衝撃的だった世界3大陸同時ワールドプレミアから約1カ月ほど経過した10月、やっとポルシェ初のピュアEVのハンドルを欧州で握ることができた。2日間にわたり試乗した「タイカン」には、スポーツカーメーカー、ポルシェのDNAが感じられた。
画像: 試乗スタート前にはタイカンが勢揃い、圧巻の光景だ。

試乗スタート前にはタイカンが勢揃い、圧巻の光景だ。

ポルシェ初の電気自動車(BEV)であるタイカンの国際試乗会前に、ワールドプレミアイベントとワークショップを取材している。そうした機会を重ね、タイカンの知識が積み重なるにつれ、このポルシェ初のピュアEVへの興味が強くなっていた。そしてやっと叶った試乗は、最近では異例の2日間となったが、こうしてタイカンに接する時間が多くなればなるほど、それまで持っていた不安が少しずつ払拭されていたのである。

画像: 試乗したのはタイカンターボとターボSの2モデル。

試乗したのはタイカンターボとターボSの2モデル。

試乗したのは、タイカンターボとターボS。前者は最高出力460kW(625ps)、最大トルク850Nm、後者は最高出力こそ同スペックだが最大トルクが1050Nmまで高められ、オーバーブースト時はそれぞれ500kW(680ps)、560kW(761ps)になる。

加速力は想像を超える凄さ身のこなしも重さを感じない

通常、国際試乗会では、ふたり1組になりルートの途中でドライバー交代をしながら1台を試乗する。運転席に座っているときはドライバーの視点で、助手席や後席に座るときは乗員の視点でチェックするのだ。今回も同様だが、いつもと違うのはアクセルペダルを踏み込むときに「踏みます」と隣にひと声かけなければいけないことだ。そうしないと助手席に座っている人が加速Gで首を痛めてしまうかもしれないからだ。それほど加速力が凄いのである。

画像: 911よりも低い重心高がポルシェらしい走りを味わわせる。

911よりも低い重心高がポルシェらしい走りを味わわせる。

ポルシェのBEVなのだからある程度は予想していたが、タイカンの加速力はターボでもターボSでも想像を超えていた。それは助手席にひと声かけ、右足に力を入れると瞬時に身体がシートに押しつけられるという体験させてくれるのである。0→100km/h加速2.8秒(ターボS)は、異次元の世界だ。さらに0→200km/hは9.8秒(ターボS)でポルシェのエンジニアによると、これを20回以上繰り返してもタイムは変わらないという。こんなBEVがあるだろうか。これがポルシェの実力でありDNA、そしてBEVへの回答なのである。

画像: 圧巻の加速性能を持つタイカンはブレーキも強化されターボSはPCCB、ターボはPSCBを装着。

圧巻の加速性能を持つタイカンはブレーキも強化されターボSはPCCB、ターボはPSCBを装着。

BEV は高速道路を走るのが苦手だがタイカンにそれは当てはまらなかった

圧倒的なのは加速力だけではない。ワインディングロードでの身のこなしは、まるで身体とクルマが一体になったような感覚になる。その軽快なフットワークはとても車両重量が約2400kgあるようには思えない。これには、リアアクティブステアリングやアダプティブサスペンション、ロール制御システムなどを統合制御するポルシェ4Dシャシコントロールの恩恵もあるようだ。ちなみにタイカンは2基の電気モーターによる4WDシステムを採用している。

今回の試乗は、2日間にわたり約650kmほどの距離を走った。そのルートにはアウトバーンもあり、200km/hを超える超高速域でも走ったが、まったく不安を覚えなかった。どんな場面でも安定感は抜群だった。

画像: メーターは16.8インチ、中央と助手席に10.9インチタッチ式、エアコンなどの設定は8.4インチのタッチ式と、4つのディスプレイを用意。中央にギアセレクターはない。

メーターは16.8インチ、中央と助手席に10.9インチタッチ式、エアコンなどの設定は8.4インチのタッチ式と、4つのディスプレイを用意。中央にギアセレクターはない。

ところでタイカンには、リアアクスルに2速トランスミッションが搭載される。ゼロ発進から最大加速を得られるのが速で、2速はより効率が高く、高速走行時は、ほとんどこの2速が使われる。 

