親しみやすいエクステリアデザイン
チーフデザイナー、クラウス・ビショフ氏の指揮で作り出されたID.3。その正確なサイズは未発表ながら、実車を前にするとゴルフ7よりもわずかに大きい感じがする。カムフラージュはされているがエクステリアデザインは同じBEV(バッテリー電気自動車)でも奇異なBMW i3と違って、ゴルフのボンネットを短くしたようなワンモーションラインは親しみやすい。このまま市街地を走っても違和感はない。
一方インテリアは今回隠されたままだったが、全てデジタルでAR(拡張現実)ナビゲーションを表示する、大きなヘッドアップディスプレイを採用するなど、ずば抜けた先進性を垣間見せてくれているはずだ。
試乗車は150kW(203ps)バージョンで、日産リーフと同じ程度のパワーである。サスペンションはフロントがストラット式、リアにはマルチリンクだ。タイヤサイズは215/45Rとなかなかスポーティ。航続距離を稼ぐために、細いエコタイヤでロードホールディング性を犠牲にするよりはずっとましである。フラットな路面ではわずかな上下動を正しくコントロールして、スムーズで快適だった。
将来の4WD化も視野に開発
不整路面では電池の重さがハンディで、上下の揺れが伝わってくる。一方、コーナリングでは低い重心高で姿勢が安定している。バッテリー容量は3種類あるのだが、モデル名はすべて「ID.3」で統一された。「スマートフォンと同じで、電池容量は表には出しません」とビショフ氏は説明する。
試乗モデルの場合、300Nmを発生する電気モーターで0→100km/hが8秒、最高速度はおよそ160km/hに達する。この電気モーターはサブフレームにフィックスされており、4WD化も考えられているそうだ。その場合はフロントに75kWまでの回生に有利な、アシンクロンモーターを搭載することが可能である。
2020年の4月からドイツを始めとする欧州のディーラーに並ぶ予定のこのID.3の価格は、中間レベルの装備とエンジンを搭載したゴルフ8とほぼ同じ程度、すなわち3万ユーロ(約360万円)になる予定だ。つまりゴルフ8と併売されるのだが、果たしてユーザーはどちらを選択するだろうかが興味深い。(文:木村好宏)