ランサーエボリューションとともに、WRC競走用ベースマシンにして公道最速を目指した究極のロードカー、スバル・インプレッサWRX STIの系譜を紹介していく連載企画。今回は「STiバージョンV」だ。

WRCチャンプの実力を、そのまま市販車に移植

「インプレッサWRX STiバージョンV(GC8型:1998年9月発売)」

画像: ワゴンはダブルのリアスポイラーが特徴的。タイプRAとタイプR STiにはポテンザRE010タイヤが標準装備されていた。

ワゴンはダブルのリアスポイラーが特徴的。タイプRAとタイプR STiにはポテンザRE010タイヤが標準装備されていた。

EJ20型エンジンのチューンを突き詰め、もはや大幅なトルクアップが望めなくなったバージョンⅤは、空力と操安の向上に力を注いだ。

空力ではエンジン及びブレーキの冷却効率を高めつつCd値を低減させた新デザインのフロントバンパー&フロントグリルや、高速走行時の操縦安定性を高めるWRカー タイプの大型リアスポイラーを採用。迫力あるスタイリングとするだけでなく、とくに高速域でのスタビリティを高めている。

画像: WRX STiのアイコンとも言える大きなエアスクープ付きのボンネットはアルミ製とすることで軽量化を図った。

WRX STiのアイコンとも言える大きなエアスクープ付きのボンネットはアルミ製とすることで軽量化を図った。

一方、操縦安定性の向上にはボディ剛性アップやバネ下の軽量化に加え、初めて倒立式ストラットを採用したのがポイントだ。これにより剛性が通常のストラットの約3倍にアップし、コーナリング時の安定性が飛躍的に向上した。

さらにタイヤもタイプRAとRにブリヂストンのポテンザRE010を設定。強力なグリップを得て、コーナリングスピードは量産車最高レベルに達した。

画像: タコメーターを中央に配置した機能的なコクピット。ステアリングはシリーズの定番となったMOMO社製を継承。

タコメーターを中央に配置した機能的なコクピット。ステアリングはシリーズの定番となったMOMO社製を継承。

これに従来型を継承するDCCD+リア機械式LSDでトラクションを確保し、ブレーキもフロントローターを標準のWRXより17mm大径の249mmφにして強力な制動力を実現し、動力性能の全体的な底上げを図っている。

画像: EJ20ターボはこれ以上の出力/トルクアップはエンジン自体を見直さないと無理、というレベルまでチューンされ尽くされていた。

EJ20ターボはこれ以上の出力/トルクアップはエンジン自体を見直さないと無理、というレベルまでチューンされ尽くされていた。

フェーズIIとなったエンジンは、従来型の改良に加え、吸気ポート形状やカムプロフィール、インジェクターの変更などで低中速トルクを増強。出力/トルク値は変わらないがトルクの谷が改善され、加速性能が向上した。

トランスミッションはタイプRAとRにストロークを40mmに短縮したスーパークイックシフトが組み合わされている。

画像: 新たにデザインされたフロントのリップスポイラーと大型リアスポイラーは、優れたCd、CL値の達成に貢献した。

新たにデザインされたフロントのリップスポイラーと大型リアスポイラーは、優れたCd、CL値の達成に貢献した。

インプレッサWRX STiバージョンV(1998年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4340×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1250kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:36.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50R16
●価格:291万9000円

画像: インプレッサWRX STIの系譜は、ホリデーオート2019年5月号でも紹介しています。

インプレッサWRX STIの系譜は、ホリデーオート2019年5月号でも紹介しています。

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