流麗なフォルムのアウディRS7スポーツバック。4L V8DOHCツインターボとMHEV(マイルドハイブリッド)との組合せで、どのような走りをみせてくれるのだろう。(Motor Magazine 2019年11月号より)

新世代のV8ユニットを搭載

新型A7スポーツバックと初めて遭遇したのは、忘れもしない1年前のアウディ行脚の時だ。私たちはその端正かつ流麗な4ドアクーペを移動の相棒として、4日ほどの間に約1200kmを走りまわった。

アウトバーンでは260km/h越えのクルージングを楽しみ、街乗りではサイズを感じさせない乗りやすさを実感。貴重な時間を過ごしたことを思い出す。

そして今回、フランクフルトモーターショー会場で出会ったのがRS7スポーツバック。アウディスポーツが手がけたエボリューションモデルは、いろいろな意味で比べ物にならないほどのインパクトを振りまいていた。

ワイドフェンダー化されたことで全幅は40mm拡大、幅広&大径タイヤの装着で、もともと力強い踏ん張り感がさらに強調されている。左右に大型エアインレット、スポーツクワトロ譲りのボンネットスリットを配したフロントマスクには、最新のRSモデルに共通するデザイン言語がふんだんに盛り込まれている。真っ赤なボディカラーといい、もはや気高さよりも凄みの方が圧倒的に強い姿に、ドキドキ感ばかりが募る。

そんな興奮が冷めきらないプレスデイ2日目、フランクフルト郊外でさっそくそのハンドルを握ることができるとは……どうやらアウディの「7」とは、不思議な因縁があるらしい。

真っ先に気になったのはやはり、そのパフォーマンスの進化ぶりだ。搭載されるのは、4L V型8気筒ツインターボで、最高出力は600ps、最大トルクは800Nmを絞り出している。昨年の相棒A7スポーツバックは3L V6ツインターボで340ps、500Nmだったから、それはもうもはや比較することすらはばかられるレベルの違いがある。

ちなみにRSに搭載されているV8のオリジナルは、A8に採用されているユニット。460ps、660Nmと数値的には差があるものの、圧倒的に厚みのあるトルク感がとくに印象的だった。加えてこのユニットには、アウディの新世代ユニットとしてシリンダーオンデマンドなどのさまざまな新技術が盛り込まれている。

その目玉的なデバイスのひとつが、電源システムの48V化にともなって採用されたマイルドハイブリッド機構だ。ベルト駆動式のオルタネータースターター(BAS)を使うことで、高効率なエネルギー回生を可能にすると同時に、コースティング時の緻密なエンジンスタートをサポートする。

新型RS7にも、この48V MHEVシステムが搭載されている。減速時の最大12kWの電力回生や55~160km/h時のコースティングの選択、リスタート、さらに22km/h未満でのアイドリングストップ機能といった先進の省燃費技術が揃う。

思えばもともと、単なるハイパフォーマンスを狙うのではなく、実用性も兼ね備えたRSシリーズにとって、サスティナブルなクルマのあり方が求められる時代の流れに対応することは当然だろう。

もちろん、環境性能の向上をパフォーマンス低下のエクスキューズにするハズもない。果たしてアウトバーンに繰り出したRS7は、またもや圧巻の高速性能とダイナミックパフォーマンスを堪能させてくれたのだった。

画像: アウトバーンでの全開走行では落ち着いた挙動を示し、スムーズな加速でスピードをアップさせていった。

アウトバーンでの全開走行では落ち着いた挙動を示し、スムーズな加速でスピードをアップさせていった。

全開加速でもフラットな乗り味

アウトバーンでアクセルペダルを全開にすると、RS7は想像以上に落ち着いた挙動でスムーズに速度を乗せていく。あまりにも穏やかなので意外に遅いのか?と思いきや、日本の常識ではすでにとんでもない領域に到達。なるほど、これはちょっとしたトリックだ。

2種類のテストカーのうち、最初に乗った仕様には、ドイツで標準装備となるダンパーコントロール付きRSアダプティブエアサスペンションに加えて、ダイナミックオールホイールステアリング(4輪操舵)を含むRSダイナミックパッケージが装着されていた。

実はこの仕様は、もう1台のテストカーの装備と比べると、ややコンフォート寄りの設定。走行安定性という意味では少し大人しいハズなのだけれど、それでも全開での姿勢が極めて安定している。とくに縦方向の加速時のシェイク感がほとんど伝わってこないために、加速感がマイルドに感じられていたようだ。

一方、もう1台のテストカーには、ダイナミックライドコントロール(DRC)を装備したRSスポーツサスペンションプラスが装備されており、うたい文句どおピッチングやローリングの発生が抑えられていることが体感できた。ややカドの立った乗り心地ではあるものの、とことんフラットな加速姿勢のおかげもあって、往路の仕様よりも明らかに接地感が高く、姿勢が安定している。

日本市場に導入される際の仕様については明らかにされていないが、速度域が低い道路事情でも、後者の仕様がよりRSらしいライド感を味わわせてくれそうだ。

アウトバーンを降りてからのRS7は、かつてのA7と同様に、ドライバーが意のままに操ることのできる、フレンドリーな一面を見せてくれた。集合場所に設定されていたスポットまでの道幅はとても入り組んでいて狭かったけれど、全長5m超えが気にならない。

出せるものなら100km/hまで試せる郊外のワインディング路では、さすがに2m近い全幅に気を使う。それでもコントローラブルなブレーキで的確にスピードを殺し、安定した姿勢でコーナーをクリアした先でアクセルペダルを踏み込み力強く加速、という一連の「峠攻め」を、文字どおりリズミカルにこなすことができた。 

ちなみにこのRS7スポーツバックは、後席に座っていてもそうとう快適に過ごせる。これならきっと、家族も満足してくれる。(文:神原 久)

画像: BASを使ったMHEV技術によって、100kmあたりの燃料消費量は最大で0.8L削減されるという。一方で最高速度は305km/hに達する。まさにジキルとハイド的ユニット。

BASを使ったMHEV技術によって、100kmあたりの燃料消費量は最大で0.8L削減されるという。一方で最高速度は305km/hに達する。まさにジキルとハイド的ユニット。

試乗記一覧

■アウディRS7スポーツバック4.0TFSIクワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高=5009×1950×1424mm
●ホイールベース=2930mm
●車両重量=2065kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●排気量=3996cc
●最高出力=600ps/6000-6250rpm
●最大トルク=800Nm/2050-4500rpm
●駆動方式=4WD●トランスミッション=8速AT

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