗員に優しく伝わり快適な乗り心地がすぐに感じられた。少し足まわりが“柔らかいかな”と感じたらスポーツモードがおすすめだ。市街地の一般道をこれで乗っていてもまったく不快にならなかった。これなら乗員からも不満は出ないだろう。ちなみに試乗車は前後異サイズの20インチと21インチタイヤを履いていたが、これもゴツゴツした印象を伝えることもなくうまく履きこなしているようだ。
マカンは、高速道路での追い越しや加速時に、もう少しパワーがあればと感じる場面もあった。それはマカンではまったく感じられなかったものだ。どんな状況でも自由にパワーを出し入れできるのである。さらにスポーツエキゾーズトスイッチを押せば、“快感”と表現できる気持ちいいエキゾースト音が耳に入ってくる。
ただマカンの“もう少しパワーが欲しい”というのは、マカンSと乗り比べた時の差であって、普段マカンに乗っていても力不足だと感じるシーンは少ないだろう。海外での試乗でそう感じるのだから平均スピードの遅い日本では余程、そう、サーキットにでも持ち込まないかぎり“遅い!”と感じることはないだろう。
ブレーキ性能にも感心した。さすがポルシェモデルである。従来から不満はないが、マカンSではさらにアップグレードされ、フロントブレーキディスクの直径は拡大され360mmに、ディスクの厚さは2mm増してになった。さらにオプションでカーボンセラミックのPCCBが選べる。
運転支援機能もアップデート魅力はさらに増している
運転支援機能が強化されているのも新型マカンのトピックスである。たとえばトラフィックジャムアシスト用アダプティブクルーズコントロールは、フロントのエアインテーク近くに配置されたレーダーセンサーを使い、前方車両や横の車線から入ってくるクルマまで認識し、必要であればブレーキをかけたり停止させたりすることができる。
さらにストップ&ゴー機能が拡充されステアリング支援機能も採用された。0〜65km/hの範囲でシステムが作動し車線がキープされる。これにより渋滞時の疲労は大幅に低減されるはずである。さらにサラウンドビュー機能は、4つの独立したカメラにより360度ビュー表示され駐車を安全に支援してくれる。
新型マカンの日本での価格はすでに発表されていて699万円、マカンSは未発表である。従来が841万円なので850万円前後だとしたらこの価格差は、購入時には、かなり悩むことだろう。なんとも絶妙な価格設定である。この成功が約束された新しいポルシェのSUVに、日本で試乗できる日が楽しみである。
■ポルシェマカン 主要諸元
●Engine:種類 直4DOHCターボ、総排気量 1984cc、最高出力 180(245)kW(ps)/5000-6750rpm 、最大トルク 370Nm/1600-4500rpm、燃料・タンク容量 プレミアム・65L、燃費 総合 12.3km/L 、CO2排出量 185g/km ●Dimension&Weight:全長×全幅×全高 4696×1923×1624mm、ホイールベース 2807mm、車両重量 1795kg、ラゲッジルーム容量 500/1500L ●Chassis:駆動方式 4WD、トランスミッション 7速DCT(PDK)、ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション形式 前5リンク/後ダブルウイッシュボーン、ブレーキ 前Vディスク/後Vディスク、タイヤサイズ 前 235/60R18 後 255/55R18 ●Performance:最高速 225km/h、0→100km/h加速 6.7〔6.5〕sec. ※EU準拠、〔〕はスポーツプラス装着車
■ポルシェマカンS 主要諸元
●Engine:種類 V6DOHCターボ、総排気量 2995cc、最高出力 260(354)kW(ps)/5400-6400rpm 、最大トルク 480Nm/1360-4800rpm、燃料・タンク容量 プレミアム・62L、燃費 総合 11.2-11.6km/L 、CO2排出量 204-196g/km ●Dimension&Weight:全長×全幅×全高 4696×1923×1624mm、ホイールベース 2807mm、車両重量 1865kg、ラゲッジルーム容量 500-1500L ●Chassis:駆動方式 4WD、トランスミッション 7速DCT(PDK)、ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション形式 前5リンク/後ダブルウイッシュボーン、ブレーキ 前Vディスク/後Vディスク、タイヤサイズ 前 235/60R18 後 255/55R18 ●Performance:最高速 254km/h、0→100km/h加速 -〔5.1〕sec. ※EU準拠、〔〕はスポーツプラス装着車