ディスカバリーがフルモデルチェンジされて3代目として登場したのは2004年(日本には2005年春に上陸)。高いオフロード性能を備えながら、生産性の改良などにより魅力的な価格を実現して人気を博していたディスカバリーは、この3代目でやや高級路線にシフトしていた。これは当時ランドローバー社がフォードグループに入ったことと関係するのか、その詳細な内容を当時の試乗記で振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年7月号より)

静粛性は驚きのレベル、オンロードの運動性能も大幅アップ

25mの防水性能を備え、10mの高さからのコンクリート面への落下試験にも耐える。ディスカバリー3のイグニッションキーは、そんなタフな基準の下に作られているという。様々なシーンで用いられる、いかにも生粋のオフローダーらしいそんなストーリーからしてが、「3」の記号を与えられた新しいディスカバリーのキャラクターを象徴していると言っても良さそうだ。すなわちこのクルマはまず、歴代モデルの特徴をしっかりと受け継いで、世界最高峰のオフロード性能の持ち主を目指しているということである。

ただしそうは言っても、ここに異論を唱える人も少なくないだろう。そしてもっと言えば、そうした声というのは実際にクルマに触れるまでもなく、すでにカタログを目にした時点で発せられる可能性が高い。

今度のディスカバリーからは独立したペリメター式フレームは姿を消し、サスペンションにもまるで高級サルーンもかくやというダブルウイッシュボーン式の4輪独立懸架が採用されている。ステアリングシステムもラック&ピニオン式だ。すなわち、見方によっては「まるで乗用車のごとく随分と軟弱になってしまったな」と受け取られかねないのが、このクルマに採用をされた各部のスペックなのである。

事実、このクルマを世に送り出したランドローバー社も、今回のモデルで「オンロード性能の大幅な向上を狙った」ことは認めている。「オンロードでは、限りなく滑らかで心地良いドライブ感覚を堪能いただける」と、カタログ上にはそんな文言が躍っている。

が、だからと言って、ディスカバリー3はこれまでの歴代モデルが誇ってきた圧倒的なオフロード性能を犠牲にすることを許したわけではもちろんない。従来通り、いや、それ以上のオフロード性能を実現させつつ、これまでのモデルがやや不得手としてきたオンロード性能を同時に飛躍的に向上させたことこそが技術の進歩であり、ディスカバリー3最大の特徴であると、きっとランドローバー社は声を大にしてアピールしたいに違いない。

実際、自らこのクルマのステアリングを握って様々なシチュエーションの中に身を投じてみれば、ツベコベ言わずとも、そうしたことは即座に納得できるもの。スコットランドの北の果てで開催された国際試乗会に参加し、それからおよそ8カ月ぶりに日本に上陸したこのクルマを再びドライブしたぼくは、改めてそのオンとオフの走りのポテンシャルの高さに舌を巻くことになった。

画像: リアにスペアタイヤを積まなくなったのでスッキリ。しかし、デザイン的には左右非対称で従来のイメージを継承している。

リアにスペアタイヤを積まなくなったのでスッキリ。しかし、デザイン的には左右非対称で従来のイメージを継承している。

常にリラックスした走りを提供してくれる

今回再会をしたディスカバリー3は、V型8気筒4バルブDOHCエンジンを搭載した「HSE」グレード。新型の日本でのラインナップは、この下に4LのV6エンジン搭載車を2グレード設定。すなわち、今回のモデルは現時点でのディスカバリー3のハイエンドモデルということになる。

同じフォードグループに属するジャガー製の4.2Lユニットを、防水性能や潤滑性、防塵性などをオフローダー用へとリファインした上で、さらに排気量を4.4LまでアップさせたV8ユニットは、およそ300psの最高出力と425Nmという最大トルクを発生。が、正直なところスタートの瞬間がそうした出力スペックから予想をしたほどには強力とは思えないのは、やはり2.5トンを超えたその重量ゆえと考えるのが妥当だろう。

ただし、その静粛性は「ちょっと驚きのレベル」と表現しても良いくらい。そもそもエンジンの発する音自体が小さいし、バルクヘッドを透過してキャビンに侵入する音のボリュームもごく小さなもの。その上に、速度が増してもロードノイズが特筆すべき小ささと来ているので、「まさに高級セダン級」の静粛性が確保されるのだ。

オンロードでのフットワークの感覚も、やはり「高級セダン級」という表現を使いたくなるもの。路面の凹凸を拾って伝えられる振動はその波形がすべて「かど丸」に削られ、マイルド化をされる印象。ストローク感もタップリな一方で気になるピッチングやロール挙動は適度に抑えられ、常にリラックスした走り味を提供してくれる。

絶対的なボディサイズの割に取り回しに気をつかわないで済むのは、ランドローバーが「コマンドポジション」と唱する見下ろし感が強く、視界の広いドライビングポジションが採られていることに加え、スクエア基調のボディ形状がすこぶる優れた見切り感覚を実現させているからだ。わかりやすく表現をすればこのクルマは、「サイズの割に随分と運転のしやすい一台」と言うことになる。

700万円の後半という価格に加え、130mmも伸びた全長と30mm拡大された全幅のボディサイズゆえに、そのユーザー層がこれまでのディスカバリーの場合から大きく変わるのは必至であろう。「これまでの歴代モデルのユーザーは、次に何に乗り換えれば良いのか?」という疑問は少々残るが、一方で前述のような快適性の高さが、そんな車格に相応しい走りのテイストを実現させているのも確かだ。

そして、注目のオフロード性能は、まさに「歴代モデルを凌ぐもの」と評して良い水準にあった。改めてテストドライブをした今回は、さほど多くの路面バリエーションをチェックすることはできなかったが、国際試乗会では「到底クルマでは走破などできるはずがない」と思う文字どおりの様々なラフロードが待ち受けていたもの。が、ディスカバリー3が最大の売りものとする「テレイン・レスポンス」のダイヤルを適切なポジションにセットすれば、いとも簡単にそうしたシーンを乗り越えて行ってしまうのは心底驚きであった。それは「このクルマのオフロード性能は、オンロード性能向上のための犠牲などにはまったくなっていない」と実感できる瞬間であったのだ。

そしてもちろん、そんな走りの実力を備えたこのクルマの魅力は、いかにもランドローバーの作品らしいアイデンディティに富み、それでいながら従来型よりもグンとモダーンなルックスにも秘められている。非対称デザインを売り物とするリアビューが、少々プレーンに過ぎる雰囲気なのは個人的に物足りなさが残る部分だが、それ以外のエクステリア、そしてやはりモダーンな機能美を感じさせてくれるインテリアのデザインには「文句なし」という評価を与えたい。

ディスカバリー3は、いまハヤリの「SUV」という記号では片付けたくなくなる本格派の1台だ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2005年7月号より)

画像: 機能美を追求したデザインであるというが、そうした言葉だけでは表現し切れないものがある。ランドローバーならでは。

機能美を追求したデザインであるというが、そうした言葉だけでは表現し切れないものがある。ランドローバーならでは。

ヒットの法則のバックナンバー

ランドローバー ディスカバリー3 HSE(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4850×1920×1890mm
●ホイールベース:2885mm
●車両重量:2570kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4393cc
●最高出力:299ps/5500rpm
●最大トルク:425Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:759万円(2005年当時)

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