一見、FRとは思えないプロポーション
2020年にクラス1規程が導入されると、NSXは出場出来なくなるのではないか。そんな心配は無用だった。9月11日に鈴鹿サーキットで披露された2020年SUPER GTシリーズ GT500クラスに「NSX-GT」は参戦する。
ただし(ここが大きなポイントだ)、エンジンはフロントに搭載し、リアタイヤで駆動する。つまり駆動方式は他のGT500マシンと同様のFRとなる。空力性能とデザインはNSXのイメージを踏襲するも、ミッドシップMRからFRへの一大変化はホンダ・ファンにとってはまさに事件だ。
今回の大変更は、新たに導入されるクラス1規程によるもの。現在のSUPER GTも共通モノコックの使用と後輪駆動が義務づけられていたが、NSX GTのみMRが認められていた。すなわち、エンジンの搭載位置は「基本車両の搭載位置に車両前後方向で位置されなければならない」となっていたからだ。これがクラス1規程では「搭載されるエンジンは、車室より前部に配置されなければならない」と変更された。つまり、フロントエンジン/リアドライブ=FRに統一されるのだ。
そこで注目が集まっていたのがホンダの動向。新レギュレーションの導入でミッドシップ/リアドライブで闘ってきたホンダはどうするのか。今シーズン限りで撤退するかも知れない、という悲観的なウワサさえ流れた。
そして迎えた9月11日。鈴鹿サーキットには、トヨタGRスープラ、ニッサンGT-RニスモGT500、そしてホンダNSX-GTの3台が無事に揃った。国内最高峰のレースだけに、トヨタ、日産、ホンダが揃わなければ意味がない! ファンは胸をなで下ろしたことだろう。
さて、現時点でNSX-GTの詳細は明らかにされていない。写真をご覧いただければわかるとおり、NSXのイメージを再現しており、FR車らしいプロポーションではない。ただ、よく見ればボンネットにはわずかに厚みが加わり、そこにエンジンが搭載されることは明らかだ。また、フロント奥にはラジエータらしきも見える。さらに右サイド出しとされたエキゾーストも、ミッドシップではなくFRであることを如実に物語る。
本格的な開発はこれからが本番。9月12日から始まるテストには参加しないようだが、2010年-2013年のスーパーGTに参戦していたHSV-010 GT以来のFRレーシングマシンだけに、さまざまな試行錯誤が繰り返されるはず。果たして来シーズン、どんな活躍を見せるのか。三つ巴の闘いがいまから楽しみだ。