歴代フェラーリV8ミッドシップ2シーターモデルのヒストリーと栄光を象徴する新たなる存在、それが新型F8トリブートだ。素晴らしいもの、賛辞、贈り物を意味するイタリア語の「トリブート」。ガソリンエンジンのみの「リアルV8」スポーツカーならではの賞賛したい新しさを味わえた。(Motor Magazine 2019年12月号より)

新鮮さを覚えるエクステリアデザイン

F8トリブート。この新型V8ミッドシップ2シータースポーツカーのカッコ良さには心がときめいた。488シリーズまでの縦長デザインから横型デザインへ一新された新型ヘッドライトを採用したフロントまわり。

そして308やF40なども連想させる丸型4灯式テールライトが強調されたリアスタイルなど、そのイメージチェンジしたスタイルには新鮮さを覚える。多くの人の目がひきつけられる、カッコ良さが備わっている。

エクステリアには、空力性能と冷却性能をさらに進化させたエアロサーマルデザインが随所に採り入れられており、ダウンフォースは488GTBより10%向上されているという。冷却系レイアウトの進化やエンジンへの吸気温度低下なども含めて、徹底的に改良の手が入れられた。

パワートレーンは488シリーズと同じく「F154」ファミリーの最新型3.9L V8ツインターボエンジンと7速DCTを組み合わせる。そこには488シリーズのスペシャルモデル「488ピスタ」、ワンメイクレース用マシン「488チャレンジ」で培われたノウハウも投入されており、扱いやすさと同時に最高出力720ps/8000rpm、最大トルク770Nm/3250rpmを発揮する。488シリーズの670ps/8000rpmm、760Nm/3000rpmから50ps/10Nmのアップとなり、488ピスタ用とは、最大トルク発生回転数以外は同レベルを達成している。

インテリアは、メーターパネル内のデザインも進化しているが、基本的なイメージそのものは488シリーズに準じている印象だ。

画像: ヘッドライトの上側は、ブレーキシステムなどの冷却用エアインテーク部となっている。

ヘッドライトの上側は、ブレーキシステムなどの冷却用エアインテーク部となっている。

V8スポーツカーの歴史も随所に採り入れた最新仕様

フェラーリのV8ミッドシップ2シータースポーツカーの歴史はいまから44年前、「308GTB」のデビューに始まる。85年に、エンジン排気量がそれまでの3Lから3.2Lに拡大されるなど、大がかりな進化が施された「328」シリーズが登場。

そして89年には、まったく新しくなった「348」シリーズにバトンを渡す。V8エンジンは3.4Lに拡大されるとともに、その搭載レイアウトが横置きから縦置きへと変更された。

94年には、5バルブ式となった3.5L V8エンジンを搭載する「F355」シリーズがデビューし、99年に「360モデナ」が登場する。360モデナでは、トランスミッションのレイアウトも横置きから縦置きに変更された。

2004年、後継モデルの「F430」へと進化する。V8エンジンは4バルブ式の4.3Lとなった。09年に新世代の「458イタリア」がデビュー。V8エンジンの排気量は4.5Lになって、7速DCTが組み合わされた。

そして15年に、F8トリブートの前モデルとなる「488」シリーズが、時代の流れに合わせてそれまでの自然吸気エンジンから一転して、3.9L V8ツインターボエンジンを搭載して登場した。

ちなみにこのV8ツインターボエンジンは、そのパフォーマンスと総合性能の高さにより、2016年から年まで4年連続で「エンジン オブ ザ イヤー」獲得の栄誉に輝いている。

こうして見ると、フェラーリのV8ミッドシップ2シータースポーツカーは328以降、ほぼ5年ごとに新しい世代へと交代してきたことがわかる。それだけ、全世界のカスタマーたちから支持されてきた存在でありフェラーリの主役を担ってきたモデルなのだ。

画像: ハンドル中央左下に赤いエンジンスタートストップスイッチが配されている。

ハンドル中央左下に赤いエンジンスタートストップスイッチが配されている。

速く走らせてみたくなるがゆっくり走っても楽しめる

試乗当日は、残念ながら朝から雨 模様。紹介している晴天時の様子は別の日に撮影されたもので、なんともうらやましく思える。「F8トリブートは、毎日使うことができるフェラーリです」。プレゼンテーションで聞いた言葉を思い出しながらマネッティーノのスイッチでWET(ウエット)モードを選び、エンジンスタートボタンを押す。始動時のエンジン音は、実は車外ではそれほどでもないのだが、運転席にはけっこうなボリュームで届いてくる。

ハンドルスポーク部にあるワイパースイッチを操作して、まず一般道へと走り出した。市街地を含めて、路面が荒れている場面も多いのだが、その乗り心地がいたってスムーズなことに驚く。走行時のエンジン音は低く、同乗者と普通に会話ができる。7速DCTの制御も、さらに滑らかさが増した印象でギアチェンジのショックがほぼ感じられない。488GTBでもその日常的な快適性の高さと多用途性に驚かされたが、F8トリブートはその度合がさらに進化している。

高速道路に入り、アクセルペダルを踏み込むと一気に車速が上がる。これは速い。そこにターボラグなどまったく感じられず、瞬時にトルクが立ち上がり、クルマを前へ前へと押し出す。ワイパーをハイスピードにして走るような状態にもなったが、優れた直進性はもちろんのこと、ハンドリング面でのスタビリティの高さにも驚かされた。操舵時のクルマの動きが実にスムーズで安定しており、心地良い一体感が楽しめるのだ。

シャシに関しても細かな改良と熟成が積み上げられてきたことは、悪条件下での走りでもしっかりと実感できた。ワインディングロードのセクションでは、雨に加えて濃霧に包まれたりもしたので、基本的には大人しく走る「快適なF8トリブート」を堪能した。(文:香高和仁)

画像: 3.9L V8DOHCツインターボエンジン。最高出力720ps、最大トルク770Nmを発生する。

3.9L V8DOHCツインターボエンジン。最高出力720ps、最大トルク770Nmを発生する。

試乗記一覧

■フェラーリF8トリブート 主要諸元

●全長×全幅×全高=4611×1979×1206mm
●ホイールベース=2650mm
●車両重量=1435kg
●エンジン=V8DOHCツインターボ
●排気量=3902cc
●最高出力=720ps/8000rpm
●最大トルク=770Nm/3250rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=7速DCT

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