2019年10月3〜6日、 WRC(世界ラリー選手権)第12戦ラリーGBがウェールズのスランディドノをベースに開催され、トヨタのオイット・タナックがシーズン6勝目を達成。タイトル争いを繰り広げるライバルとの戦いを制し、ドライバーランキングのリードを広げた。2位はヒュンダイのティエリー・ヌーヴィル、3位はシトロエンのセバスチャン・オジェだった。
僅差の戦いを制して初のタイトルに大きく前進したタナック
前戦ラリートルコでECUトラブルのため痛恨のリタイアを喫し、パワーステージでの最速タイムで得た5ポイントしか獲得できなかったタナックが、選手権を争うライバルふたりとの痺れるような接戦を制し、悲願の初タイトルに大きく近づいた。
週末を通してほぼウェットとなり、少しでもミスをすれば滑りやすい路面にコースアウトしかねない厳しいコンディション。ラリーはタナック、オジェ、ヌーヴィルにトヨタのクリス・ミークを加えた4人が僅差での優勝を争う展開になっていく。
ただ金曜日の午後にトヨタのもうひとりのドライバーであるヤリ-マティ・ラトバラがクラッシュしてリタイアしたため、マニュファクチャラーズ選手権を鑑みて、ミークは土曜日からポジションキープの走りに徹したため優勝争いから後退。ラリーはドライバーズ選手権を争う3人の三つ巴に局面は変わる。
しかし、この緊迫した場面でもタナックのタフな心は揺るがなかった。大差をつけることこそできないものの、ステージを経るごとに後続との差を少しずつ広げ、土曜日終了時点で2番手に浮上したヌーヴルとの差は11秒になった。
タナックはわずか40km弱のステージ距離しか残されていない最終日のステージも慎重に走り、最終パワーステージでは圧巻のフルアタックでベストタイムをマーク。見事、優勝+パワーステージのフルマーク、30点を獲得してみせた。
「こんなにハードだったラリーは初めて。すべてのステージで限界まで攻めなければならないプレッシャーがあった」と激戦を振り返ったタナックは、これでランキング2位のオジェとの点差を28に広げて残り2戦を迎えることになった。
一方、マニュファクチャラーズ選手権ではランキング2番手のトヨタが1位と4位には入り、ランキング首位のヒュンダイが2位と6位となったため、両チームの差は8点に急接近している。
ペター・ソルベルグ、「最後のラリー」をWRC2優勝で飾る
今季限りでの引退を発表しているペター・ソルベルグが、プロフェッショナルドライバーとしての最後のラリーとなった2019年のラリーGBで、フォルクスワーゲン ポロ GTI R5を駆って見事にWRC2優勝、有終の美を飾った。ラリーGBはスバル インプレッサWRCを駆って2003年にWRCドライバーズ選手権を決定した思い出のラリーでもあった。
今回のラリーでのWRC2は、WRCデビュー戦となる息子のオリバーを含め将来有望な若手ドライバーが揃う激戦区だったが、近年にない難コンディションで有力ドライバーが次々と脱落。そんな中で過去このラリーで4回の総合優勝を誇るベテランが経験と貫禄を見せつけた。
次戦WRC13戦ラリー・カタルーニャは10月24〜27日、スペイン バルセロナ近郊のサロウをベースに開催される。
2019 WRC第12戦ラリーGB 結果
優勝 8 O.タナック(トヨタ ヤリス WRC)3h50m12.1s
2位11 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+10.9s
3位1 S.オジェ(シトロエン C3 WRC)+23.8s
4位 5 K.ミーク(トヨタ ヤリス WRC)+35.6s
5位 33 E.エバンス(フォード フィエスタ WRC)+48.6s
6位 89 A.ミケルセン(ヒュンダイ i20クーペ WRC) +58.2s
7位 7 T.ティディマンド (フォード フィエスタ WRC)+5m23.8s
8位 42 C.ブリーン(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+9m25.0s
9位 21 K.ロバンペラ(シュコダ ファビアR5)+10m51.1s
10位 55 P.ソルベルグ(フォルクスワーゲン ポロGTI R5)+11m36.1s
2019 WRCドライバーズランキング
1位 O.タナック (トヨタ ヤリス WRC) 240ポイント
2位 S.オジェ(シトロエン C3 WRC) 212ポイント
3位 T.ヌービル (ヒュンダイ i20クーペ WRC) 199ポイント
4位 A.ミケルセン(ヒュンダイ i20クーペ WRC) 102ポイント
5位 K.ミーク (トヨタ ヤリス WRC) 98ポイント
2019 WRCマニュファクチャラーズランキング
1位 ヒュンダイ 340ポイント
2位 トヨタ 332ポイント
3位 シトロエン 278ポイント
4位 M スポーツ フォード 200ポイント