初代シビックにラインアップされたカッ飛び野郎
ホンダ シビック 1200RS:昭和49年(1974年)10月発売
ハイパワー至上主義をとっていたホンダが、大きく転換を図ったのが1970年代だ。高回転かつ高出力を売り物にしていたホンダは、まず軽自動車のライフを発売し、その上級モデルとして昭和47年(1972年)7月にシビックを送り出した。軽自動車よりひとまわり大きな台形フォルムのFF2ボックスカーで、随所にヨーロッパ的な合理性を盛り込んでいる。
ベーシックに徹した国際商品として開発され、コンパクトなボディの中に広いキャビンスペースと小気味良い走りを巧みにバランスさせていた。
パワーユニットは新開発のEB1型4気筒SOHCだ。ボア70.0×ストローク76.0mmのロングストロークで、排気量は1169ccとなる。デビュー当初の最高出力は60ps/5500rpm、最大トルクは9.5kgm/3000rpmのベース仕様と、圧縮比を8.1から8.6に高めたGL用の69ps/5500rpm、10.2kgm/4000rpm仕様が用意された。
そして翌1973年5月にスターレンジを持つ無段変速ATのホンダマチックを投入。同時に高出力型エンジンを積むGLは、トルク特性の最適化を図り最高出力は66ps/5500rpm、最大トルクは10.0kgm/3000rpmとしている。
また、73年12月には1.5Lの4ドアモデルを設定した。このとき最高出力65ps/5500rpm、最大トルク10.5kgm/3000rpmのED型CVCCエンジンが加えられたが、かつてのホンダパワーを知るユーザーには、動力性能が物足りなかったのも事実である。
そうした走り屋の声に応えて投入されたのが、RSだ。RSは「ロード・セーリング」を略したもので、ハイウエイクルージングを意識した快速2ボックスとして位置づけられた。
スタイリングはGLとほとんど変わっていない。が、前後のバンパーにラバー製のオーバーライダーが装着され、155SR13ラジアルタイヤやブラック塗装のホイールでスポーティムードを盛り上げた。リアにトランクを持つ2ドアと、ハッチゲートを備えた3ドアの2タイプがあり、ともに最低地上高は165mmと、GLより10mm低い。そのためルックスは安定感が増した。
インテリアも大幅にグレードアップされている。間けつ式ワイパー、防眩ルームミラーなどが追加されて、ペダルもスポーティなレイアウトにアレンジされた。ダッシュボードには木目パネルが貼られ、ステアリングやシフトノブもウッドとなる。もちろん、フットレストも標準装備だ。
エンジンはEB1型1の169ccで、圧縮比もGLと同じ8.6だが、京浜製のCVキャブを2連装し、最高出力は76ps/6000rpm、最大トルクは10.3kgm/4000rpmまでパワーアップされている。
カタログスペックは平凡だが、レスポンスはすこぶるシャープで、6500rpmまでストレスなく回り切った。トランスミッションはシビックとしては初めてとなる5速MTだ。
サスペンションは前後ともにストラットの形式こそ変わらないが、こちらもハードに締め上げられ、フロントのバネレートは1.9kg/cm2から2.52kg/cm2に、リアも1.36kg/cm2から2.13kg/cm2へと、30%ほど強化された。ダンパーの減衰力も強化され、ワインディングロードでは水を得た魚のような軽快な走りを披露している。ブレーキはフロントがディスク、リアはLTドラムだ。
5速MTを介しての最高速は160km/h(カタログ値)である。当時の1.2LのFF2ボックスとしては、文句なしの動力性能といえるだろう。しかしそれ以上に楽しかったのがハンドリングだ。マニアには嬉しいFFスポーツならではの軽快な走りを存分に堪能できた。
シビックRSの走行性能は、サーキットでも存分に発揮され、当時常勝を誇っていたサニーを苦しめている。とくに富士スピードウェイでのマイナーツーリング・レースでは群を抜く速さを見せつけ、シリーズチャンピオンに輝いた。
強烈なスポーツ魂をもったシビックRSだったが、その寿命は短く、1975年8月のニュー・シビックCVCCの登場を機にカタログから姿を消した。
シビック 1200RS 2ドア 主要諸元
●全長×全幅×全高:3650×1505×1320mm
●ホイールベース:2200mm
●重量:695kg<705>
●エンジン型式・種類:EB-1型・直4 SOHC
●排気量:1169cc
●最高出力:76ps/6000rpm
●最大トルク:10.3kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:155SR13
●価格:76万5000円<78万3000円>
※< >内は3ドア