1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「スズキ カルタス GT-i(AA33S)」だ。

スズキ カルタス 3ドア1300GT-i(AA33S型・1986年6月発売)

画像: 2トーンのボディカラーや、ボディサイドの「TWIN CAM 16」のロゴが誇らしげだ。

2トーンのボディカラーや、ボディサイドの「TWIN CAM 16」のロゴが誇らしげだ。

1983年(昭和58年)10月、スズキは当時提携関係にあったGM(ゼネラルモーターズ)との共同開発で、フロンテ800以来の登録車「カルタス」を発売する。翌1984年の5月には最高出力80ps/最大トルク12.0kgmを発生する1L 直3ターボを搭載したモデルを追加設定。動力性能は文句なしだが、リーフリジッドのリアサスでは暴れるタイヤを抑え込めず、過給域で急激に盛り上がるトルクもあって、制御には相当のスキルが要求された。

1986年6月、カルタスはビッグマイナーチェンジを受け、外観では異型ヘッドランプを採用するなど、フロントまわりを中心にデザインが変更された。だが、何よりも注目されたポイントは、国産1.3Lクラス初のDOHCを搭載するGT-iが新設定されたことだった。

画像: 6500rpmで97psを発生するG13B。1987年10月のマイチェンで110ps/7500rpmまでパワーアップした。

6500rpmで97psを発生するG13B。1987年10月のマイチェンで110ps/7500rpmまでパワーアップした。

新開発のG13B型エンジンは、カムダイレクト駆動される挟角54度の4バルブヘッドを持ち、デュアルタイプのエキゾーストマニホールドによる4-2-1排気系やホットワイヤー式EPI、10.0の高圧縮比、デスビレス点火などにより、ネットで最高出力97psを発生した。これはグロス表記だと約114psに相当するから、当時の1.3Lとしては超高性能と言えた。

2245mmというショートホイールベースのFFに搭載するため、ハイパワーFF特有の過激な挙動変化が懸念された。だがGT-iの追加と同時にカルタスは全車のリアサスペンションはリーフリジッドからI.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)式に変更されて、後輪の追従性が高まったこともあり、ワインディングではホットハッチらしい切れの良い走りが楽しめた。

画像: 初期型ではは6800rpmからだったレッドゾーンが、マイチェン後は8000rpmからと、超高回転型になる。

初期型ではは6800rpmからだったレッドゾーンが、マイチェン後は8000rpmからと、超高回転型になる。

とはいえ、5000rpmから上でNA(自然吸気)のハイチューンDOHCらしいレスポンスを発揮するエンジン性能をフルに使おうとすると、やはりサスペンションの容量不足を感じたのも事実。世界が認める足の良さは、2005年のスイフトスポーツ登場まで待たなければならない。

1987年10月のマイナーチェンジで、G13B型はインジェクターの容量アップやカムプロフィールの変更をはじめ、吸気系の形状/通路径の拡大、ステンレスパイプのマルチエキマニ採用などで、最高出力は110psにパワーアップする。また最高出力の発生回転数を1000rpm上げたことで、高回転域の伸びも一段と増した。足回りも強化されたGT-iは1.3L NA最強の座を確たるものにしていく。

画像: 初代カルタスは3ドアのみの設定。GT-iはルーフエンドにリアスポイラーを装着していた。

初代カルタスは3ドアのみの設定。GT-iはルーフエンドにリアスポイラーを装着していた。

ボーイズレーサー伝

スズキ カルタス 3ドア 1300GT-i(1986年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3670×1545×1350mm
●ホイールベース:2245mm
●重量:730kg
●エンジン型式・種類:G13B型・直4 DOHC
●排気量:1298cc
●最高出力:97ps/6500rpm
●最大トルク:11.2kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:165/65SR13
●価格:126万円

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