アウディスポーツ(Audi Sport)とはいったいどういうブランドなのか。RSモデルはどのようにして誕生したのか。アウディスポーツの魅力を明らかにする短期集中連載、第3回目をお届けする。

RSモデルと並ぶ、アウディスポーツのもうひとつの象徴

2003年のフランクフルトモーターショーに1台のコンセプトカーが登場して大きな話題を呼んだ。それが「ル・マン クワトロ 」だった。2006年にワールドプレミアされる「R8」の原型となるモデルだ。

アウディの量産車をベースとしたハイパフォーマンスモデル(RSモデル)や限定的なスペシャルモデルを開発する「クワトロ社」(現在のアウディスポーツ社)にはもうひとつ大きなプロジェクトがあった。

それは、1991年のフランクフルト国際モーターショーで姿を現した「クワトロ スパイダー」で初めて示され、同じ年の東京モーターショーに出品された「アヴス クワトロ」でその開発が多角的に進んでいることが明らかになった。とくに、アヴス クワトロは戦前のアウトウニオンのグランプリカーのモチーフを加えられた衝撃的なクルマだった。

クワトロ社が目指したものは、アルミスペースフレームを用いた本格的なリアル4WDミッドシップスーパーカーだった。アヴス クワトロは509psを発生する6L W12を搭載すると発表されていた。

しかし、このプロジェクトはなかなか実を結ばなかった。コストや生産性の問題もあって正式にゴーサインが出ることはなく、そのアルミボディ技術は1994年に登場したA8でアウディスペースフレーム(ASF)として生かされていった。

4WDミッドシップスーパーカー計画が再び動き出したのは2000年のことだった。この年登場した「ロゼマイヤー」は710psの8L W16エンジンを搭載するモンスターマシンで、アウトウニオン・タイプBの最高速記録挑戦車を思わせる凄みのあるデザインは大きな反響を呼んだ。

計画が軌道に乗ったのは2002年10月、ようやく取締役会の承認を得て、アウディのル・マン連覇を記念した4WDミッドシップのコンセプトカー「ル・マン クワトロ 」の開発が本格的にスタートした。

このプロジェクトはごく少数のスタッフによって社内でも秘密裏に進められたという。並行して開発が進められていた「ヌボラリ クワトロ」はTTのデザインスタディで、V10エンジン搭載とされてはいたが関連性はないようだ。

画像: アルミや炭素繊維複合素材を使ったボディは一歩先を行くものだった。

アルミや炭素繊維複合素材を使ったボディは一歩先を行くものだった。

画像: ミッドにV10ターボエンジンを搭載、そのアピアランスも刺激的。

ミッドにV10ターボエンジンを搭載、そのアピアランスも刺激的。

こうして2003年のフランクフルト国際モーターショーに登場した「ル・マン クワトロ 」は大きな話題を呼んだ。アルミニウムフレーム構造、炭素繊維複合素材のボディパネル、ガソリン直噴FSI搭載V10ターボエンジン、デジタルコックピットディスプレイ、LEDヘッドライト、マグネティックライドサスペンションなど、現在に続く革新的な技術が盛り込まれていたのだった。

しかし、V10エンジン搭載の4WDミッドシップスーパーカーというコンセプトは先にランボルギーニ・ガヤルドで実現、アウディから市販化されるまでには、さらに3年の月日を待たねばならなかった。そして、ようやく登場した量産モデルの名称は、当時ル・マンの王者として君臨していたレーシングカーと同じ「R8」になるのだった。「クワトロ スパイダー」から15年、クワトロ社の構想がついに実現、「ル・マン クワトロ 」はその立役者となった。

画像: デジタルディスプレイのコクピットは早くから想定されていたようだ。

デジタルディスプレイのコクピットは早くから想定されていたようだ。

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