ホンダの将来に向けた技術をメディア向けに公開するイベント「Honda Meeting 2019」が埼玉県和光市にある本田技術研究所で開催された。
このイベントには本田技研工業の八郷社長も出席。冒頭のあいさつでは、F1・オーストリアGPでの優勝に対する感謝の言葉から始まり、会場の拍手喝采を受けていた。
Honda Meeting 2019を開催した意義は、ホンダが「すべての人に“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する」ことを2030年ビジョンとして掲げ、その実現に向け、技術開発の現状と方向性をメディアに公開しようというもの。
具体的には
●カーボンフリー技術
●交通事故ゼロ技術
●eMaaS、コネクテッド技術
という3本の柱で、モビリティ製品にとどまらず、エネルギー、ロボティクスなどの技術革新を進めており、ホンダならではの新価値を生み出していくという。
カーボンフリー技術
ホンダは環境負荷ゼロ社会の実現に向け、CO2排出ゼロに重点を置き、自由な移動の喜びの提供と持続可能な社会の実現に取り組んでいる。その中で求められるパワートレーンは、インフラや法規制、各地域のユーザーのニーズによって異なり、さらに多様化が進むと考えられるため、適材適所の考え方で、ユーザーに最適な商品を届けたいとしている。
●ホンダ e
今回のイベントにはホンダ e(プロトタイプ)の展示もあった。2017年の東京モーターショーに出展された「Honda Urban EV Concept」はまだまだコンセプトカーの域を出ていなかったが、説明員によるとこのモデルはほぼ市販に近いという。
デザインがなかなかスタイリッシュで興味がそそられるが、それよりリア駆動のコンパクトカーということで走りが楽しそうなこともクルマ好きにはかなり魅力的だ。おそらくホンダが作るクルマだけに、EVでもただエコなだけでなく、スポーティな走りが楽しめるはず。説明員にそのあたりを聞いてみると「爽快な走りは期待を裏切らないと思いますよ」とニヤリ。これは期待せずにいられない。
すでにジュネーブショーでは、5色のボディカラーも公開されており、2019年内に生産を開始し、欧州で先行発売。その後、日本でも2020年内に発売されるという。
●バッテリーEV
そしてホンダはバッテリーEVのプラットフォームを共用化して、今後はSUVタイプ、CUVタイプ、セダンタイプなどに展開していること発表している。これらは前後重量配分が50:50で低重心に設計できるほか、リアを主駆動とした2WDと4WD(フロントにモーターを追加)を設定、平置きのバッテリーパックを共用化するなど、EVの本格展開に向け着々と準備を進めている。
●次期フィット採用技術
さらに今回、公開された注目の技術に、次期フィットに採用する小型車用スポーツハイブリッドi-MMDの2モーターユニットがあった。次期フィットは今秋に開催される東京モーターショーでの世界初公開すると八郷社長が明言している。現在、ステップワゴンやアコードに搭載されている中型車用のi-MMDよりもさらに高効率なものに進化しているという。
中型車用のi-MMDが燃費とパワーのバランスに優れており好評なだけに、この小型車用も価格が手ごろなところにおさまっていれば、フィットがまた大ヒット車へと返り咲くことも想像に難くない。
交通事故ゼロ技術
ホンダは安全技術が目指す姿は、交通事故ゼロ社会の実現に加え、誰もがいつでも自由に移動できるモビリティを通じて、全ての人に安心と好奇心をかき立てる新たな移動の喜びを提供することだという。そして現在、最も力を入れているのは、安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」の機能拡充だ。自動運転の研究によって得られた技術を随時投入し、さらなる性能向上に取り組んでいる。あわせて、Honda SENSINGが装着されていない既販車への踏み間違い抑制機能の後付け装置についても開発を進めている。
eMaaS、コネクテッド技術
ホンダは電動モビリティ、エネルギー、コネクテッドの各サービスによる移動と暮らしがシームレスに繋がった世界を目指す技術・サービスを「Honda eMaaS」と定めている。「スマート水素ステーション(SHS)」や可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」、着脱式可搬型バッテリー「Honda Mobile Power Pack」など、環境にやさしく賢い電気の利用を可能にするエネルギー技術・サービスに取り組んでいるが、これを、コネクテッド技術を通じてさまざまな電動モビリティと繋げていく。
そうした活動を通じて、人々に自由な移動を提供すると同時に、再生可能エネルギーなどの利用拡大とカーボンフリー社会を目指す。