航続距離は、ターボSが412km、ターボが450km(ともにWLTP準拠)で、アクセルペダルを離すと積極的にコースティングに入り、ブレーキペダルを踏めば減速エネルギーは回生される。回生システムは、最大265kWでブレーキ操作の90%は油圧式ブレーキではなく、電気モーターによって行われるという。

ちなみにBEVは、一般道なら減速時のエネルギーを積極的にバッテリーに回収できるが、高速道路は減速エネルギーを回生できないので、当然、充電残量は一般道を走った場合より減りが早くなる。

電気モーターの音をスポーツサウンドに増幅

ドライビングモードは「レンジ」、「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」に加え、「インディビジュアル」も用意されるが、どのモードで走っても乗り心地に嫌なゴツゴツ感を伝えてこない。まるでポルシェの最高級4ドア、パナメーラに乗っているようにとても快適なのだ。これは重量物であるバッテリーを低い位置に搭載した効果もあるのだろう。それにより低重心となりフラットで快適な乗り心地を実現しているのである。

ところでタイカンの重心高は、911より低いというが、こうしたBEVのメリットはさまざまな場面で感じられるだろう。 

試乗中の充電は、アウトバーンのパーキングエリアにあるIONITY(イオニティ)の充電設備を使った。ランチの間、ほんの分程度で20%ぐらいまで減っていたバッテリー残量を80%ぐらいまで回復させることができたのである。ちなみにこの間の充電器の表示は、ほぼ120kWあたりを示していた。このように自分で充電を体験することで、航続距離や充電に対する不安は薄れたのである。

画像: 国際試乗会はノルウェーからシュトゥットガルトまでの約6400kmをリレー形式で行われ、日本チームはオーストリア インスブルックからドイツ ミュンヘンまでの約650kmのハンドルを2日間にわたり任された。写真はそのゴールとなったミュンヘン空港の広場である。

国際試乗会はノルウェーからシュトゥットガルトまでの約6400kmをリレー形式で行われ、日本チームはオーストリア インスブルックからドイツ ミュンヘンまでの約650kmのハンドルを2日間にわたり任された。写真はそのゴールとなったミュンヘン空港の広場である。

さらに興味深いのは、ポルシェは、モバイルチャージャーも用意するということだ。これは重量約3kgと持ち運びが可能で、外出先でも充電できるというものだ。日本では、急速充電CHAdeMoに対応する。現状50kWだが、今後、150kWまで出力が増えれば、欧州圏と同じように充電時間を短縮できるだろう。

最後にサウンドにも触れておきたい。ポルシェは、タイカンにBEV専用のエレクトリックスポーツサウンド与えている。これはタイカンの電気モーター音をもとに増幅させたものだ。それをスピーカーから出しているのである。当然、911のようなフラット6サウンドではないが、これもポルシェらしい音だと感じられた。

画像: 試乗した2日間ともアウトバーンにあるIONITYの充電施設を使いランチ時間を使って充電を行った。

試乗した2日間ともアウトバーンにあるIONITYの充電施設を使いランチ時間を使って充電を行った。

タイカンは先日、4Sも発表され着実にライナップを増やしている。全モデルとも日本仕様の価格は未定だが、導入へのカウントダウンはすでに始まっている。(文:千葉知充/写真:ポルシェジャパン)

IONITYの高出力充電ステーションは、欧州の充電規格CCSを採用し、充電ポイントあたり350kWの充電容量を実現する。IONITYの高出力充電ステーションは、欧州の充電規格CCSを採用し、充電ポイントあたり350kWの充電容量を実現する。ダイムラー、BMW、フォードと共同で立ち上げたは欧州で20年末までに400カ所の高出力充電ステーションを設置する。

ポルシェ タイカン ターボ S 主要諸元
モーター最高出力:460kW(625ps)、モーター最大トルク:1050Nm、バッテリー:93.45kWh、EV走行距離:388-412km、WLTP電費:25.7-24.5kWh/100km、全長×全幅×全高:4963mm×1966mm×1378mm、ホイールベース:2900mm、車両重量:2295kg、駆動方式:4WD、最高速度:260km/h、0→100km/h加速:2.8秒 ※EU準拠

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