TE71系カローラGTこそ、まさに“羊の皮を被った狼”
「羊の皮を被った狼」と呼ばれるような、平凡な外見にホットなエンジンを搭載したクルマは、1970年代に入ると一度姿を消してしまった。世界一厳しいと言われた日本の排出ガス規制のためだ。それが、三元触媒の実用化などでクリアされると、自動車メーカーは再びハイパワーエンジンの開発を開始、ハイパワーエンジンを搭載するセダンも現れるようになった。
その嚆矢とも言えるのが、TE71系カローラGT。同シリーズにはレビン/トレノというスポーティモデルもあったが、見かけは平凡なファミリーセダンにGTの称号を与えたのがミソだ。搭載されるエンジンは、2T-GEU。排出ガス規制以前は、ソレックスツインキャブで燃料を供給していたが、電子制御式インジェクションEFIによる燃料噴射に変更。115ps/15.0kgmの動力性能は、1トンを切るボディを力強く引っ張り、全日本ラリー選手権を始めとして、多くのプライベーターに愛された。
当時乗用車を生産していたいすゞには、ジェミニというオペル カデットの兄弟車があった。これは当時、資本関係にあったGMの「グローバルカー」構想に基づくものだった。いすゞは、1979年のPF60系にモデルチェンジするとともに、G180Wという1.8LのDOHCエンジンを搭載、もっともホットなモデルにZZ/Rの名称を与えた。
2ドアクーペと4ドアセダンがあったが、4ドアセダンはまさに羊の皮を被った狼に相応しい走りを見せた。それまで全日本ラリーでは優位だったTE71系カローラを退け、デビュー年にチャンピオンを獲得。また、ワンメイクスレースも開催されるなど、サーキットを走らせても素性の良さを見せた。
そのジェミニとライバルとなり、それを退けるカタチとなったのが、三菱のランサーEXターボだ。こちらも外見はランサーEXというなんの変哲もないセダン。
エンジンは1.8LのSOHCだったが、ターボによる過給による太いトルクを持ち、ブーストが掛かっている限りは速かった。1981年の登場時はインタークーラーなしで135psの最高出力だったが、1983年のマイナーチェンジでインタークーラーを装着すると160psを発生するに至り、当時国内では圧倒的とも言えるハイパワーマシンとなり、一時代を築くことになる。