今年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池を開発した吉野彰氏を含む3人が受賞した。現在はHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)でもお馴染みのリチウムイオン電池だが、それはどのようなものなのか解説しよう。

鉛電池から大きくブレークスルーしたリチウムイオン電池

画像: リーフに採用されたリチウムイオン電池。EVは長い歴史があるが普通乗用車での実用化として大きな意味を持った。

リーフに採用されたリチウムイオン電池。EVは長い歴史があるが普通乗用車での実用化として大きな意味を持った。

1990年代にリチウムイオン電池とニッケル水素電池が実用化され、EVやHVの可能性が大きく広がった。それまで電池といえば鉛電池だった。ちなみに電池には一次電池、二次電池があって、一次電池は普通の乾電池と同じように使い切りのもの。二次電池は充電ができるものだ。自動車の発電用の電池として現在使われているのは正確には鉛電池の二次電池となる。

画像: リチウムイオン電池でも充放電を繰り返せば劣化はするが、鉛電池に比べて充電の手軽さも大幅にアップしている。

リチウムイオン電池でも充放電を繰り返せば劣化はするが、鉛電池に比べて充電の手軽さも大幅にアップしている。

その鉛電池は便利だが、なんといっても重くて充電効率も良いとは言えない。電装系には使えても、自動車の駆動用の電池とすると、走行性能でも航続距離でも内燃機関に圧倒的に適わないのが実情だ。

画像: 市販EVとしてはリーフより先行したi-MiEV。2009年に法人向けに投入。翌2010年に個人向けに発売された。

市販EVとしてはリーフより先行したi-MiEV。2009年に法人向けに投入。翌2010年に個人向けに発売された。

そこでブレイクスルーとなったのはニッケル水素電池とリチウムイオン電池で、どちらも高エネルギーなのが特徴だ。リチウムイオン電池との対比でニッケル水素電池をごく簡単に説明すると、こちらはマイナス極に水素吸蔵合金を使用し、プラス極にニッケル酸化物を使っている。このマイナス極とプラス極での化学反応によって電流が生まれるわけだ。メリットとしては鉛やカドミウム(ニッケル・カドミウム電池もある)といった有害物質を使わないこと。また鉛電池よりエネルギー密度が高く、長寿命となっていることだ。ニッケル水素電池はこれまでリチウムイオン電池よりも広く使われていた。

画像: i-MiEVのリチウムイオン電池のユニット。初期のものでは10・15モードで160kmの走行を可能とした。

i-MiEVのリチウムイオン電池のユニット。初期のものでは10・15モードで160kmの走行を可能とした。

そしてリチウムイオン電池だが、これはマイナス極にグラファイトなどのカーボンを、プラス極にリチウム化合物(コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなど)を使っている。この正極と負極の組み合わせに着目したことが吉野氏らのノーベル化学賞につながった。

特徴は電気化学的にリチウムが吸蔵・放出され、放電と充電が行われることで他の充電池のように化学変化を利用しないこと。簡単に言えばリチウムイオンが行き来しているだけの電池というわけ。EVとして使用するときには組電池とするが、そのときに寿命が長く劣化の度合いも少ないメリットがある。

画像: HVのプリウスはニッケル水素電池を搭載したグレードもあったが、プリウスPHVではリチウムイオン電池を搭載する。

HVのプリウスはニッケル水素電池を搭載したグレードもあったが、プリウスPHVではリチウムイオン電池を搭載する。

1991年にソニーが世界に先駆けて実用化、翌年には吉野氏が当時勤務していた旭化成でも生産を開始した日本発の技術だ。それが発展し、日産は1996年にアルトラEVを発表。後に三菱自動車のi-MiEVや日産のリーフの動力源として使われるようになった。トヨタはニッケル水素バッテリーも共用してきたがプリウスPHVではリチウムイオンバッテリーを使用するようになった。

日産のリーフや、トヨタのハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が、現在のように大きな存在になったのも、吉野氏の発明があってこそ、ということなのだ。

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